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アトピー肌と乾燥肌のスキンケア【前編】

秋・冬はお肌が乾燥する季節。乾燥からお肌を守るためにはスキンケアが欠かせません。正しい皮膚のしくみを知って、アトピー肌や乾燥肌の改善に役立てましょう。

皮膚のはたらきとは?

体の表面を被う皮膚は、常に外界と接しています。体と外部の境界を形作っている器官ですから、そのはたらきは多岐にわたります。ここではまず、皮膚の役割を簡単に知っておきましょう。

皮膚の4つのはたらき

1.防御と包囲

皮膚は外界と人間の体の接点。膜のような構造で体を包み、体の中に有害な物質が入り込まないように防御しています。また、体内から体外に必要な物質が出て行かないようにするはたらきがあります。また外部からの衝撃を弱めるクッションの働きもあります。

2.分泌と排泄

皮膚には、皮脂を分泌する「皮脂腺」と汗を分泌する「汗腺」があります。皮脂腺から皮脂が分泌されることで皮膚表面には薄い膜ができます。この膜が皮膚の水分蒸発や乾燥を防ぎ、皮膚表面を滑らかで柔らかく保つはたらきを持っています。汗腺からは汗が分泌され、水分や老廃物を排泄しています。健康な肌は常に汗を分泌し、肌表面に潤いを与えています。

不足しがちなセラミドを外から補給するセラミド配合のクリームも最近発売されました。ローション状、クリーム状、ゲル状とありますが、ローション状はつけやすい反面成分が落ちるのも早く、クリーム状は落ちにくいですが塗った後、少々べたつきます。たとえば、朝のお出かけ前にはローション状の保湿剤、お風呂上りはクリーム状のものを使うなど、TPOによって使い分ける工夫も大切です。

3.体温の調節

皮膚には細い血管が集まっています。この血管は、周囲の温度が高いと一時的に拡張。その結果、血液の循環がよくなり熱が放出されます。また発汗が促され、その汗を蒸発させることにより気化熱をうばい、皮膚表面が冷えることからも体温を下げます。逆に、周囲が寒い場合には、血管は収縮し、毛穴を塞いで体温の低下を防ぎます。こうして皮膚は体温を調節しています。

4.知覚器官

皮膚は五感のひとつである触覚を感知する器官です。皮膚には神経のネットワークが多数分布。外界から受けた刺激に応じて、触れた感じ(触覚)、熱さ(温覚)、冷たさ(冷覚)、痛み(痛覚)、押される感じ(圧覚)を感知し、伝達する役割を担っています。

これら皮膚の4つの働きを考えてみると、皮膚が私たちの生活の様々な局面で「仕事」をしているということがわかります。乗り物による交通の発達や空調の効いた密閉空間での生活など、私たちの生活が進歩して便利で快適になるほど、私たちの皮膚は「働き場所」を失っているのではないでしょうか。

適度に皮膚を働かせることも、皮膚を「退化」させないという意味で大切なことと言えるかもしれませんね。

皮膚はこうなっている

皮膚は毎日少しずつ入れ替わっています。表皮の下層部で作られた細胞が時間とともに形を変えながら表面に押し上げられ、最後は垢となって脱落します。何層にも重なったそれぞれの層はどんな役割を担っているのでしょうか。

約28日周期で細胞が入れかわる

表皮は、大部分を占めるケラチノサイト(角化細胞)とメラノサイト(色素細胞)、それにごくわずかのランゲルハンス細胞(免疫細胞)から構成されています。

基底層で新たに作られた角化細胞は、表面に押し上げられていくにつれて扁平化し、最後は角質層として体表のバリアとなり、垢として脱落します。この一連の角化細胞の流れを「ターンオーバー」といい、基底層で作られてから脱落するまでの周期は約4週間(28日)程度です。

表皮の下には真皮があります。真皮は乳頭層と網状層に分けられます。真皮の下の皮下組織には、脂肪細胞が中心の組織と動静脈や神経があります。

細胞間脂質と皮脂膜がバリアを作る

セラミドと皮脂膜
角質細胞同士をセラミドがつなぎ とめ、皮膚表面を皮脂膜が覆うこ とて、外部の刺激から肌を守り、水 分の蒸発を防いでいます。

皮膚表面近くに押し上げられた角質細胞は、扁平しきってカチカチのケラチンとなって、レンガのように層状に重なっています。これでは固くて体の動きに対応できないので、ケラチンの間を潤滑油のようなもので埋め、柔軟性を維持しています。それが「角質細胞間脂質」と呼ばれる脂質。水を吸着する力が強く油にも混ざりやすい性質をもっています。主成分はセラミドで、これが充分に作用していれば水分、油分とも適当に保持され、お肌はしっとりきめ細かく保たれます。

