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乳幼児とアトピー第5回 睡眠リズムと子どもの成長

乳児期は、睡眠のリズムが徐々に整ってくる頃。この時期の睡眠の質は、その後の成長と健康に大きく影響してきます。よい睡眠リズムを作ってあげましょう。

子供の成長に伴う体の変化を知ろう

アレルギー症状の起きやすさは、もって生まれた体質、胎児期の環境(特に妊娠初期)、成長してからの生活環境や食などの生活習慣によって変化します。

お子さんにアレルギー性疾患があり、何らかの原因(アレルゲンなど)が判明したら、生活環境や食習慣などの改善が必要です。お子さんが乳幼児の頃は、親がそれらの環境を整えてあげることになります。

その際に知っておくとよいのは、お子さんの成長に伴う体の変化です。特に乳児期は、睡眠リズムが整い始める時期。この時期の生活習慣は、赤ちゃんの睡眠リズムに大きく影響し、将来の睡眠の質の基礎となります。

その後も、幼児期、小児期、思春期などの成長過程で、ホルモンバランスの変化などにより、アレルギー症状は抑えられたり悪化したりします。その大きな流れを知っておけば、乳児期からホルモンバランスを整えて、アレルギー症状を起こしにくい生活環境を作ってあげることができます。また、お子さんが成長したらご両親が学んだ知識を伝えることで、本人が自分の意思でアレルギー症状を軽減する生活術を身につけることができます。

理想的な睡眠リズムが正常なホルモン分泌を促す

まず、睡眠の話から始めましょう。睡眠中はレム睡眠(眼球の動きが伴う浅い眠り)とノンレム睡眠(体も脳も休んでいる深い眠り)が繰り返され、二つの睡眠リズムが、睡眠中の成長ホルモンと副腎皮質ホルモン分泌に大きく関係しています。

理想的な睡眠リズムは、入眠直後に深い眠り(ノンレム睡眠)に入ること。そうすれば、朝方に浅い眠り(レム睡眠)となる睡眠リズムがつきやすくなります。

右のイラストが理想的な睡眠リズムです。睡眠時間を8時間とすれば、入眠後1時間程度で深い眠り(ノンレム睡眠)に入り、人間の成長に必要な成長ホルモンを分泌します。その後ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しながら、明け方の起床時間が近づくにつれ、副腎皮質ホルモンが分泌されます。

「副腎皮質ホルモン」というと、ステロイド剤を思い出す人も多いと思います。 ステロイド剤には人工的に作られた副腎皮質ホルモンが含まれていますが、副腎皮質ホルモンは本来、人体の副腎で少しずつ作られるホルモンです。

副腎皮質ホルモンには抗ストレス作用があり、かゆみや炎症などの過剰なアレルギー反応を調整します。人体には、もともとアレルギー反応を抑える機能が備わっているのですが、この機能をうまく働かせるポイントが、十分な睡眠時間と理想的な睡眠リズムなのです。

赤ちゃんの成長と様々な身体リズム

生後間もない赤ちゃんは昼夜の区別なく長時間眠りますが、レム睡眠(浅い眠り)が多いのが特徴。そんな赤ちゃんの睡眠リズムが整い始めるのは、だいたい生後4カ月頃と言われています。日が暮れて周囲が暗くなると眠り、朝日が昇り始めると目が覚め、起きている時間のほうが長くなり始めるのがこの時期です。

その後、4~6歳までに、昼と夜のリズムと睡眠の日内リズム・体温リズム・ホルモン分泌リズムが整って、正常に機能する体ができあがってきます。睡眠リズムが整い始める生後4カ月頃は、子どもの健全な成長に影響する様々な身体リズムの基礎固めの時期なのです。 

日中の明るい時間はしっかり遊んであげて、夜は自然に合わせてなるべく暗く静かにしてあげます。日中元気に遊んだ赤ちゃんは、暗くなると疲れて自然に眠くなります。こんな子どもらしい覚醒・睡眠リズムを作ってあげましょう。

発達に合わせた赤ちゃんとの接し方

乳児期は、抱っこをして遊んであげると、頭の形が丸くなり頸(くび)が早く座ります。また、遠くを見ることができるので、周囲への興味が刺激されて意欲の発達が促がされます。 頸(くび)が座ってきたら、お母さんの膝の上で遊ぶとよいでしょう。視野を広げてあげることで、遠くにあるものに興味を持ち、そこに行きたいという気持ちがハイハイを発達させます。

ハイハイは十分にさせて、手足が交互に出るように練習をしましょう。なるべく広い場所を作ってあげて、つかまり立ちや手を貸して立たせることはなるべく避けます。自分でバランスを取りながら立ち上がることが大事だからです。歩行器も発達を妨害してしまうので、使わないようにします。

乳幼児期から思春期までの変化とアレルギー

授乳中の赤ちゃんは「乳に含まれる物は消化せずに吸収」してしまうので、食物アレルギーを起しやすい時期です。これは乳児の腸管が特殊な状態であるためですが、1歳の断乳の時期になると、徐々に未消化のものは吸収しないようになります。さらに腸管の免疫も発達してくるので、アトピー症状などは徐々に落ち着いてくる時期です。 この時期は、かわりに気管支喘息やアレルギー性鼻炎、中耳炎、アレルギー性結膜炎、じんましんなどを起こす場合もありますが、生活環境や食生活を整えることで軽減することができます。

その後は腸管機能や肺機能が発達してきて、小学校入学の頃は、アレルギー疾患が治まって来る時期があります。そしてこの時期から思春期に向かって、アレルギー症状は出にくくなります。

しかし、思春期に入ったら注意が必要です。今までなりを潜めていたアレルギー性疾患が急激に再発することがあるからです。思春期は、子どもから大人の体に急激に変化する時期。内分泌(ホルモン)、免疫、神経系統のバランスが乱れやすくなります。さらに、学業やクラブ活動なども忙しくなり、生活も不規則になりがちです。この時期には、本人がアレルギーを乗り越える生活を心得ていないと、回復は難しくなります。できるだけ小さな頃から、健康管理のための知識を伝えて習慣化しておくことが大切です。

思春期を乗り越え、二次性徴(性ホルモン分泌が活発になる時期)がきちんと終われば、大人の体になって多少のアレルギーは乗り越えられるようになります。

以上が、乳幼児期から思春期までの大きな流れです。もちろん個人差があり、生活環境や習慣によっても症状の出かたは異なってくるでしょう。しかし、成長の過程でアレルギーが出やすい時期と出にくい時期を知っておくと、症状改善や予防の大きなヒントになります。まずは最も大切な乳幼児の時期から、お子さんの睡眠と生活リズムを整えてあげてください。

監修者プロフィール

角田 和彦 先生 かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長

1953年生まれ。
1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。
著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。

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