夏は汗をかきやすく、日焼けや熱中症なども気になる季節。
お出かけや宿泊も多くなる夏休みに気をつけたいことを考えてみましょう。
乳幼児とアトピー第7回 夏を快適に過ごすために
アトピーとあせもの違い
赤ちゃんや小さなお子さんは、代謝が激しく汗っかきです。春先から気温が上昇し始めると汗をかきやすくなり、汗が原因で肌が赤くなったり湿疹ができて炎症を起こしやすくなります。
汗と湿疹が結びつくと「あせもかな?」と思って、お子さんを連れて来院してくるお母さんは多いものです。しかし、肌が赤くなりぶつぶつの湿疹が出ている場合は、大半がアトピー性皮膚炎です。 あせもは、水分の多い汗がうまく排泄されずに皮膚の下にたまってしまった場合に、白い水ぶくれのような水泡となります。アトピーの場合は、脂分の多い汗が原因で赤く腫れてしまいます。
エクリン腺やエポクリン腺といった汗腺や皮脂腺の状態により、汗は水分を多く含んだり、脂分を多く含んだりします。気温が低くあまり汗をかかない季節から、徐々に気温が上がって汗をかきやすくなる季節の変わり目は、それまで体内に溜め込んでいた脂分が排泄され、それがアトピー症状につながりやすくなります。もっと暑くなる真夏の時期は、水分の汗が増えて脂分の汗を押し出してくれるので、アトピー症状も軽くなりやすい傾向があります。
アトピーやあせもの症状が出た場合、すぐにできるケアは、濡れたタオルで拭いてあげること。皮膚に水分を与えることで、脂分を含んだ汗が薄まるので、症状の緩和につながります。それでも治まらない場合、特に皮膚に赤いブツブツがある場合はアトピー性皮膚炎なので、治療が必要になります。
エアコンの賢い使い方
汗による湿疹の対策としては、過剰に汗をかかせないことも大切です。いきなり大量の汗をかかないように、室温を調整したり、衣類の調整をしてあげましょう。
夏にエアコンを使う場合は、まず使いはじめに注意が必要です。しばらく使ってなかった場合は、ホコリやカビがたまっているので内部の掃除をします。業者さんに頼んでしっかり掃除をしてもらうのが理想ですが、自分でフィルターを水洗いするだけでも違います。
シーズンの初めにエアコンをつけるときは、まず試運転が必要です。窓を開けて換気が十分な状態で、一時間ぐらい試運転してみましょう。試運転をすればホコリやカビが飛ぶので、それから窓を閉めて本格的に使います。
エアコンを使う際の設定温度は、外気温や湿度の状態で変わります。基本的には過剰に汗をかかずにすみ、かゆみのない快適な状態になるよう調整します。目安としては、外気温より2~3度低い気温となるように。外気温と室内温の差がありすぎると、体調を崩しやすい(冷房病など)ので注意が必要です。
野菜スープが紫外線、熱中症によい理由
夏の外出時は、強い紫外線が気になります。紫外線を過剰に浴びるのはNGですが、紫外線を浴びることで、体内でビタミンDが作られるので、適度な日光浴は必要です。
目安としては、熱中症にならない、日焼け止めクリームが必要なほど紫外線が強い場所に長時間いないようにすることです。紫外線対策は、長袖や長ズボン、帽子や日傘といった物理的な方法がよいでしょう。それ以上の対策が必要な状況に、お子さんを連れ出さないことが大切です。
日焼け対策で大切なことは、意外ですが野菜をたくさん摂ることです。野菜に含まれる低分子の抗酸化物質が、日焼け対策となります。ポイントは、生野菜ではなく煮込んだ野菜を摂ることです。紫外線の強い南の国の人ほど、煮込んだ野菜スープを食べています。
野菜を煮込んで味噌汁にすれば、塩分も補給できるので熱中症予防にもなります。夏はつい冷たいものやあっさり味のものを求めがちですが、これが塩分不足につながり熱中症を起こしやすくします。夏こそ、野菜たっぷりの味噌汁を飲むことが、日焼けと熱中症対策になるのです。
蚊の対策は、刺されないことを第一に
夏は蚊の対策も必要です。アトピー性皮膚炎のお子さんは、蚊にさされてかき壊すことで症状が悪化することもあります。まず大事なことは、蚊に刺されないようにすること。基本は皮膚の露出を少なくすることです。蚊に刺されそうな場所に出かけるときは、長袖・長ズボンといった物理的な対策を第一に考えましょう。
蚊取り線香、蚊取りマット、虫よけ剤は、ほとんどの製品が人体にも害を及ぼすので避けたほうがよいでしょう。特に、ディート(N-ジエチル-メタ-トルアマイド)という殺虫作用のある化学物質が使われた虫よけ剤は、皮膚の発疹・腫れ・かゆみなどを助長します。皮膚だけでなく脳の障害も報告されているので、避けてください。
蚊にさされてしまった場合は、冷やす、アルコールで拭く、かゆみ止めの軟膏をぬるなどの処置が必要です。軟膏を使う場合は、かかりつけのお医者さんに相談してください。
帰省、旅行先での注意点
夏休みは、旅行や帰省で泊りがけになることも多いでしょう。日常生活とは違った環境で気をつけることは、まず食事です。離乳食の時期は、あらかじめ用意していけばよいので問題は少ないのですが、宿泊先で食事を出してもらう場合は注意が必要です。
特に食物アレルギーがある場合は、実家や宿泊先の方に理解してもらうことが大切。その上で食材や調味料を持参し、自分で料理すれば安心です。食事を作ってもらう場合も、アレルゲンとなる食材を避けてもらうよう説明しましょう。
もう一つの大きな問題は、寝具です。特に実家や知人の家など他の家に泊めてもらうときは要注意。お客さん用の布団は、長い間押入れにしまわれています。そこから出したばかりの寝具には、ダニの糞や死骸のかけら、カビなどが多く付着しています。それが湿疹や鼻炎、喘息発作の引き金になることもあります。
実家などで相談が可能であれば、寝具を何回か外に干して、掃除機をかけておいてもらったり、毛布や枕カバーなど、洗えるものは洗濯しておいてもらいましょう。
自分でできることとしては、宿泊先の寝具に自分でそうじ機をかけたり、防ダニ用のシーツや布団カバー(高密度に編まれた製品)を持参し、宿泊先の布団をおおってしまうのもよいでしょう。
旅館やホテルでは、空調がコントロールされ寝具のシーツやカバー類もクリーニングされています。かといってトラブルが少ないとは言い切れず、自分でコントロールしにくい分、特に寝具対策を準備していったほうが安心です。
旅館やホテルの寝具を使う際は、飛び跳ねたりホコリを立てないようにしましょう。シーツは清潔でも、布団やベッドには、ダニやカビが多い場合があるからです。
監修者プロフィール
1953年生まれ。
1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。
著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。
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