皮膚全体
表皮の下には、皮脂腺や汗腺があり、分泌される皮脂や汗が混ざりあって、皮脂膜を作っています。

また、皮膚の表面では皮脂膜が活躍。皮脂膜は汗と皮脂腺から分泌される脂質が混ざってできており、水分の蒸発を防ぐだけではなく、外部の刺激から肌を保護し、弱酸性のため細菌の繁殖を防ぎます。また、皮膚表面に潤いとツヤを与えます。

このように皮膚は角質細胞間脂質と皮脂膜の働きにより、不要な物質が体内に侵入すること、必要な物質が出てしまうことから守っています。この働きを、皮膚の「バリア機能」と呼びます。

表皮各層のはたらき

角質層(かくしつそう)

最も表面にある角質層は、細胞核を持たない角質細胞の集まりで、ケラチンと呼ばれるたんぱく質とその間を埋める細胞間脂質からできています。有害物質が外界から侵入するのを防ぎ、弱酸性の皮脂膜を作ることで皮膚を保護し、体内の水分を逃がさないようにする役割があります。

顆粒層(かりゅうそう)

皮膚の構造 基底細胞から作られる表皮細胞は、次第に表面に押し上げられていき、最後は垢となり脱落します。

水分が蒸発するのを防ぐバリアの働きがあります。

有棘層(ゆうしそう)

表皮の大部分を占め、表面に近づくほど扁平な形をしています。外部の刺激をリンパ球に伝えたり、抗原を食べたりするランゲルハンス細胞があります。

基底層(きていそう)

表皮の最下層。新しい表皮細胞が作られているところです。メラノサイト(色素細胞)があり、紫外線の刺激などによってメラニン色素の生成が促され、紫外線を吸収することで皮膚を守る働きをしています。

日焼けで生じた肌の黒ずみが、徐々に回復して本来の色に戻るのも、この「ターンオーバー」の結果とも考えられますね。

表皮各層や皮脂腺、汗腺の仕組み。皮脂膜や細胞間脂質の役割を理解することで、日々のスキンケアの大切さと、「保水」「保湿」「保護」を順次行うことの必要性もよく解りますね。

アトピー肌の特徴は?

アトピーの肌と健常な肌では、どこがどう違うのでしょうか。アトピー肌の弱点を知ることは、症状をやわらげる第一歩。アトピー肌にもっとも適したスキンケアの参考にしてください。

アトピー肌の特徴

毛孔性角化(もうこうせいかくか)

肉眼で見てわかるアトピー肌の特徴のひとつ。乾燥して鳥肌状になり、毛穴がザラザラになっている状態です。

角質水分量が少ない

アトピー肌がカサカサに乾燥してしまうのは、角質の水分量が少ないからです。角質層にはバリア機能がありますが、水分量が少ないために、外からの刺激物質が真皮へしみ込みやすくなっています。

汗腺以外の表皮からの水分喪失量が多い

角質水分量が少ないために、真皮が保っている水分が体の外に出やすくなっています。ここで言う水分とは汗腺から出る水分、つまり汗以外の水分です。この数値が高いほど、皮膚のバリア機能が低下します。

汗をかきにくい

汗をかきにくく、汗をかくとその汗が刺激となってかゆくなることもあります。

生まれつきセラミドが少ない

アトピーの人は生まれつきセラミドが少ないという説があります。セラミド(角質細胞間脂質)が少ないと、角質細胞に隙間ができ、刺激が皮膚に浸透しやすく、角質細胞が不安定になり、はがれやすくなります。正常なターンオーバーが行われず、刺激に弱くなったり、角質が硬くなったりします。

生まれつき皮膚がぜい弱で
バリア機能が弱い

アトピーの人は生理的に皮膚がぜい弱でバリア機能も弱いので、皮膚に付着した物質が体内に入りやすくなっています。汗や洗剤のすすぎ残し、紫外線や引っかき傷などのちょっとした刺激(非特異的刺激)に対しても、接触性皮膚炎やかぶれを引き起こしてしまいます。もちろん、ダニやホコリなどのアレルゲンも吸収し、表皮近くにあるランゲルハンス細胞の働きによりアレルギー反応を起こすのです。

