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乳幼児とアトピー

子どもの肌にボツボツやカサカサを見つけたら、まさか「アトピー?!」と親は不安になりがち。でもあわてずに。体の機能が未発達の乳幼児は、少しの刺激でも皮膚症状が出やすいのです。適切なケアをすれば治りが早いことも特徴です。

乳幼児に多い皮膚トラブルとアトピー

アレルギーやアトピー性皮膚炎についての捉え方と、乳幼児に起こりやすい皮膚トラブルの特徴を知りましょう。

アトピーは皮膚に症状が出やすい体質

アトピー性皮膚炎の人には「アトピー皮膚」と呼ばれる保水力が乏しくて乾燥しやすい皮膚、外部からの刺激に弱い皮膚が存在しており、この皮膚の「バリア障害」が病態を作っています。アトピー性皮膚炎というとすぐに「アレルギー疾患」と思いがちですが、アトピー性皮膚炎はその特徴的な皮疹の形からつけた病名であり、アレルギー性鼻炎・結膜炎のように原因から名づけられた病名ではありません。ですからアレルギー以外の要因も数多く関与しています。同じように見える皮膚炎でもその原因および悪化要因はさまざまであり、このために難治なのです。

皮膚のトラブルの多くはスキンケアで改善

赤ちゃんの皮膚トラブルとして多い「脂漏性湿疹」は、頭やまゆ毛などに、やや黄色い湿疹が少し盛り上がってできるもの。皮膚の表面で脂分や汗が固まってしまうのが原因で、せっけんを用いてマメにスキンケアを行い、必要に応じて軟膏を併用すれば、じきに治ります。

また「おむつかぶれ」は、おむつを当てる部分だけに起こるもの。おむつ交換をまめにし、お尻をきれいに洗って乾燥させてからおむつを当てましょう。難治な時はカンジダ皮膚炎なども念頭に置きますが、紙おむつ使用のときは、メーカーを変えると治まる場合もあります。

慢性湿疹であるアトピー性皮膚炎の診断は、早くても4カ月を過ぎてからであり、それまでの皮膚のトラブルは「乳児湿疹」と称され、多くは適切なスキンケアで軽快します。通常のスキンケアで改善せず、家族内にアレルギー素因が強い時は、主治医に相談してみましょう。

アレルギー反応の原因となる主なアレルゲン(抗原物質)

体内に異物(抗原)が侵入すると、体内で産生された抗体がこの異物をすみやかに排除しようと働きます。この生体の防御反応を「抗原抗体反応」と呼んでいますが、過剰に働くと蕁麻疹や呼吸困難などの過敏反応を引き起こします。

吸入性抗原 室内:ダニ、ほこり、古い骨など
花粉:杉、ひのき、松、かもがや、ぶた草
かび:カンジダ、アルテルナリアなど
動物:猫、犬、小鳥、うさぎなど
食物性抗原 卵、牛乳、大豆、米、小麦、そばなど
薬物性抗原 抗生物質、解熱剤、ホルモン剤、軟膏など
接触性抗原 衣服:羽毛、羊毛、絹、麻、ナイロンなど
金属:ネックレス、ピアス、歯科金属など
その他:化粧品、革製品、うるし、塗料

アトピー性皮膚炎といっても、実はアレルギー以外の要因も複雑に絡み合っていて、それが原因の特定を困難にしていて、根本解決の治療法が見つからない壁になっているのかもしれません。

乳児期の皮膚トラブルの場合、まずは「スキンケア」で様子を見てあげることが大切です。湿疹があるからといきなり薬で抑えることにはリスクも伴うので、スキンケアで経過を見ながら、病院にかかるか判断していくことが望ましいでしょう。

私たちの身体が「異物」と感じてしまう物質は、日常生活の様々な所に潜んでいるものです。まずはできる範囲で、疑わしいものから遠ざけることも有効かもしれません。

赤ちゃんの肌の気になる症状

Q:赤ちゃんの肌の気になる症状、小児科と皮膚科の、どちらにかかるべき?

