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アトピー性皮膚炎の原因に迫る

アトピーの原因は皮膚にある? それとも免疫異常?

あとぴナビでは、アトピー性皮膚炎には大きく二つの問題があると考えてきました。一つ目は皮膚の問題。皮膚の乾燥や炎症への直接的な対策として、保湿を中心としたスキンケアが大切です。 もう一つは免疫の問題。アトピー性皮膚炎は、免疫反応が関係した過敏症であるアレルギー体質が原因の一つとされています。アレルギー体質改善のためには、睡眠、食、運動、入浴といった生活習慣を見直し、アレルゲンを避け、皮膚の乾燥を防ぐなど生活環境を整えることが大切です。 アトピー性皮膚炎改善のためには「皮膚」と「免疫」といった二つの側面へのアプローチが考えられますが、そもそもアトピー性皮膚炎の原因とは何でしょう?

これまで、アトピー性皮膚炎といえばIgE値が高くなり炎症物質に働きかける免疫の問題ととらえた研究が主流でした。しかし最近では「アトピー性皮膚炎は免疫反応とは関係ない」とする研究論文も増えてきました。疾患の原因がはっきりしないのでは、その対策も立てにくくなります。 例えば、ステロイド剤は免疫を抑制することで皮膚の炎症を抑えます。そこで「免疫は関係ないですよ」と言われたら、「薬を塗っても意味ないの?」と思ってしまう方もいるでしょう。あとぴナビ編集部でもさまざまな研究者のお話を聞いてきましたが、取材を重ねるほどアトピー性皮膚炎の原因については混迷していくように感じられました。

アトピーの原因遺伝子と発症過程が解明された

ところが、今回の取材ではアトピー性皮膚炎の原因がすっきりと整理されてきた感触を持つことができました。理化学研究所統合生命医科学研究センター疾患遺伝研究チームが2016年4月26日に発表した「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」という論文について説明しながら、アトピー性皮膚炎の原因に迫っていきたいと思います。

本研究にあたって理化学研究所の研究チームは、人のアトピー性皮膚炎と同じ症状が出るモデルマウスをつくるために、遺伝子変異を誘導した3000匹ものマウスを調べました。遺伝子変異は、マウスの遺伝情報に変化を引き起こす物質を投与することで起こります。その結果、免疫に問題が起きてアトピー性皮膚炎を発症するマウスを開発し、Spade(StepwiseProgressive AtopicDermatitis= 多段階進行性アトピー性皮膚炎)マウスと命名しました。この研究は、Spadeマウスを使って免疫に問題を起こす(アレルギーを起こす)原因遺伝子とその発症過程を調べたものです。

まず、マウスがアトピー性皮膚炎を発症する過程からみていきましょう。Spadeマウスがアトピー性皮膚炎を発症するまでには2カ月(8〜10週間)くらいかかります。出生直後のマウスに皮膚炎はありませんが、この頃から皮膚のバリア機能に異常があることが分かりました。バリア機能に異常があってもすぐに皮膚炎は起こりませんが、表皮の下にある真皮に炎症細胞が集まってきました。この状態で皮膚が刺激を受け続けると、約2カ月後に皮膚炎が起こります。皮膚炎発症の段階では、免疫反応は関与していません。つまり、アトピー性皮膚炎が発症する原因は皮膚組織にあり、免疫系にはないということです。

では、アトピー性皮膚炎と免疫は無関係かといえば、そうではありません。皮膚炎が起こった次の段階で、免疫反応が関与してきます。皮膚炎によるかゆみで皮膚を掻くなどの刺激により角質層の破壊が進み、2型ヘルパーT細胞(Th2)が活性化することでアレルギー反応が起こり炎症を増強させていきます。 以上、アトピー性皮膚炎の発症過程をまとめると左図のようになります。

このように、アトピー性皮膚炎はいくつかの段階を経て進行していきます。8年ほど前、ニューイングランドジャーナルという医学雑誌に、「皮膚炎は先天的バリア機能の異常から発症し、その後Th2が活性化することでアレルギー反応が起こり慢性化していく」という趣旨の研究発表がありました。今回のマウスによる実験は、まさにその通りの結果を示したことになります。

アトピー性皮膚炎の原因は皮膚なのか免疫なのか。原因を探るために理化学研究所では、人と同じ症状が出るSpadeマウスを開発し、実験しました。

その実験で、「皮膚炎は先天的バリア機能の異常から発症し、その後2型ヘルパーT細胞(Th2)が活性化することでアレルギー反応が起こり慢性化していく」という結果が出たのです。

バリア機能が低下する理由は?

