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生命の仕組みを読み解く安保理論の革新
新潟大学名誉教授・医学博士安保 徹 さん

取材・文/末村成生
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世界的免疫学者である安保徹先生は、あとぴナビの医療特集記事でもおなじみの顔。自律神経バランスと免疫システム、解糖系とミトコンドリア系の細胞進化から生命を読み解く安保理論の核心に迫ります。

アトピー性皮膚炎の炎症は治癒反応。体自らの働きによって治そうとして炎症を起しているのだから、それを薬で抑えるのは本末転倒です」

新潟大学名誉教授・安保徹先生は、あとぴナビ誌上で何度もそう訴えてきました。胸腺外分化T細胞の発見、白血球の自律神経支配メカニズムの解明など、世界的免疫学者として多くの業績を残してきた安保先生のメッセージは、複雑な生命の仕組みを解き明かしつつも、非常にシンプルなものです。

「自然の摂理の中で人間は生かされている。人間の体はこの摂理に従っていろいろ反応する。この基本を忘れてはいけません」

体は失敗しない生き方が失敗を起こす

例えば、腰痛を起こしたとします。腰痛とは、体の一定部分に無理な負荷がかかり、そこを支えている筋肉の血流が相対的に少なくなっている状態。体は元の状態に戻ろうとして、その部分の血流を増やし筋疲労を取ろうという反応を起します。その反応のせいで、体には腫れや痛みといった症状が一時的に出てきます。ここでシップ薬で腫れを止めてしまったら、せっかく体が身を守ろうとしている反応を止めてしまうことになります。

「現代人は、腰痛でもアトピーでも体に不快症状が出れば、自分の体が失敗を起こしたと思ってしまう。でもね、我々の体は、地球上に生命が誕生してから38億年もかけてたどり着いた生命体なんです。それだけ長い時間をかけて自然に適合してきた体が、そんなにいつも失敗を繰り返すわけ? 体は正常に反応しているだけ。失敗を起こすのは、人の生き方のほうなんです」

体は森羅万象とつながる

言われてみれば、とても簡単で納得がいくことです。でも残念ながら、現代の医療では、このような意識が希薄なように思えます。一体なぜなんでしょうか?

「人間は頭で考えれば考えるほど、感性がおろそかになります。もちろん勉強は大切ですが、その世代、社会、環境で培われる感性の世界をしっかり持つことが大事。勉強しようと思えば、大量の文献を読んでいくらでも学ぶことができますが、学びすぎてしまえば、人間の力を過信し、感性の世界を押さえ込む危険性があります。学ぶ世界と感じる世界のバランスが必要です。昔からよく『頭を冷やせ』って言うでしょう。昔の人は、そのことがよくわかっていましたね」

匂いをかいだり、味を感じたり、音を聞いたりする五感の世界も、自律神経の支配を受けているといいます。

「雨の日は低気圧だから、空気中の酸素が薄くなる。酸素が少ないから、体は副交感神経が優位なリラックスした状態です。野生動物なら、雨が降ったら洞窟のなかでじっとしているでしょ。こんなときは、音は大きく聞こえるし、匂いにも敏感になる。逆に天気がよければ、酸素が多いので元気になります。今度は交感神経が優位になり、臭覚や聴覚は弱まる。でもこんな場合は、五感の活動が低下したほうが、何か目的を遂行するための集中力が増すわけです。我々の体は、森羅万象とつながっていることがわかるでしょう」

自然の摂理を受け入れて生きること

緻密で明晰な安保理論は、先生自身の身体が感じ取った感性の世界に支えられています。このような感覚は、始めから備わっていたわけではなく、学生時代から一つひとつの出来事に遭遇しながら学んでいったことだといいます。しかし、学校で教えてくれることは知識や技術だけ。あとは、自然の中で自らが感じ取って血肉化していかなくてはなりません。そのような感受性は、どのように培われてきたのでしょうか?