A:まずはかかりつけの小児科医で相談を
日頃からなじみがあり、家の事情もよく知っているから安心ですね。皮膚症状が強く皮疹を早く抑えたい場合は、やはり皮膚科がよいでしょう。咳や喘鳴がでやすい、胃腸が弱いなど、皮膚以外にも症状があり、家族内に喘息や鼻炎などの人がいる場合はアレルギー科へ。ここでは検査結果をもとに、総合的な生活指導が行われます。

うちの子、アトピー?! 検査・診断・治療の受け方

アレルギーの治療の場合は早く原因を見つけることが大切。特に食物のアレルギーは早く治療を始めるほど「耐性」が獲得されやすく、早期に再摂取が可能となります。気になる症状は専門医に相談してみましょう。

ちょっとしたことでも相談してみることが大切

「もしかして何かのアレルギー…?」と不安に思うなら、医師に相談してみましょう。特に両親がアレルギー性疾患を持っている場合は、子供もアレルギー体質であることが多いのです。受診の際は、いつからどんな症状があり、どんな時に悪化し、どんな対応をしたのか、またすでに治療を行っている場合は、使用した薬剤の名前、検査を受けたことがあれば、その結果なども事前に整理しておきます。また三親等(児の祖父母迄)のアレルギー性疾患の有無も調べておきましょう。母子手帳も忘れずに。

初診

体のどの部分にどのような症状が出ているか、また逆にどの部分に出ていないのか、子どもの体の状態を医師が目で見て観察します。服を全部脱がせて、全身をチェックするので、脱ぎ着しやすい服装で受診しましょう。

触診

肌の状態を、医師が手で触って確かめます。ザラザラしているか、カサカサか、ジュクジュクか、盛り上がっているか、熱を持っているのか。といった詳しい状態をチェックし、前回からの変化なども確かめます。

問診

日頃の子どもの様子を聞かれます。「いつ頃からどんな症状がある」というのはもちろん、「虫に刺されるとかぶれる」「日に当たると悪化する」なども、医師には参考になります。日頃から子どもの変化に目を配りましょう。

病院での検査を受ける前に、しっかりとこれまでの経緯や状況、検査や使用した薬の名前などを整理し、準備して受診することが大事です。

こんな検査を受けます

小児科やアレルギー科では1歳になる前から積極的に血液検査が行われますが、皮膚科はあまり検査を重視せず、検査をするにしても1歳を過ぎてからが多いようです。

血液検査

IgE RIST
粘膜下の肥満細胞の上にあるIgE抗体に侵入したアレルゲンが結びつくと、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、皮膚や気道の粘膜で炎症を引き起こします。検査ではこのIgEの量を測定し、「アレルギー反応の起こしやすさ」を調べます。正常値は成人で170 IU/ml以下であり、1歳児は10 IU/ml以下で、30 IU/mlは超えません。この数値が高い人は、アレルギー体質が強いと考えてよいでしょう。

IgE RAST
アレルゲンをつきとめるための検査で、ダニや花粉、卵や牛乳など、特定のアレルゲンに対するIgE値を測ります。評価には0〜6の段階があり、数値が高いほど、その物質でアレルギーを起こしやすくなります。数値が高くても実際には症状が出ない人もいますが、3以上の場合は何らかの症状が出ることが多いようです。

除去・負荷試験

食物アレルギーの検査で、原因食物として疑わしい食物(原料での使用を含む)を2週間ほど食べずに過ごします(除去試験)。症状が改善すれば、除去した食物がアレルゲンの可能性が高く、今度は同じ食物を食べて症状が出るかを観察します(負荷試験)。症状が出ればその食物がアレルゲンと特定され、程度によって治療を行います。単に原因食物の診断だけではなく、再摂取の可否を決めるために耐性獲得の確認試験として行われることもあります。

パッチテスト

アレルギー反応にはすぐ過敏症状が出ず、時間がたってから症状が出る場合もあり、そうした遅延型のアレルゲンを調べるための検査。化粧品や歯科金属など疑わしい物質をテスト用絆創膏にしみ込ませて皮膚に貼り、48〜72時間ほど様子をみますが、同部の皮膚が赤くなる、発疹が出るなどの異常があれば、アレルゲンとして扱います。

【診断と治療】
「皮膚症状」「かゆみ」「慢性」がアトピー診断の3要素

アトピー性皮膚炎の診断では「特徴的な皮疹」「強いかゆみ」「症状が反復して、慢性に経過する」の3つを満たすことが基本的な条件といえます。これに血液検査、皮膚テストの結果や家族内のアレルギー性疾患の有無などを参考にして診断されます。

