アトピー症状を改善するために汗をかく大切さを知りましょう
アトピーの人は汗をかきにくいこと、そして、汗をかかないことがアトピーを悪化させている可能性があることを知っていますか。 アトピーと汗の関係について正しく理解し、症状改善のヒントを探りましょう。
アトピー症状を改善するために汗をかく大切さを知りましょう
アトピーの人は汗をかきにくいこと、そして、汗をかかないことがアトピーを悪化させている可能性があることを知っていますか。 アトピーと汗の関係について正しく理解し、症状改善のヒントを探りましょう。
汗はアトピー性皮膚炎(以下アトピー)を悪化させると思い込んで、汗をかかないようにしている方はたくさんいることでしょう。汗をかくと、炎症部分がしみたり、痒くなったような気がしたり……。せっかく塗った保湿剤が汗で流れ落ちてしまうのも、気持ちがいいものではありません。
このように、今までは汗の悪い点ばかりが強調されてきましたが、汗にはむしろ良い側面があることが、最近わかってきました。
つまり、汗は「悪者」ではなく、むしろ汗をかかないことの方が、アトピーを悪化させる可能性が高いことがわかってきたのです。発汗は生物体として必要な機能ですから、体のためになる働きがたくさんあります。汗をかきにくいと、それらの恩恵にあずかれないことにもなります。
アトピーを改善するために汗をかくことの大切さを知っておきましょう。
この研究によって、アトピーの方は汗をかきにくいこと、汗をかかないことがアトピーを悪化させる原因にもなっていることが明らかになりました。
なぜアトピー肌では皮膚のバリア機能が弱まっているのでしょうか? その大きな理由に、角質層の水分が不足していることがあります。実際にアトピーの方は、皮膚からの水分蒸発量が多いこと、角質層の水分含有量が少ないこと、潤いを与える角質のセラミド成分が少ないことなどが、これまでに証明されています。
汗は、角質層の水分量を維持するために大きな役割を果たしています。このことからも、アトピー肌のバリア機能が低下する原因のひとつとして、発汗障害が考えられていました。が、実験方法が難しいなどの理由で証明されていなかったのです。
そこでこの研究では、入浴によってかく汗の量の違いを測定しました。同世代のアトピーの方とそうでない方各20人を対象に、お湯を42℃に調節。入浴時間とお湯へのつかり方を一定にし、測定時の条件も同じにして、『局所発汗量連続記録装置』を用いて、額、首、肘の内側、背中の4ヶ所で発汗量を精密に測定しました。
実験の結果、アトピーの方の発汗量は、健常者よりも少ないことが明らかになりました。特に、額と背中ではっきりとその差が出たのです。また、アトピー症状が出ていない部分のほうが、出ているほうより発汗量が少ない傾向がありました。額ではアトピー症状の有無による発汗量の違いはありませんでした。
汗には体温を調節する大切な働きがあります。運動や気温の上昇などで体温が上がったとき、かいた汗を蒸発させることによって気化熱が放出され、体内の熱を逃がすことができるのです。
ところが、汗をかきにくいアトピーの方は、体内の温度が上がっても十分な汗をかけないため、皮膚温が上がってしまい、それが炎症を悪化させることにもなります。ですから「汗はアトピー症状を悪化させるに違いない」と考えていた人は、要注意。汗をかかない生活を続けると、ますます発汗機能は弱まり、その結果、肌はさらに乾燥しやすくなって、わずかな熱刺激で皮膚温が上昇するようになります。大切なのは、汗をかける体に戻すことなのです。
発汗には「代償性」という性質があります。一ヶ所汗をかかない場所があると、本来かくべき汗の量を他の部分が代償するのです。つまり、わきの下で汗をかかない人は、その代わりに背中や腕など、ほかの部分から汗をかきます。実際の発汗量が少ないのに、アトピーの人が汗をかいていると感じるのは、この代償性によるものと考えられます。