次に、なぜこのような発症過程が生じるかを説明します。皮膚はターンオーバーを繰り返し、常に新しい細胞と角質をつくり出して生まれ変わっていきます。古い角質は剥がれ落ち、新しい角質と入れ替わりますが、この調整をしているのがプロテアーゼと呼ばれる酵素です。皮膚の正常なターンオーバーを保つためには、毎日つくられるプロテアーゼの量が適正である必要があります。

プロテアーゼには古い角質を剥がす役割があるのですが、プロテアーゼが多いほど角質が剥がれやすくなります。つまり、プロテアーゼが多すぎると角質が剥がれすぎてしまい、皮膚のバリア機能が低下してしまうのです。Spadeマウスの皮膚においても、プロテアーゼが通常より約10倍増加していることが確認されました。

アトピー発症のしくみがわかった

アトピー性皮膚炎の発症のしくみそこでプロテアーゼが増加してしまう原因を調べてみると、JAK1(ジャックワン:JAKはヤーヌスキナーゼの略称)という信号伝達分子が関係していることが分かりました。信号伝達分子とは主に細胞内に信号(情報)を伝える分子で、JAK1は免疫細胞の機能に関係する分子として知られています。このJAK1が活性化することでプロテアーゼが増えることが、Spadeマウスの実験により明らかになりました。以上をまとめると、右図のようになります。

※理化学研究所 総合生命医科学研究センター 疾患遺伝研究チームによる研究論文「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」より
※理化学研究所 総合生命医科学研究センター 疾患遺伝研究チームによる研究論文「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」より

JAK阻害剤と保湿剤でアトピーを予防する

簡単にJAK1の活性化と述べましたが、正確に表現するとJAK1のアミノ酸配列に変化が起こる遺伝子変異が原因で、JAK1を介した信号伝達が活性化されたことになります。SpadeマウスにおいてはJAK1に突然変異が起こり、これを発端としてアトピー性皮膚炎が発症しているようです。 そうであれば、JAK1の活性化を抑えることでアトピー性皮膚炎を予防できるのではないかと研究チームは考えました。そこでJAK阻害剤(JAK1の働きを抑える薬)をマウスの皮膚に塗ってみると、実際に発症を遅らせることができました(グラフ上)。このことから、皮膚におけるJAK1の活性化変異がアトピー性皮膚炎発症の原因となることが確認できました。

JAK阻害剤を塗る実験と並行して、ワセリン(保湿剤)のみをマウスに塗る実験も行われました。そうしたらなんと、ワセリンにもアトピー性皮膚炎の予防効果があり、効果としてはワセリンのほうが高いことが分かりました(グラフ下)。

以上の実験から、JAK阻害剤とワセリン(保湿剤)にはアトピー性皮膚炎を予防する効果が期待できることが分かりました。JAK阻害剤はJAK1の活性化を抑えることによりバリア機能を改善することで皮膚炎発症を予防します。一方のワセリン(保湿剤)は、物理的に角質層のバリア機能を補修することで予防効果があると考えられます。両者の共通点が皮膚のバリア機能低下の改善にあることは、アトピーケアを考える上で非常に重要なポイントとなります。

Spadeマウスは、JAK1という免疫細胞の機能に関係する分子が活性化して、プロテアーゼという酵素が約10倍も増加。それが原因で角質がはがれすぎてしまい、皮膚のバリア機能が低下してアトピー性皮膚炎が発症します。

この結果から、JAK阻害剤をマウスの皮膚に塗ってみると、アトピー性皮膚炎の発症を遅らせることができました。さらに、ワセリン(保湿剤)にも予防効果があるという結果も出ました。つまり、角質層のバリア機能を改善することがアトピーケアには効果的と考えられるのです。

アトピーの原因は4つある

Spadeマウスにおけるアトピー性皮膚炎発症のメカニズムを解明し、予防法を発見した研究論文「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」について一通り説明したところで、この研究から読み取れることをまとめていくことにします。 まず、最初に触れたアトピー性皮膚炎の原因についてはどう考えたらよいでしょう。この研究で使われたSpadeマウスの場合、皮膚炎の発症段階では免疫・アレルギーは関係ありませんでした。まず、バリア機能の異常という皮膚の遺伝的要因があり、真皮に集まってきた炎症細胞によって皮膚炎が発症しました。原因は遺伝的要因をもった皮膚組織にあったといえます。そして、皮膚炎発症後しばらくしてから、免疫・アレルギーの問題が絡んできました。