アトピー性皮膚炎は「慢性」の湿疹のため、以前は1歳になる前に診断を下すことには慎重でしたが、現在では3カ月以上その特徴的な皮疹が反復・持続するなら、アトピー性皮膚炎と診断されています。乳児期の湿疹の多くは生後4〜5カ月頃までに軽減するため、離乳食開始後も皮疹が続く場合、新たに出現する場合はアトピー性皮膚炎が疑われます。

【アトピーと診断されたら】
衣食住の生活全般にわたって悪化の原因を探します

乳幼児のアレルギー症状は、はじめ皮膚症状(湿疹、蕁麻疹など)や消化器症状(嘔吐、下痢など)として現れることが多いのですが、1歳前後から呼吸器(咳、喘鳴など)、さらに眼・鼻と症状の出やすい臓器が変わることがあり、これを「アレルギーマーチ(行進)」と呼んでいます。多くは成長とともに改善(自然治癒)してゆくのですが、アレルギー体質が強い場合は原因を除くとともに、症状が進行しないように早めに対応することが大切です。

アトピー性皮膚炎の場合、衣類の素材、石鹸・洗剤、食物、ダニ、ハウスダスト、心身ストレス、汗、紫外線など、原因や悪化の要因はさまざま。生活環境の見直しで症状が改善することも多いので、主治医の指示のもと適切なケアを心がけましょう。

予防接種の受け方

現在のワクチンは改良されてゼラチンは除かれ、その他の成分にも配慮されているので、重篤な過敏反応は以前に比べ減っています。アレルギー体質が強い場合は、摂取液を希釈して皮内テストを行い、安全を確認してから行うことも可能ですので事前に相談を。

アトピーの治療で出されるお薬

かゆみ止めは、かゆい→掻く→炎症の悪化→かゆいの悪循環(イーチングサイクル)を断ち切るために処方されます。皮膚の感染には抗生剤が処方されることも。
軟膏は医師からその内容と塗り方の説明を受け、自己流でなく、目的に合わせて正しく使うことが大切です。

かゆみ止め(飲み薬) 抗ヒスタミン剤:ペリアクチン、ポララミンなど
抗アレルギー剤:サジデン、セルテクトなど
抗炎症剤(塗り薬) ステロイド:リンデロンVG、キンダベート、アルメタ、ロコイドなど
非ステロイド:アンダーム、スタデルム、コンベックなど
その他(塗り薬) 保湿剤:ワセリン、ウレパール、ヒルドイド
抗生剤:ゲンタシン、パラマイシン

最近では、1歳に満たない赤ちゃんでも、アトピー性皮膚炎と診断されるようになったのですね。でもアトピー性皮膚炎と診断されたからといって、慌てる必要はありません。主治医の先生とよく相談しながら、ケアの方法や悪化要因を探って、冷静に対処していきましょう。

食物アレルギーとアトピー

赤ちゃんの腸は未熟成長とともに耐性がつきます

私たちが口にした食物は、胃や腸で消化されてから体内に吸収されます。タンパク質はアミノ酸レベルにまで分解され、腸管から吸収されます。発育途上の乳幼児はこうした消化吸収能力が未熟であり、免疫の機能も未発達。そのため早い時期から異種タンパク質を与えすぎると、体が処理しきれずにアレルギー反応を起こしてしまうのです。

現在、保健所健診では生後5カ月、体重7kgほどを目安に離乳食が指導されていますが、食物アレルギーが心配なケースでは果汁よりも野菜スープを優先させ、離乳開始も6カ月を過ぎてからと指導しています。離乳食は少量から始め、同じものを続けて大量に与えないことが肝要です。体の機能が十分に整っていない乳幼児は、少しの刺激でも過敏症状が出やすいのです。しかし成長とともに消化能力や免疫機能が高まってきますので、あまり神経質になりすぎず、子供が「自ら治るのを邪魔しない」姿勢も大事です。

