冬は、アトピー性皮膚炎の方にとって、悪化要因が増える季節です。
特に、乾燥や体の冷えは、継続的な対策を行うことが求められます。
現在、状態が悪い方の対策、そして状態が良い方が再発しないための対策とはどのようなものが求められるのでしょうか?
冬のアトピーケアで気をつけたい項目について見ていきましょう。
冬は、アトピー性皮膚炎の方にとって、悪化要因が増える季節です。
特に、乾燥や体の冷えは、継続的な対策を行うことが求められます。
現在、状態が悪い方の対策、そして状態が良い方が再発しないための対策とはどのようなものが求められるのでしょうか?
冬のアトピーケアで気をつけたい項目について見ていきましょう。
いうまでもなく、冬は乾燥の季節で、お肌の乾燥状態を抱えるアトピー性皮膚炎の方にとって、十分な対策を必須とする季節です。
なぜ、この時期のスキンケアが大切なのか、そしてどういったスキンケアに気を付ける必要があるのか、スキンケアの具体的な方法とは、について順番
に見ていきましょう。
お肌のバリア機能の低下は、アトピー性皮膚炎の悪化要因となるだけでなく、発症要因にも大きく関わります。
アトピー性皮膚炎の方は、表皮の育成因子が少ないことからバリア機能が低下しています。
健常な皮膚は、フィルミクテス門と呼ばれる常在菌が細菌叢を形成していますが、アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下していることで、コリネバクテリウム・ボービスや黄色ブドウ球菌が占める異常細菌叢に変化していることが、慶應大学の研究発表で明らかになっています。
こうした異常細菌叢が皮膚でフローラとして定着することで、体内のIgEが増加し、アレルギー的な要因を強めることが分かっています。
つまり、アトピー性皮膚炎の発症、あるいは症状の悪化には、最初のきっかけとして「表皮育成因子の不足によるバリア機能の低下」が関係している、ということです。
こうした表皮育成因子の不足によるバリア機能の低下が、どういった状態を角質層にもたらしているのかを見てみると、角質層内における水分不足の状態が確認されています。
角質層内の水分不足は、健常な角質層の形成を妨げることで外部からの異物の侵入を容易にするだけでなく、通常は真皮内に留まるはずの痒みを知覚する神経線維が角質層内に侵入し始めるきっかけにもなっています。
前者の健常な角質層の形成が妨げられれば、外部からの異物の侵入によるアレルギー反応が炎症を生じさせ、痒みにつながります。後者の痒みを知覚する神経線維の角質層内への侵入は、皮膚に対するちょっとした「刺激」が痒みを知覚させることになります。特に後者は、通常のアレルギー反応から生じる炎症とは異なり、やっかいな痒みです。現在、増加している成人型のアトピー性皮膚炎においては、この両者から痒みが生じますが、空調システムの普及により生活環境内における乾燥要因が増加していることから、後者から生じる痒みが多くなっているとも言われています。
このように、表皮の育成因子が不足しているアトピー性皮膚炎の方にとって、「目標」とすべき角質層の状態は、「角質層内に水分を与えて留める」というケアになります。
角質層内に水分を維持することができれば、健常な角質層の形成を保ちますし、痒みを知覚する神経線維を再び真皮内まで押し戻すことができます。
そのためには、「角質層に必要な水分を与える(保水)」「与えた水分を角質層内に留める(保湿)」というケアが必要です。
乾燥時期は、角質層からの水分蒸散量は増加する傾向が見られます。
アトピー性皮膚炎の方の多くは、皮膚のケアは行っていると思いますが、「水分」を角質層に十分に与え切れていない方が多いようです。
かき傷が多いと、水分系のアイテムはお肌にしみやすくなります。そのため、しみることを敬遠して、保水が十分にできていないケースや、あるいは病院でもらう保湿剤はワセリンが多いのですが、こうした鉱物系の油脂は水分を全く含んでいないため、角質層の保護は行えても、基本となるべき「保水」ができておらず、「健常な角質層の保持」「痒みを知覚する神経線維の問題」を解決できずに症状が一進一退を繰り返すケースが少なくありません。
皮膚に塗布する油分は、角質層内の水分蒸散を抑える役割がありますが、角質層内の水分がもともと十分でなければその意味は薄れますし、角質層内の水分不足を解決することもできません。
皮膚に塗布する「油分」は水分の蒸散を防ぐ補助的な役割であって、アトピー性皮膚炎の方にとって必要なスキンケアの主体は「水分」であることを忘れないようにしましょう。