スキンケアが必要

角質層のバリア機能が正常に働かないと、水分が失われやすく、刺激にも弱くなります。

アトピーのかゆみや炎症は、すべてがアレルギーからというわけではありません。アレルギーはアトピーを起こす要因のひとつではありますが、ベースとなる皮膚そのものがぜい弱であるために、表皮に対して非特異的刺激があるとそれがかゆみの原因となり、習慣的に掻いたりこすったりすることによって角質細胞が失われ、さらに刺激に弱くなるという悪循環を起こしています。この皮膚のぜい弱性を少しでも補うために、スキンケアは大切。

適切なスキンケアを行って、かゆみの原因となる非特異的刺激から肌を守ることで、慢性的な掻き壊しがなくなり、症状が改善することもあります

アトピー肌は「水分が蒸発しやすいため乾燥する」ことと「汗や洗剤、アレルゲンなどの異物が入りやすい」、さらには「さまざまな刺激を受けやすいため、かゆみのきっかけになりやすい」という特徴をもっているということです。

健康な肌に比べて防御がうすいアトピー肌を守るためにも、スキンケアは欠かせないということですね。

秋・冬はやっぱりスキンケアが欠かせない!

肌が乾燥しやすい秋・冬は肌のバリア機能が低下しています。低下したバリア機能を補うのがスキンケアです。自分に合ったスキンケアを知って、肌にとって厳しい季節を乗り切りましょう。

秋・冬はスキンケアで乗り切って

夏場は汗対策が大切でしたが、秋から冬にかけて注意が必要なのは空気の乾燥。空気が乾燥すると、本来角質が保っている体内の水分が失われやすく、冬場はアトピー症状が悪化することも。加湿器などで室内の湿度をできるだけ適度に保てれば理想的です。とはいえ、外出先ではそうもいきません。適切なスキンケアを行って肌の水分、油分を保ち、バリアー機能を正常に働かせることが大切です。もちろん基本は肌を清潔に保つこと。ただし、入浴などで洗うときには角質をこすりすぎないよう注意し、入浴後は適切なスキンケアを行いましょう。

肌の状態は人それぞれ
自分に合った方法のスキンケアを

男性と女性では皮膚に違いがあります。男性は男性ホルモンのはたらきによって、皮脂腺から皮脂の分泌が女性に比べて活発になります。鼻の脂がその代表例でしょう。これら皮脂は汗と混ざって天然のクリームになります。このクリームは肌を滑らかにはしますが、角質細胞間脂質とは違います。弱酸性なので、細菌や真菌の繁殖を抑えます。しかし、洗わないで放っておくと酸化して、油分が好きなダニやカビの温床になったり、にきびなどの吹き出物になったりします。常にフレッシュな皮脂でいるために、皮膚を清潔に保つようにしましょう。

また、赤ちゃんも皮脂の分泌が活発な時期。脂漏性皮膚炎なども起こりやすくなっており、刺激にも敏感です。

アトピーの症状が千差万別なように、肌の状態も人によって違います。スキンケアも人それぞれ最適な方法があるのです。

思った以上に不足しているスキンケア

乾燥肌の場合、冬のスキンケアの中心は、保湿です。そのための保湿剤ですが、たいていの人はたくさんつけたつもりでも実は足りていないのです。

人間の肌の総面積は約1・6g。これは畳一畳分とほぼ同じ広さです。30gのクリームはだいたい全身のスキンケア1回分の量に相当しますが、これを1回に使う人はあまりいません。もちろん値段の問題もありますが、充分につけるようにするだけで、皮膚症状が改善することもあります。

ただし顔など、もともと皮脂の分泌が多い部分のつけすぎには気をつけて。

男性の場合、女性と比較してローションやジェルといった、あっさりしたアイテムを好まれ方が多いように思います。

男性ホルモンの働きによる皮脂の分泌が活発な方は、特にそうでしょうね。中には「スキンケアは面倒だからしない」という猛者も。ご自分の肌の状態を正しく把握して、効果的なスキンケアを実践したいですね。

アトピー肌のスキンケア

炎症のある部分とない部分、どうケアすればいいの? 保湿剤はどちらに塗っても大丈夫?

アトピー肌の場合、炎症がなくて乾燥している肌と、炎症を起こしてジクジクしている肌と部分的に違いがあります。
冬は炎症が乾燥した風に当たってヒリヒリすることも。そんなアトピー肌を適切なケアで守りましょう。

オイルとクリームの違い

肌のバリア機能は、炎症がある部分では弱まっています。バリア機能が弱いと、表皮から体内に浸透する刺激も多くなります。炎症のある部分とない部分では、スキンケアは区別して行うように心がけましょう。