乳児湿疹などがみられる場合には、保健所の指導よりもややゆっくりめに離乳食をスタートすることも大切ですね。

小さいほど治りやすいので早期発見と早期治療が大切

食物アレルギーを起こしやすい食べ物は年齢によっても異なり、乳幼児期は卵や牛乳が多いのですが、思春期以降は穀物(小麦、ソバ)、甲殻類(エビ、カニ)、果実などの過敏症が増えてきます。食物にアレルギーがあっても一生食べられないというわけではありません。早く原因である食物をつきとめ、その食物をひかえた食事を与えてやれば、やがて耐性を獲得して安全に食べられるようになります。特に年齢が低いほど除去期間は短くてすむので、疑わしい症状がある場合は早めの取り組みが重要です。
「回転食」は主食や副食を回転しながら食休みを作って摂取させるもので、原因食物を避けながら徐々に耐性を獲得する「診断・治療・予防」を兼ねた食物療法です。

耐性を作るための「回転食」

「回転食」はアレルゲンとなる食物を避けて症状を緩和しながら、かつ栄養が偏らないようにしつつ耐性の獲得を目的にした食物療法で、その原型は米国のランドルフ博士が提唱したものです。同じものを続けて食べないことで新たな感作を防止し、また一方で隠れた原因食物を発見することも可能となります。食材を4〜5日ごとに回転しながら与え、症状を悪化させる食材は除き、症状が安定してくれば新たな食材を回転に加えて増やします。ブレンネマンの研究では耐性の獲得は年齢が低いほど早いのですが、必ず専門医の指導を受けましょう。

食物アレルギーには「ハッキリ型」と「かくれ型」がある

ハッキリ型(即時型)

アレルゲンとなる食物を食べてから時間を置かずに症状が出るアレルギー反応のこと。卵やサバ、エビやカニ、そばなどを食べて、じんましんが出たり強いかゆみが起こったりするのはハッキリ型の反応。

かくれ型(遅延型)

アレルゲンを食べた後、時間が経過してから反応が出るアレルギー反応。同じ食物を大量に食べ続けることでも起こります。血液検査や皮膚テストでは判明しないことが多く、除去・負荷テストで判定。「ハッキリ型」の100倍の頻度で起こるともいわれます。

かくれ型は、血液検査や皮膚テストではわかりにくく、気づかないことが多いもの。疑わしいと感じた場合は、除去・負荷テストを行ってみるのも良いかもしれません。

アトピーベビーお世話のHOW TO

親は心配しないで子どもを見守って

多くの子どもは成長とともに症状が治まり、状態がよくなるものです。親があれこれと口うるさく言ったり、心配のあまり手をかけ過ぎると、子どもの自然治癒力をじゃますることになりかねません。生活環境を整えたり食事に気を配るなど、できることをしたら、そっと子どもを見守りましょう。
また信頼できる医師を見つけることも、アトピー克服には大切です。子どもの症状をちゃんと観察して親の話に耳を傾けてくれる医師を探し、信頼関係を築きましょう。

【生活環境の改善】
家の中はこまめに掃除を刺激の少ない衣類で快適に

ダニやハウスダスト、カビなどを寄せつけないために、こまめに掃除を。エアコンのフィルターの掃除も忘れずに行ない、できれば床はダニがつきやすいカーペットやタタミよりもフローリングにするといいでしょう。
衣類が肌を刺激してかゆくなることもあるので、肌着は通気性がよく、吸湿性があって汗を吸いやすい木綿素材を。袖口や衿のフリル、ゴムで絞った服などは肌へ刺激を与えることもあるので、なるべく避けましょう。洗剤も安心な成分でできた刺激の少ないものにし、すすぎはしっかりと。肌を刺激する漂白剤や柔軟剤は使わない方が無難です。

わが子がかゆがる姿を見ると、本当にやるせない思いをするのが母性かもしれません。だからと言って冷静さを失わず、親として、してあげられることを吟味し、環境面と情緒面を意識して接してあげられるとよいですね。
あくまでも立ち直る必要があるのは、子供さん自身です。

【お風呂】
ぬるめのお湯にゆっくりと、やさしく洗って、よく流す

体の汚れを落として清潔に保つためにも、入浴は大切。特に子どもは汗をかきやすいので、汗を洗い流すためにもできるだけ毎日入浴させましょう。
体が温まるとかゆみが増すので、お湯の温度はぬるめに。そのほうがゆったりとつかることができます。また塩素対策も忘れずに。
体を洗うときは、ナイロンのタオルやスポンジでゴシゴシこするのは厳禁!
刺激の少ないせっけんを手のひらでよく泡立てて、そっと体を洗いましょう。その後、せっけんが肌に残らないように、よく洗い流します。