「私は青森県の三厩(みんまや)村で生まれました。あの辺りは竜飛岬などがあり断崖絶壁の土地。だから水田が作れない、林業と漁業の町です。農耕文化が栄えた弥生時代よりも、狩猟生活で自然の影響を受けやすい縄文時代的な環境といったらいいですかね。

弥生的な世界は、食料を貯蔵できて、経済も計画的になり、より人間の知恵を活かしやすい文化ですよね。でも自分は、どちらかというと自然の摂理の中で生きていくしかないという縄文的な環境で生まれ育ったんです。だから、何でも人間の知恵だけで解決しようという風潮には、もともと違和感があるんですね」

自然への畏敬の念、人間としての尊厳を持つこと。現代人にはこの二つが欠けていると、安保先生は警告します。そして昔からの民俗行事には、自然の中で人間が生き延びていくための知恵が詰め込まれていたといいます。

「なまはげという行事がありますね。あれは「怠け」を「剥ぎ取る」から「なまはげ」と言うのです。東北の冬は寒いから、子どもはつい囲炉裏の周りに集まってぬくぬくと怠けてしまう。子どもの細胞は、まだ分裂が進行中だから、寒くても外で遊べば皮膚も丈夫になり成長も促がされる。そんな自然の摂理を昔の人は本能的に感じ取って行事として残してきたわけです。

新潟県の婿投げや岩手県の蘇民祭は、年頃の男性を裸にして寒さにさらし、精子の分裂を促がしていました。まさに子孫繁栄の行事ですね。昔の人々が編み出した伝統文化は、人間の感性の本質を鋭く突いているよね」

自分にふりかかったストレスが教えてくれたこと

自分を信じて、生き方を変えた人が病気を克服できる。 体を大事にする感覚を身につけることが大切です。

安保先生は近著で、「がんは低酸素・低体温に対する体の適応反応」と説いています。がんも体の失敗ではなく、体が身を守るための生命現象の一つとしてとらえ、その最大の要因は、心の不安やストレスであるとしています。詳細については、先生の著作をお読みください。また、あとぴナビでも次号から最新安保理論をわかりやすく紹介する連載記事をスタートします。

ここでは、ストレスがいかに体に影響を与えているか、安保先生の実体験を紹介しましょう。

「15年ほど前に、大学で火事を起したことがあります。自分の教室から火が出て広範囲に焼け広がったので、とても多くの方に迷惑をかけてしまいました。100台以上のコンピューターがススで使えなくなって、大事なデータが全部破壊されてしまったんです。

これは自分の人生で、最大のストレスがかかった出来事でしたね。夜間頻尿、尿漏れ、高血圧、交感神経緊張による血流障害で爪は変形し、体中に異常が出ました。

それが、6カ月後にはすべて完治したんですね。その6カ月間は大いに悩み続けたのですが、悩みぬいた挙句に、もう償いは済んだような気持ちに切り替わった。何か吹っ切れたという気持ちです。そうしたら、症状がサッと消えたわけです。自分の体に起こっていることが、生命の根源的な仕組みに一致していくという体験。これはまさに、生命の不可思議に対する感動というほかないですね」 生命の仕組みを読み解き、そこから人間が生きていく術を学び、医療に役立てていく。安保先生の一貫した仕事を通して、私たちはより豊かな生命観と健康的な生活を手に入れることができるのではないでしょうか。

プロフィール

安保 徹 (あぼ とおる)

1947年青森県生まれ。1972年東北大学医学部卒業。1980年「ヒトNK細胞抗原CD57に関するモノクローナル抗体」を作成し「Leu7」と命名。1989年「胸腺外分化T細胞」発見、1996年「白血球の自律神経支配のメカニズム」解明など、世界レベルの研究成果を次々と発表している。主著に「免疫革命」(講談社+α文庫)、「人が病気になるたった2つの原因」(講談社)などがある。

あとぴナビ2014年4月号 掲載

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