ふだん汗をかかない乾燥した皮膚に少しでも発汗がおこると、それが刺激になりかゆみが起こることがあります。しかし、汗をかき続けているうちに皮膚にうるおいが戻ってきて、このかゆみも解消されていきます。
汗をかかないことがアトピー症状を悪化させていることを知ったら、次は、汗をかくことの大切さを理解しましょう。
「汗をかくとかゆくなったり、症状が悪化したりするから」と、入浴や運動を避けているアトピーの方がたくさんいます。 たしかに、汗の中には炎症を起こし、かゆみを生じる物質も含まれていますが、続けて汗をかいているうちにそれに慣れてきて、むしろ汗の良い面が出てくるようになります。逆に、汗をかきにくいことによって、体内に熱がこもりやすくなっていることが、かゆみを悪化させる原因にもなります。
人間は体内温度が上がると汗をかき、汗を蒸発させることで熱を放出します。ところが、汗をかきにくいアトピーの場合、毛細血管は皮膚温を低下させようと精一杯開いているのに、汗をかけないので、体温は上がり、肌が赤くみえます。
かゆみの感覚は、37℃の体温でもっとも敏感になるとされています。体温が上がりかゆみが増し、症状が悪化してしまうのです。
また、汗をかかないと、角質層の水分量が不足し、肌はカサカサになり、バリア機能は低下してしまいます。カバは赤い汗をかきますが、それには強い抗菌作用があることがわかっています。人間の汗にも抗菌ペプチドや免疫グロブリンなどの成分が含まれています。これらの作用によって、皮膚にすみついている善玉菌である常在菌を守り、有害な病原菌の侵入を防ぐという働きがあります。
汗をかくのは体を守るためです。アトピー克服のために汗をかく体に戻しましょう。
角質層に十分な水分を供給し、肌のバリア機能を高めます。また、肌にうるおいを与えるのも汗の働きです。
汗には免疫グロブリンや抗菌ペプチドが含まれていて、細菌などから肌を守ります。
汗をかくことで気化熱を放出し、体内温度や皮膚温度を下げる働きがあります。皮膚温が高いと炎症は悪化しやすくなります。
汗をかかない理由にはふたつのことが考えられます。ひとつは、汗を分泌する汗腺に異常がある場合で、もうひとつは発汗を支配している自律神経に異常がある場合です。
以前はアトピーの方が汗をかきにくい原因として、汗腺の異常が考えられていました。炎症のある部分のバリア機能が破壊されていて、汗管が詰まったりするため、汗が排出できなくなるということです。ところが、研究の結果により、アトピーの方は、炎症が起こっていない皮膚からより患部からの方が汗をかいていることが明らかになりました。つまり、汗をかけないのは炎症があるからではなかったのでFす。
これによって、アトピーの方が汗をかきにくいのは、発汗をコントロールする自律神経系の異常である可能性が非常に高いということが明らかになりました。
(出典:早川順、塩原哲夫:「アトピー性皮膚炎患者における発汗障害の解析」日本皮膚科学会雑誌2000;110:1115−1119)汗と言えばアトピーへの悪影響が言われますが、最近汗をかかないことの方が悪影響があることがわかってきました。汗をかかない人は角質層の水分量が少ないことも分かってきました。
汗は体温上昇を抑える役割がありますが、アトピー性皮膚炎の場合汗をかきにくいため、皮膚温が上昇して炎症が悪化することにつながります。アトピー性皮膚炎の場合「代償性」といって1か所汗をかかないと他の箇所が汗をかく作用があります。そのせいで汗をかいていると勘違いしている人もいます。
アトピー性皮膚炎が悪化するからと入浴や運動を避けがちですがそれがかえって症状を悪化させることになります。入浴や運動で発汗することにより熱を放出しますが、アトピー性皮膚炎の場合、毛細血管は開いて皮膚温を低下させようとしても汗をかかないので体温が上がり皮膚があかくなります。
