気温と湿度が高くなっている6月は、カビやダニが一気に増える季節です。症状悪化につながりやすいアレルゲンの減らし方を学びましょう。
乳幼児とアトピー第6回 初夏のカビ・ダニ対策
カビ、ダニが増える季節
赤ちゃんは、1歳ぐらいから体内に吸い込むものに対するアレルギーが明らかになってきます。ダニ、ホコリ、 カビ、化学物質、花粉などなど。生活 空間にはアレルゲンとなりうる物質 でいっぱいです。
初夏を迎えようとする今の季節は、湿気によりカビが繁殖しやすくなり、暑くなるほどダニも増えてきます。衣 替えなどで、押入れやタンスの中から これらのアレルゲンが飛び出してくることも考えられます。
赤ちゃんの寝具を整える
カビやダニの話をする前に、赤ちゃんが1日の大半を過ごす寝具について説明します。赤ちゃんの体は水気が多く、そして汗っかき。おしっこもいっぱいしてオムツも湿りがちとなると、寝具の周りはダニやカビが繁殖しやすい環境となってしまいます。敷きっぱなしの寝具で寝たきりの赤ちゃんの背中やおしりの下にカビが生えてしまうこともあります。だから、まず寝具を整えてあげることが大切です。
ベビーベッドを使っている場合、一枚板の敷板の上に直接布団を置くと、湿気を逃がすことができずに、寝具と 板の間にカビが生えやすくなります。そこで、敷き布団と下板の間に通気性のよいものを挟みます。 例えば、布団カバーのなかにパイプ枕用のパイプを詰め込めば、通気性の いいマットレスに早替りします。間に 挟むものは、通気性がよくデコボコしていなければよいので、家庭にあるものでいろいろ工夫してみるといいで しょう。
また、ベビーベッドの敷板に、木材チップを接着剤で固めたパーティクルボードが使用されていることがあります。その場合は、接着剤のホルムアルデヒドが揮発してしまいます。化学物質が揮発しないムク材などに換えてあげると安心です。
床に直接布団を敷いている場合も考え方は同じで、布団と床の間の通気性が保てるように工夫してください。通気性のよい布団やマットレスを選んであげるのもよいでしょう。
アレルギー対策は家族全員で
もちろん布団まわりの掃除はこまめに行います。寝具の乾燥も大切です。寝具を外に干すとホコリや花粉が大量につくので、なるべく室内で干します。
乾燥機があれば利用してもよいですが、乾燥した寝具からはホコリが取れやすくなるので注意が必要です。ここでホコリを取ろうとして寝具を叩いてしまうと、寝具の内部に入り込んでいたダニやカビが表面に出てきて症状悪化につながります。だから、乾燥後には必ず掃除機をかけましょう。
寝具に掃除機をかける場合、ふとん専用のノズル(家電メーカー各社から様々な製品が出ています)を使います。イラスト(右下)のような要領で、かけのこしがないように丁寧に両面に掃除機をかけます。特に寝具の端はほこりがつきやすいので念入りに。掃除機をかける時間は、片面1分くらいが目安です。
育児中のお母さんは、何かと忙しく大変なので、できればお父さんがフォローできると理想的です。大きな兄弟 がいれば、お手伝いしてもらいます。アレルギー対策は家族全員が理解して、お互いを支えあいましょう。
カビ対策で症状改善
アトピー性皮膚炎の患者さんからは、白はく癬せん菌やカンジダ菌など病原性のカビが検出されることが多いものです。カビの菌が皮膚に付着すると、感染症を起こしたり、症状悪化につながります。赤ちゃんの場合は特に寝具を中心に、生活環境からカビを取り除くことで、症状を改善することができます。
カビ対策1 空気の流れを作る
カビは、適度な栄養(毛、フケ、排泄物など)・湿度・温度がそろうと一気に増えます。空気の流れが悪い場所も大好きです。
押入れに物をしまう場合は、床にすのこをひいたり、壁と収納物の間になるべく空間を作ります。たんすなどの家具類は、壁から10cmほどすき間をあけましょう。常に空気の流れを作る工夫を心がけることで、カビは生えにくくなります。
カビ対策2 乾燥した状態を保つ
繁殖しやすい条件が整うと、カビは菌糸を伸ばして増えていきます。この状態のカビに触ると、アレルギーを起こしやすいので注意しましょう。
増え続けて栄養不足になったり、乾燥して弱ったカビは、子孫を残すために胞子を遠くに飛ばします。この胞子を吸うと、鼻や気管支の病気を起こすことがあります。
乾燥と高湿度の状態を繰り返せば、カビは菌糸も胞子も多量に作ってしまいます。湿度が高くならないように、常に乾燥を保ってカビを増やさないこと。胞子を飛ばす前(子孫を増やす前)の段階でカビを除去することも大切です。
カビ対策3 食べこぼしに要注意
食べこぼしで衣類に付着した食物は、カビの温床となるばかりか食物アレルギーの引き金にもなりかねません。特に小さいお子さんのパジャマなど、食べこぼしがついていないかチェックしてあげましょう。
カビ対策4 洗濯物はすぐに干す
洗濯物を干さずに放置すると、衣類などに残ったカビが増え、その状態で干してもカビが残ってしまいます。洗濯物はすぐに干し、カビの増殖をできるだけ抑えましょう。室内で洗濯物を干す場合は、扇風機をかけると早く乾きます。洗濯物がどうしても乾かない場合は、アイロンをかけると効果的です。
カビ対策5 洗濯機もしっかり掃除
洗濯機の中は、洗濯物の汚れでカビが生えます。洗濯槽もときどき点検し、カビを取り除いてください。自分で掃除できる部分は、消毒用のアルコール(エタノール)と使い古しの歯ブラシなどを使って洗います。
ダニ対策は、ほこり対策で
ダニの繁殖期は、高温多湿となる5~9月。40歳以下のアレルギー体質の人のほとんどがダニアレルギーを起こしており、住環境中のダニを減らすことは、アレルギー対策の重点課題といえます。
アレルゲンとなるダニ抗原は、生きたダニではなく、その糞や死骸、抜け殻となる粉砕物などです。したがって、ほこりのつきやすい寝具や衣類などに多く、そのほこりを取り除くことが大切です。寝具についてはすでに説明したので、その他のダニ対策のポイントをお伝えします。
POINT1 ダニが繁殖しやすい場所を減らす
ジュウタン、カーペット、ソファーなどはなるべく使わないようにします。室内の除湿も心がけ、冬の間は室内温度が20度を超えないようにします。
POINT2 ダニの餌を減らす
家の中に食べかすを落とさないようにし、こまめに掃除機をかけて餌となる抜け毛やフケ、ホコリを取り除 く。カビもダニの餌となるので、減らす努力をします。
POINT3 室内の環境汚染を減らす
たばこの煙、暖房の排気ガス、殺虫剤、ホルムアルデヒドなどの化学物質はダニの糞中に濃縮されるので、極力減らします。
監修者プロフィール
1953年生まれ。
1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。
著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。
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