【スキンケア】
いつも清潔を心がけてかゆみ予防にも保湿ケアを

肌はいつも清潔に保つことが大切です。外遊びから帰ったら、汚れた手や体を洗って、汗をかいていたら汗を拭き取って着替えさせましょう。肌が乾燥しているとかゆみを感じやすいので、ローションやクリーム、オイルを塗って保湿を。
入浴後は、肌から水分が蒸発して乾燥しやすくなるので、できるだけ早く保水と保湿をしましょう。
塗り薬が処方されている場合は、医師の指示に従って、肌を清潔にしてから塗ります。そのとき塗るほうの親の手も、洗って清潔にするのを忘れずに。
爪は短く切り、長い髪は束ねてあげることも大切です。

【睡眠・運動】
疲れてぐっすり眠れるように思い切り外遊びをさせましょう

特に具合が悪くなければ、できるだけ運動をさせましょう。日差しが強い時間を避けて、外で思い切り遊ばせるのが理想です。日差しが強い時には帽子をかぶせます。汗をかいた時のためにタオルと予備の着替えも用意しましょう。
まだ小さい赤ちゃんなら、親が手足を動かすなど、楽しいスキンシップを。
また、体の抵抗力をつけ皮膚を鍛えるためにも、なるべく薄着を心がけましょう。
思い切り遊ぶと、疲れのために夜はぐっすりと眠れます。かゆみのことを気にしなくていいので子どももラクなはずです。
寝具は羽毛、羊毛などは好ましくありません。

アトピーっ子の特徴を知って、できる範囲で気をつけるだけでも、ずいぶんと回復する力を持っているのが子供です。入浴や肌のケア、生活環境面において、アトピー改善のためにできることが沢山あります。

アトピーママの妊娠Q&A -赤ちゃんをアレルギーから守るために

両親がアトピーの場合、子どももその体質を受け継ぐのでは、、。と不安になるものです。 アトピーのママが妊娠中や授乳中に気をつけること、母乳や離乳食などの赤ちゃんの食について紹介します。

Q:私もアトピー、第一子もアトピーです。アトピーはやはり遺伝でしょうか?

A:両親ともアトピー体質なら75%の子どもはアトピー体質

アレルギーを起こしやすい(アレルゲンに反応する抗体を作りやすい)、「アトピー体質」は、確かに遺伝的要素が強いといえます。両親がアトピー体質の場合は75%、父親か母親のいずれかがアトピー体質の場合は45%ほどの確率で、その体質は子どもに引き継がれます。

しかし、両親がアトピー体質でない子どもでも15%程度はアレルギー性疾患を起こすといわれます。アレルギー性疾患の発症には遺伝的な体質のほかに生活環境などの影響も大きく関わっており、体質は遺伝しても、病気が遺伝するわけではないので、たとえアトピー体質であっても掃除や食事などに気を配ることで発症を防いだり、症状を軽くすることは可能です。

親がアトピーだからといって、必要以上に子供がアトピーだったらどうしようと心配することはなさそうです。体質が遺伝しても病気そのものが遺伝する訳ではないので、生活環境面等を配慮することで発症しなかったり、症状を軽くできるものです。

Q:私はアトピーですが、妊娠中に薬を塗ると赤ちゃんに影響するのでしょうか?

A:まず、主治医に妊娠を伝えて。自己判断しないことが大切

アトピー性皮膚炎の治療で処方される薬には、妊娠中に使わないほうがよいものもあります。特に内服薬には注意が必要なものもあるので、妊娠がわかったら、できるだけ早く主治医に伝えましょう。必要に応じて薬を減量、変更してくれるはずです。

妊娠して皮膚症状が軽くなる人もいれば、逆に悪化する人も。まずは母体の健康が第一ですから、つらいときは無理をせずに薬を用いることが望まれます。通常の軟膏は心配ありませんが、自己判断せずに主治医に相談を。
また妊娠を希望しているなら、あらかじめ医師に伝えて、薬についても相談しておくといいでしょう。

Q:これから子どもがほしいと思っています。
赤ちゃんがアトピーにならないように、妊娠中や出産後に気をつけることは?