汗には角質層への水分補給以外にも抗菌作用があり皮膚の善玉菌や常在菌を守ってくれます。こんなに大切な汗ですが、アトピー性皮膚炎の場合、自律神経の異常により汗をかきにくくなっていることが最近の研究で分かってきました。
汗をかきにくいアトピーの方が汗をかくためにはどうしたらいいのでしょうか。 正しい汗のかき方を知っておきましょう。
四季の変化がある土地で生活してきた日本人は、長い歴史の中で冬の寒さや夏の暑さに耐えられるように体が順応してきたと考えられています。例えば、暑い夏は汗をかくことで汗腺を発達させ、体温を下げて快適に暮らす能力を身につけてきたのです。
ところが、現代では夏は冷房、冬は暖房と環境を人間に合わせて変えることができるようになりました。今では、1年中あらゆる場所でエアコンが完備され、快適に過ごすことができます。また、いちいち風呂を沸かさなくても、蛇口をひねるだけでシャワーを浴びることができる便利な生活も、入浴によって汗をかくという機会を減らしています。これでは、汗腺の機能が十分発揮できない可能性があります。
汗を上手にかくためには、快適過ぎない生活を送ったほうがいいのです。これまで汗をかかないでサラサラ肌だと思っていた肌は、実はカサカサ。汗をかいてベトベト肌だと思っていた肌が、しっとり肌。そういった意識をもち、発汗の大切さを認識して、汗をかくようにしてみましょう。
ふだんから汗をかくように努力していると発汗機能は高まってきますが、汗をかかない生活を繰り返していると低下してきます。快適すぎる生活を見直しながら、ふだんから汗をかくようにすることが一番です。気軽にできる運動や入浴で少しずつ汗をかける体にして、アトピーを克服していきましょう。
もともと汗をかきにくいアトピーの方が、いきなり慣れない激しい運動をして体温が上がると、発汗によって熱を放出できないので、体内に熱がこもって倒れてしまうことがあります。まずは軽い運動や入浴から始めて、汗をかける体をつくりましょう。
寝ているときにかく汗などが肌に水分を与えているため、肌の水分量は、通常は朝が一番多く、次第に減少して夜にもっとも少なくなります。ですから、朝に肌の水分量が少ないと、夜にはカサカサになってしまうのです。
朝の水分量が多いと一日潤いを保ちやすいのですが、朝のシャワーはマイナスです。シャワー後、肌の水分量は瞬間的には上がりますが、そのままにしておくと1時間もするとかえって乾いてしまいます。これは、シャワーによって水分が補給される一方で、それは速やかに蒸発してしまうからです。朝の水分量を増やすためには、前日たっぷり汗をかくことも大切です。
アトピーの方の中には、かゆみで夜眠れないという悩みを持つ方がたくさんいます。これは、入浴や寝具の効果で体温が上がりやすいことと、夜に肌が乾燥しやすいことが理由です。掻くと気持ちがいいので、つい掻いてしまいますね。脳内には報酬系と呼ばれる部位があり、そこが刺激されると、自分で自分を傷つけてしまうような行動をとるようになります。つまり「掻く」という行動を「気持ちいい」という報酬が得られる行動ととらえてしまうのです。そのため、ちょっとしたかゆみでも、気持ちよさを求めて掻いてしまうのです。
掻くことによる症状悪化を防ぐためにも、しっかり運動して汗をかくことは、とても効果があります。体は適当に疲れているので眠りやすく、しかも汗をかくので肌もしっとり保湿されているからです。夜のかゆみ対策にも、汗は有効だったのです。
入浴と運動は汗をかくのには最適な方法です。
負担にならないよう汗をかき、アトピー改善に生かすための方法を説明します。
「肌を清潔に保ちたいけど、汗をかきたくない」という理由で、シャワーだけですませてしまうアトピーの方は多いと思います。でも、前述したように、シャワーだけではかえって肌を乾燥させます。肌に水分を補給しバリア機能を高めるためにも、入浴して汗をかくことが大切。いきなりの運動はちょっと…という方も、入浴で汗をかくことなら負担にならないでしょう。そして、できればエアコンは切って、自然の空気に触れながら汗をかくことをおすすめします。