たとえば保湿剤には主に、油系のものとクリーム系のものがあります。ワセリンやオイル類などの油分のみの場合は皮膚の表面に膜を作り、その膜をバリアの代わりにして刺激から守り、角質の水分を保つことが目的。クリームはそれ自身が水分を含んでいますから、塗れば水分を補給でき、同時に油も含んでいるのでバリアの代わりにもなります。最近だとアトピーの人に不足しがちなセラミド含有のクリームもあります。

保湿剤として使われるワセリンやオイル類とクリームは性質が違うので使い方もそれに応じて変える必要があります。ワセリンやオイル類を塗ることで皮膚はふさがれますから汗が外に出なくなります。その汗が皮膚の下に溜まるとよけいにかゆくなることがあります。また正常な脂質が毛穴からでていくことも妨げますから、自分で皮脂を分泌する力が弱まり、皮膚がかえって乾燥しやすくなることも。

炎症の程度に合わせて
スキンケアも変えましょう

ですから、炎症が重症のとき、つまり角質層よりも下の層まで炎症を起こしているようなときにオイル類を使い、比較的軽症でカサカサしている状態の時はクリームにするなどの使い分けを。症状によって保湿の方法を変えながら、ケアしていきましょう。たとえ全身に症状が現れていてもカサカサしているだけなら軽症です。たとえ顔だけでもそこが高度な炎症だったらこれは重症です。

炎症を抑える薬剤を使用するときは、患部だけにしましょう。保湿剤にステロイドを混ぜたものを患部以外の場所にも塗ることがかつてはありましたが、最近はそうした方法はとられないようになってきました。

薬剤と保湿剤を混ぜて使う場合、組み合わせによっては、薬の成分が化学変化を起こす可能性もあるため、注意が必要です。最近は、患部とそうでない部分、また重症部分と軽症部分は分けてケアする方法が勧められています。炎症の程度は下の表を参考にしてください。

皮疹の重傷度(日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療ガイドラインより)
重症 高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節などを主体とする。
中等症 中等症までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻破痕などを主体とする
軽症 乾燥および軽度の紅斑、鱗屑などを主体とする
軽微 炎症症状に乏しい乾燥症状主体

保湿剤・クリームの成分解説

オイル(油分)

保湿剤の中では比較的刺激が少ないもの。皮膚の表面を油の膜で覆い、水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激から守ります。汗が出にくくなり、かえってかゆくなることもあるので、塗りすぎに注意。角質層よりも下の層まで炎症を起こしているような重症部分には、効果があります。

クリーム

ウォーターインオイル(W/O)といわれ、油の中に水が非常に小さな乳化粒子となって点在しています。水分と油分を同時に皮膚に塗布することができ、単独で与える場合よりも、より効果的に水分や油分を皮膚に補給することができます。症状が軽微で乾燥した肌に効果的。自分の肌に合ったクリームを使いましょう。

尿素

尿素には水分を吸収する性質があります。そのため皮膚に残っている乏しい水分をも尿素が奪ってしまうこともあるので使い方には注意しましょう。自分に合った尿素含有率のクリームを使いましょう。

Q&A

Q:自分の自然治癒力を高めるために、まったく保湿クリームを使わない「脱保湿」を勧められました。
脱保湿を続けると、自力で保湿成分を分泌できるようになるのでしょうか?

A:これは子供にいくらお小遣いをあげるといい子に育つかということと同じだと考えてください。保湿剤はお小遣いです。あげすぎれば甘やかす結果になり、お金を自分で稼ぐ努力をしなくなります。つまり自分で保湿成分を作らなくなります。そんなときいきなり保湿剤を塗るのをやめたら一気にバリバリに乾燥してしまいます。逆にまったくお小遣いをあげなければ、悪いことをしてでも稼ぐようになるかもしれない。本当に必要な時に必要なケアをしてあげることが大切です。

オイル系アイテム、クリーム系アイテムの特徴を良く理解して、ご自分の肌の状態にあったアイテムの選択と使い方が重要ということになります。

また、セラミドを含むアイテムを塗ることで、バリア強化を促すというスキンケア方法も。さらには、ご自分の身体でセラミドを作るのに有効なサプリメントを摂るという方法もあります。

監修者プロフィール

上出 良一 先生 東京慈恵会医科大学皮膚科助教授

東京慈恵会医科大学医学部卒業。同皮膚科、形成外科で研修を経て、1980年、同校皮膚科講師に。
翌81年から2年間ニューヨーク大学皮膚科研究員、カリフォルニア大学サンディエゴ校皮膚科研究員として光線過敏症の研究に従事。
1987年より現職。光皮膚科学、皮膚アレルギー、皮膚悪性腫瘍が専門。

アトピーに関することはお気軽にご相談ください

※相談無料。強引な商品の販売や治療法への勧誘などは一切行っておりません。

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