A:生活環境を整え、食事は偏食せずにいろいろなものから栄養をとって

妊娠中

胎盤が完成する(妊娠4カ月末)以前から、赤ちゃんの体内ではさまざまな抗体が作られるようになり、妊娠週数が進むほど外部からの刺激に反応するようになります。

妊娠中は、偏食をせず、室内の環境整備と適度な運動を心がけることが大切。特に妊娠後期は同じ食材ばかり用いずに食域を広くし、不用意に高たんぱく・高脂肪の食品を取り過ぎないように注意します。

例え家族にアレルギー素因が強い場合でも、自己判断で食物の除去を行ってはいけません。必ず主治医に相談を。

出産後

できるだけ母乳で育てましょう。母乳の中には、感染や食物過敏症など腸管の防御免疫をつかさどる「分泌型IgA」が含まれており、人工栄養児よりもアレルギーを起こしにくいといわれます。

しかしお母さんの摂取した食物成分も母乳中に分泌されるため、注意しないと母乳によって赤ちゃんが食物に感作されることがあります。皮膚症状や胃腸症状など、アレルギーの存在が疑わしい場合は、スキンケアや環境整備をするとともに、授乳中の食事にも注意し、同じものを続けて大量に摂取しないように心がけましょう。

せっかくの妊娠。でもアトピーだったらどうしようと、親がアトピーの場合心配になるものです。正しい知識を持ったうえで、できることに取り組めば、必要以上に心配することはありません。

アトピーベビーのための、おっぱい・ミルク・離乳食Q&A(その1)

生まれてまもない赤ちゃんの唯一の栄養源は母乳や粉ミルクです。
口にするものの大切さを考え、アトピーを発症させない食生活をめざしましょう。

Q:アトピーの赤ちゃんには、母乳と粉ミルク、どちらが体にいいのでしょうか?

A:基本は母乳が一番。与えられないときはアレルギー代用乳を

赤ちゃんにとっては、お母さんの母乳が栄養バランスもよく、また各種の免疫物質が含まれていて一番のごちそう。感染防御の面からも、スキンシップの面からも、可能な限り母乳で育てたいもの。
しかし母乳だけでは足りない、どうしても母乳で育てられない場合は粉ミルクもやむをえません。アレルギー疾患が心配な場合は、牛乳アレルギー用代替ミルクやアレルギー体質向けの予防ミルクなども市販されています。

赤ちゃんにとって、お母さんからの母乳がベストであることは言うまでもありません。しかし様々な事情からそれが困難なケースもありますので、その場合は一人で悩まずに、相談しましょう。

Q:赤ちゃんがアトピーの場合、授乳中のお母さんが食生活で気をつけることは?

A:アレルゲンとなるものが母乳から赤ちゃんへ伝わることも

アトピー性皮膚炎には、「アトピー皮膚」と呼ばれる、保水性の乏しい敏感肌の存在がありますが、食物もダニや花粉、カビなどの吸入性抗原とともに、原因・悪化要因のひとつになり得ます。お母さんが摂取した食物の成分は母乳中に分泌されるため、食物が赤ちゃんのアレルゲンとして明らかな場合は、医師の指導のもと、原因である食物の摂取を控えるようにします。

また特に食物の関与がない場合でも、食材は食休みを作りながら摂取し、高たんぱく、高脂肪のアレルギーを起こしやすい食物は月齢が進んでから与えるようにしましょう。食事内容が偏らないようにし、鉄分・カルシウムを多めに、バランスよく栄養をとるようにしましょう。

なお食物による過敏症状は皮膚にとどまらないので胃腸症状や呼吸器症状にも注意し、発育発達にも配慮してください。

授乳中、お母さんが除去食をできないときは

外食や旅行など、何かの理由で食物の除去ができないときは、食事の30分前に「インタール」という抗アレルギー剤を内服する方法があります。この薬は赤ちゃんの腸管にバリアを張り、食べた食物が高分子のまま腸管を通過してアレルギー反応を起こすのを防ぐもこの体に吸収されない性質のため、副作用などの心配なく、QOL(生活の質)を高めるのに役立ちます。主治医に相談してみましょう。

Q:離乳食を早めるとアレルギーになりやすいと聞きました。始める時期の目安はいつ頃ですか?