ここで重要なことは、Spadeマウスのケースはアトピー性皮膚炎発症の一例に過ぎないことです。つまり、すべての人が同じパターンで発症するわけではありません。 研究チームリーダーの吉田先生によれば、アトピー性皮膚炎の原因は「皮膚」「免疫」「遺伝」「環境」の4つに分けられます。そしてこれらの原因が単独で存在しても発症に至らず、3つ以上重なると発症しやすいという感触があるそうです。 「原因は皮膚にある」とか「原因は免疫にある」とそれぞれの研究者は自分の研究テーマから持論を展開していきますが、原因を一つと考えるから混乱が起こるわけです。4つの原因の組み合わせで考えれば、人によって原因が少しずつ異なるのは当然で、それぞれの原因がわかれば個別の対策を立てることができます。

皮膚の保湿がアトピーケアの基本

Spadeマウスの実験では、JAK阻害剤とワセリンに皮膚炎予防の効果があることが分かりました。JAK阻害剤についてはアトピー性皮膚炎をターゲットとした薬剤開発に期待するしかありませんが、ワセリンに皮膚炎予防の効果があるということは、日常的なスキンケアがいかに大切であるかを物語っています。 この実験ではたまたまワセリンが使われましたが、要は保湿によってバリア機能を回復させることが重要なわけです。生まれつきバリア機能に障害がある赤ちゃんがいたとします。出生時にバリア機能異常に関係する遺伝子を持っているか調べて(今回の研究により技術的には可能)異常がある場合は、出生直後から適切なスキンケアを行うことでアトピー性皮膚炎を予防することが可能になるはずです。

界面活性剤が皮膚バリアを破壊する

保湿することと同時に、バリア機能を低下させる生活習慣を改めることも大切です。次の写真をご覧ください。

※理化学研究所 総合生命医科学研究センター 疾患遺伝研究チームによる研究論文「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」より

この写真は、野生型マウス(皮膚炎のないマウス)とSpadeマウスの皮膚の状態を比べたものです。下の青い部分は真皮、上の赤い部分は角質層です。角質層部分の赤い色は、皮膚に塗ったビオチン(ビタミンB群)がどれだけ浸透しているかを示すものです。野生型のマウスでは、ビオチンが角質層表面にとどまっているのに対し、Spadeマウスでは角質層内にビオチンがしみ込んでいます。ビオチンが浸透するほど皮膚バリアは破壊されていることになります。

今回は写真を掲載できないのですが、野生型マウスでも石けんで皮膚を洗った後は、角質層の皮膚バリアが上のSpadeマウスと同じくらい破壊されることが分かっています。石けんで皮膚を洗うと界面活性作用により皮膚表面の皮脂まで洗い落とされてしまい、皮膚バリアまでもが破壊されてしまうのです。体の汚れや細菌を洗い落とすという意味で石けんは効果的ですが、皮脂まで洗い落とし皮膚バリアを破壊するのは考えものです。皮膚のバリア機能が低下している人は、なるべく石けんなどの界面活性剤が含まれた洗浄剤を使わずに、肌にやさしい洗浄剤を選び軽めに洗うか、お湯で洗い落とす程度が理想的です。

今回ご紹介した研究論文は、詳細まで説明するととても専門的で難しい話になるのですが、大枠は理解していただけたと思います。Spadeマウスを使った研究がさらに進めば、アトピー性皮膚炎の発症にかかわる様々な要因が分子レベル、細胞レベルで明らかにされて新たな治療法へと進展していくことでしょう。まさに日進月歩の勢いといえるアトピー性皮膚炎研究の今後に期待したいところです。

アトピー性皮膚炎の原因は人によって異なりますが、「皮膚」「免疫」「遺伝」「環境」という4つの原因が3つ以上重なると、皮膚のバリア機能が低下して発症しやすいともいわれています。

バリア機能を回復させるには、保湿ケアが重要です。また、なるべく皮脂を落とさないために、界面活性剤不使用の洗浄剤でやさしく軽めに洗うか、お湯で洗い落とす程度が理想的なのですね。

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