入浴時は、汗でせっかく高まったバリア機能を守るためにも、肌をこすりすぎないように注意しましょう。また、カラスの行水ではなく、ゆっくりと汗をかくまで湯船につかるようにしてください。入浴後は、汗をふき取らない方がいいという考え方もありますが、炎症部分から着衣に残った洗剤成分が入ってかゆみを誘発することもありますので、汗だけに頼らずしっかり保湿クリームを塗って、肌を守りましょう。
入浴を続けると、汗をかくのが苦手なアトピーの方でも、だんだん自然に汗をかけるようになってきます。
入浴で汗をかくことに慣れてきたら、次は運動にチャレンジしましょう。散歩やジョギングからで十分です。初めはなかなか汗をかけなくても、続けるうちにだんだん汗をかけるようになっていくはずです。
汗をかけないうちに激しい運動をすると、高くなった体温を外に放出することができませんから、徐々にレベルアップしていくようにしましょう。
汗をかけるようになったら、少しずつ激しい運動をしてもかまいません。いままで、やりたくてもできなかったスポーツなどにチャレンジしてみたらいかがでしょう。
運動中はこまめに水分を補給して、運動後は、シャワーではなく入浴すれば、さらに効果的です。
それでもまだ、汗をかくことに抵抗がある方がいるかもしれません。そんな方は、アトピーがよくなったという方々の話を思い出してください。
思い切って都会暮らしをやめて、自然が豊かな田舎に引っ越したらよくなったという例。環境がよくなったらからかもしれませんが、田舎暮らしは汗をかきます。歩くことも多いし、エアコンも都会ほど完備していないこともあるでしょう。また、小学校に入学して、放課後友だちと遊んで帰るようになったら、自然によくなった例もあります。
ちなみに編集部の周りにはこんな方がいます。骨折して腕にギブスを巻いていたら、その部分だけアトピー症状が治まってきれいになったのです。当時は「かきたくてもかけなかったのが良かったんだ」と考えていたそうでしたが、骨折したのは6月。もしかしたらギブスの下でたくさん汗をかいたからかもしれません。
いかがですか?勇気を出して、たくさん汗をかいてみましょう。その先にはきっと、アトピー克服の道が見えてくるはずです。
生活環境の改善で汗をかきにくくなっているのが現代人です。快適な空調、シャワーなど汗をかきにくい生活習慣となっています。
快適過ぎず適度に発汗できる環境づくりから始めてみましょう。例えば軽い運動や適度な入浴など自分で出来る範囲のことから試しながらアトピー性皮膚炎を克服していきましょう。
入浴時のシャワーはお勧めできません。汗腺の機能が発揮できず、かえって乾燥してしまうからです。入浴してしっかり汗をかくことが大切です。また入浴時には体をこすりすぎず、入浴後はしっかり保湿クリームを塗り肌を守ります。入浴を続けると汗をかきにくいアトピー性皮膚炎の方も自然に汗をかけるようになります。
運動も軽いものからチャレンジしてぜひ汗をかきましょう。田舎に引っ越して不便な環境になってアトピー性皮膚炎が改善した方がいます。エアコンがなく、汗をかき、適度に歩く生活が良かったのかもしれません。みなさんも勇気をだしてぜひ汗をかいてアトピー性皮膚炎を克服してください。
1973年、慶應義塾大学医学部卒。日本皮膚科学会理事、日本皮膚アレルギー学会理事、日本研究皮膚科学会理事などの公職を務める。 専門は、薬疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚免疫学など多岐にわたる。
※相談無料。強引な商品の販売や治療法への勧誘などは一切行っておりません。
コメントを残す