A:6カ月頃を目安にあせらずにゆっくり始めましょう

成長途上にある赤ちゃんは消化・吸収機能が未熟であり、免疫機能もまだ未熟なため、早くから異種のたんぱく質を与えるとアレルギー反応を起こしやすいのです。家族にアレルギー素因が強い場合は、通常よりも離乳食の開始を1カ月ほど遅らせます。

離乳食を早める必要はないとはいっても、いつまでも母乳や粉ミルクだけというのも考えもの。
赤ちゃんの成長にもよりますが、6カ月頃が目安です。発育、発達を見て進めましょう。

Q:アレルギーにならないためには、どのように離乳食を始めたらいいのでしょう?

A:ごく少量から始め少しずつ種類と量を増やします

基本的に通常の離乳食の進め方と変わりませんが、赤ちゃんの消化能力や噛む力など各自の発達に合わせて、与える食物や形態、量や回数を徐々に変えていきます。最初は1食品をスプーン1さじから始め、ゆっくりと種類と量を増やします。

食品は新鮮な食材を選んで、必ず火を通し、味つけは薄味に。「おもゆからドロドロがゆへ」というように、調理のしかたも変えていきます。調理するときに使う包丁やまな板、おろし金や茶こしなどを通じてアレルゲンが混入しないように配慮し、清潔に管理しましょう。

果物はアレルゲンとなりやすいものが多いので、果汁よりも野菜スープから始める方が安心です。和食を意識して食域を広げますが、アレルギー素因が強い場合は、抗原性の強い卵の使用は遅らせ、10カ月を過ぎてから与えます。

赤ちゃんは、成長のスピードが個々に異なり、個人差が大きくもあります。お子さまの成長に合わせてあげることが、離乳食においても大切です。書籍などで得られる情報は、標準的なもので、早すぎることも起こりますから、乳児湿疹等で不安な場合は、相談してみましょう。

アトピーベビーのための、おっぱい・ミルク・離乳食Q&A(その2)

Q:子どもが食物アレルギーだと言われました。除去食をしても栄養不足になりませんか?

A:医師の指導のもと安全な食物で代替して栄養を補います

過敏反応を起こす特定の原因食物を避け、症状を抑えながら栄養を補い、耐性獲得をめざすのが「除去(選択)食」です。原因となる食物を除去する一方で、その栄養面の不備を他の食物で補わねばならないため、独断による自分勝手な食事療法は厳禁。年齢が低く長期に及ぶほど栄養面の管理が重要なので、医師や栄養士の指導が不可欠です。

医師は食物日誌で体調の変化や栄養のバランスを確認し、定期的な血液検査や身体計測で栄養面・発育面の不備をチェックしつつ、母子の心理的なケアにも気を配りながら進めます。

除去食を進めていく場合には、医師の指導をしっかり受けながら、自己流にならないことが大切です。栄養士と医師の管理のもとであれば、栄養不足の心配はないでしょう。

Q:食物アレルギーの場合、食材はどんなものを買えばいいでしょうか?

A:新鮮な旬の食材を。無添加・無農薬がより安心

食材は旬のもの、新鮮なものを選びましょう。子どもの年齢が低いほど、できるだけアレルギーを起こしづらい、抗原性の低い食品を選ぶことが大切です。

また食品添加物(着色料、防腐剤)や薫蒸剤、農薬などの化学物質でも、アレルギーに似た過敏症状をきたすことがあるので、なるべく無添加・無(低)農薬の食材を選ぶことが望まれます。

食材選びのポイント
【食塩】

食塩はミネラルを多く含んだ天然塩が望まれます。

【醤油】

大豆、小麦にアレルギーを有する場合は通常の醤油が使用できないので、米、雑穀、魚の各醤油が市販されています。

【味噌】

大豆アレルギーのために米、小麦、雑穀の味噌が用意されています。

【魚介類】

魚介類は鮮度のよい近海物を置いている店で購入します。般的には白身魚の方が青魚、甲殻類よりアレルギーが少ないとされますが、近年、魚のアレルギーが増えており、タラやカレイに反応する例もあります。