アトピー性皮膚炎の方にとって目標とすべきスキンケアは、「角質層内に水分を与えて留める」というケアであることはこれまで述べた通りです。
では、具体的に、どういったスキンケアを行えばよいのかについて見ていきましょう。
まず最初に行うケアは、乾燥した角質層に「水分」を与える「保水」のケアです。
「保水」に適したアイテムは、水分を多く含む「ローション」「ジェル」などになるでしょう。
「クリーム」も水分と油を乳化させたアイテムなのですが、含まれる水分量はローション→ジェル→クリームとなり、水分を与える目的で使うならば、ローションやジェルには勝てません。
そして、ローション、ジェルで水分を与える際の注意点ですが、「水分を十二分に与える」ことです。
お肌に水分をなじませて、保水ケアを終える方がいますが、これから乾燥時期を迎える冬という季節を考えた場合、水分が足りていないケースが多いようです。
では、どういったケアにすれば良いのか、というと、お肌にローションやジェルをなじませる、という方法で良いので、それを何度も「繰り返す」ことが大切です。
夏場にジワッと汗をかいたような「しっとりとしたお肌の状態」になるのが良いのですが、お肌に水分をなじませる方法で保水ケアを行っている方であれば、まずは同じ方法を3回繰り返してみましょう。
三本の指でお肌を押した場合、三本の指全てに押した肌がやんわりとくっついて、プニュプニュした弾力を感じるぐらいまで水分を与えられると良いでしょう。
また、これから保水ケアを行ってみようという方には次のような方法がお勧めです。
注意点としては、なじませる際、力を入れす ぎると、乾燥状態が強い場合、お肌をさする刺 激が痒みに変わることがあるので、やさしく時 間をかけてなじませるようにしましょう。一度 のなじませるケアに必要な時間は数分かかるこ とがありますが、お肌の保湿機能を「代用」し て次のケアを行うまでの時間、持たせる必要があるわけですから、焦らずに時間をかけて行い ましょう。
角質層に水分を十分に与えても、乾燥時期は時間の経過とともに与えた水分は空気中に蒸散していきます。
そこで次に必要になるのは、角質層に与えた水分の蒸散を防ぎ、留めるケア、「保湿」です。
この「保湿」ケアは、アトピー性皮膚炎の方の肌の特徴を考えた場合、「蒸散を防ぐケア」と「留めるケア」の二つに分かれます。
角質層の水分蒸散を防ぐ「保湿」ケアの基本は、皮膜で皮膚の表面を覆うことです。
自分の体が行う「保湿機能」も、皮脂膜により皮膚の表面を覆うことで、同様の水分蒸散を抑えて、角質層内の水分を保持する役割を持っています。この役割を代用する、ということです。
この「保湿」ケアに適したアイテムは、油分を含んだアイテムです。
オイル系アイテム、クリーム系アイテム、乳液系のアイテムなどが該当します。
水分蒸散を防ぐ力は、オイル系アイテム→クリーム系アイテム→乳液アイテム、という
順番になりますので、乾燥の度合いに合わせて、オイル系とクリーム系は使い分けても良いでしょう。
クリーム系、乳液アイテムは、親水基と親油基を持つ乳化剤により、既に水分と油を混ぜ合わせた状態になっています。したがって軽い乾燥状態の方は、保水系アイテムを使わず、クリーム系アイテムを使ったケアで保水と保湿が行える場合もありますが、冬の乾燥時期、保水が足りなくなるケースを良くみます。通常、クリーム系のアイテムでケアしている方も、これからの時期は、保水系アイテムを併用してみると、お肌の状態がワンランクアップしやすくなるでしょう。
角質層は水分を保持する機能を有しています。代表的なのがセラミドであり、フィラグリンでしょう。アトピー性皮膚炎の方は、セラミドとフィラグリンが健常な方と比べて少ないことが統計上分かっており、これが、健常な角質層の形成、バリア機能維持を妨げ、異常な細菌叢の形成を許しやすい原因になっているといってよいでしょう。
こうしたセラミドやフィラグリンについては、スキンケアアイテムに配合されていることもありますが、例えば、角質層の形成に関わるセラミドは一種類だけでなく、本来、自分の体で作る必要があります。
そこで、こうした角質層に水分を留めるケアとしては、肌に塗布するケアではなく、「サプリメント」を用いた「食べるスキンケア」の方が適していると言えるでしょう。
アトピー性皮膚炎の方の肌にとって必要なセラミド、フィラグリンともに、対応するサプリメントがありますので、それらを上手に活用してみましょう。
いずれも、角質層の水分保持量を高めるような成