【肉類】

卵過敏症では鶏肉を控えねばならない場合もありますが、牛乳過敏症の多くは牛肉の摂取が可能です。

【穀物】

米に過敏症がある場合は、雑穀(粟・ひえ・きび)やアマランス、キノアなどで代替。米の蛋白成分を酵素処理したものも市販されています。小麦は、大麦やライ麦などで代替できる場合もありますが、主治医の指示に従って。

【食用油】

一般的な食用油には大豆油が混入したものも多いので、大豆に過敏症がある場合は、大豆以外の自然圧搾またはそれに準じた油を。アレルギー症状軽減のためにも、しそ、ごま、なたねなどリノレン酸の多い油がおすすめ。バターの代替品として、アレルギー用マーガリンも市販されています。

アトピーベビーのための、おっぱい・ミルク・離乳食Q&A(その3)

Q:子どもが口のまわりをかゆがります。これもアトピーでしょうか?

A:アレルギー反応ではありませんが注意が必要です

赤ちゃんは歯の生える頃からよだれが多くなり、俗に「塩かぶれ」と呼ばれる口周囲の湿疹を認めることがあります。これはアレルギー反応とは別のものですが、皮膚の弱い子供は悪化しやすいので、食後は口の周りをよくゆすぎ、清潔にこころがけてケアする必要があります。

また大人でもヤマイモなどアクの強い食物を食べると口の周りがかゆくなることがありますが、これは食物中に含まれるヒスタミンやセロトニンといった成分がアレルギー症状に似た過敏反応を起こすもので、このような物質を「仮性アレルゲン」と呼んでいます。これらの食物は実際の食物アレルゲンとなることがあるので、調子が悪いときは、気をつけましょう。

仮性アレルゲンを含む食品
ヒスタミンを含む食品 ほうれん草、なす、トマト、牛肉、鶏肉、えのきだけなど
アセチルコリンを含む食品 トマト、なす、たけのこ、ピーナツ、里芋、山芋など
セロトニンを含む食品 トマト、バナナ、キウイ、パイナップルなど
ノイリンを含む食品 さんま、冷凍のたら、塩さけなど
トリメチールアミンオキサイドを含む食品 かれい、たら、すずき、いか、たこ、えびなど

Q:食物アレルギーの場合、食事制限はいつ頃まですればいいの?

A:アレルギーを考えて慎重に。材料をよく確認すること

通常は除去食を始めて半年ほどしたら、耐性獲得のチェックのために医師の指示のもと過敏食物の負荷試験を行います。
原因過敏食物の診断の場合は、試す食物を隠したブラインドチャレンジ(盲検)を行うこともありますが、ただ耐性の獲得を確認し、食物制限を解除するだけなら、血液検査や皮膚テストの結果を参考にして、原因食物を実際に食べさせてみる「オープンチャレンジ」だけでも十分です。
卵の場合なら、抗原性の低い鶏肉→卵黄→卵白へと徐々にUPしてゆきます。尚、耐性の獲得が確認されても、連続摂取は避け、食休みを作っておくことが大切。

Q:市販のベビーフードを利用しても大丈夫でしょうか?

A:アレルギーを考えて慎重に。材料をよく確認すること

さまざまなベビーフードが市販されていますが、卵、牛乳など抗原性の高い素材が多く用いられている点、またメーカーの推奨する月齢が早い点が気になります。
離乳食はできるだけ手作りが望まれますが、お母さんが忙しい時や遠出の際に便利なことも事実。食物アレルギーを意識した商品シリーズもあるので、利用するときは商品に記載された月齢よりも少し遅めを意識し、内容をよく確認しておきましょう。

お子さんには、手作りのものを食べさせてあげたいのが親心というものでしょう。とはいえ、忙しい毎日に常に手作りも大変なものです。材料などをよく見たうえで、時には市販のベビーフードを食べさせるのもよいでしょう。

監修者プロフィール

千葉 友幸 先生 千葉クリニック院長

東京医科大学付属病院小児科で一般外来とアレルギー外来を担当後、東京都江戸川区に千葉クリニックを開業。
乳幼児から大人までアレルギー疾患の治療にあたり、アレルギー代替食の開発などにも力を入れている。
著書に『よくわかるアトピー性皮膚炎 一問一答』(共同出版)『子どものためのアトピー対策メニュー』(グラフ社)など多数。

アトピーに関することはお気軽にご相談ください

※相談無料。強引な商品の販売や治療法への勧誘などは一切行っておりません。

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