分が配合されていて、保水をしっかり行うためにお
勧めのアイテムです。
特に、お肌の常在菌のバランスを考えた時、お肌の
善玉菌を増やしてくれるバリア&バリアウオーター
は基本のケアとして行うと良いでしょう。
保水力を高めるため、バリア&バリアウオーターと
APローション+SK20を重ね塗りするなど、保水
を重ねるケアも、乾燥時期は有効です。
最も水分蒸散を抑える効果が高いのは固形のオイ
ル系アイテム、「安然宣言スキンクリーム」です。特
に硬くダメージを受けた肌には適しているでしょう。
ただし、安然宣言スキンクリーム、安然宣言スキン
オイルΩには、水分が含まれていませんので、保水
系アイテムと併用するようにしましょう。
APクリーム、APクリーム+SDは、保護機能も有し
ていますので、ある程度までの乾燥には使える万能
クリームです。乾燥が強い場合には、同じAPシリー
ズであるAPローションとの相性が良いでしょう。
ピュアセラミドは、皮膚を形成するセラミドを自分の力で作り 出すことに役立ちます。Fグリンアップはフィラグリンのサプ リメントです。お肌に炎症が見られる場合は、TGFガードと の併用も良いでしょう。
お肌の乾燥は、アトピー性皮膚炎による炎症、掻き壊しから、冬の時期はさら
に促進する傾向が見られます。粉を拭いたような乾燥の場合、保水をしてもすぐ
に蒸散して、なかなか肌に留まってくれないこともあります。
そういった強い乾燥状態が見られる場合は、掻き壊しが多くダメージが強いお
肌には、チュビファーストで強力な保水、保護ケアを行ってみると良いでしょう。
チュビファーストは、イギリスでアトピー性皮膚炎の医療用具の認可を受けてお
り、二重に装着、一重目を湿らすことで、保水・保湿が行えます。
ダメージを受けた掻き壊しの状況がみられるアトピー性皮膚炎の方の場合、保水ケアアイテムの水分が掻き傷にしみて使いづらい、というケースがあります。
そうした保水アイテムがしみる方は、通常のスキンケアを行う前に「プレケア」を行ってみましょう。
具体的な方法としては、100 円ショップで入手できる容量が30 ~50ml ぐらいの真空式のアトマイザーに箱根の源泉を入れます。そこに数滴のオイルを垂らします。乳化剤がなく混ざらないため、まず良く振ってから、使用する部位に吹きかけてお肌になじませます。
オイル系の成分が先に皮膜を形成することで、お肌に水分がしみる度合いを減らしてくれます。
なお、これでもお肌にしみる方の場合には、最初に入れる水分を人肌ぐらいに温めた温泉水にすると、しみる度合いがより減るでしょう(吹きかけた際の温度差がなく、その分刺激感が弱まるため)。
そして、保水ケアと保湿ケアを行った後、ケアの範囲が広い方は、仕上げケアを行ってみると良いでしょう。
炎症の範囲が広い場合、スキンケアを行ったお肌の境界線でケアを行っていない肌が行った肌の方に引っ張られてツッパリ感を感じることがあります。
そこで、通常の保水ケアと保湿ケアを行ったあとに、プレケアと同様にアトマイザーに入れて良く振った水分と油分を噴きかけて、ゆっくりと肌になじませることで、スキンケアの境界線をなくし、お肌の違和感を減らしてくれます。
これまで述べてきたように、アトピー性皮膚炎のダメージを受けた肌は、適切なケアを行うことが大切です。
特に、繰り返しになりますが、「水分が足りない」ケアには十分、注意して欲しいと思います。
油分はしっかり使っていても、水分が足りないばかりに、痒みの原因が解消できずに、炎症や乾燥が続いている、という状況は、保水を過剰なぐらいに行うことで比較的短期間で解消されます。
また、自分の肌状態に合わせたケアに悩まれた方は、お気軽にアトピー相談室までご相談ください。
寒さが厳しくなる冬の季節、もともとアトピー性皮膚炎の方は冷えを感じているケースが多いのですが、その傾向はより強まることになります。
では、なぜアトピー性皮膚炎の方は冷えの対策を行う必要があるのか、そして入浴で冷え対策を行う際、どういった入浴方法、入浴環境に注意すれば良
いのかを考えていきましょう。
冷えとは、手足などが冷たくなる状況、というイメージをお持ちの方は多いと思いますが、「冷え」がどういった状態なのかというと、それは「血流が悪い状態」のことです。
ヒトは恒温動物で外的環境に関わらず常に体冷えとは、手足などが冷たくなる状況、というイメージをお持ちの方は多いと思いますが、「冷え」がどういった状態なのかというと、それは「血流が悪い状態」のことです。
ヒトは恒温動物で外的環境に関わらず常に体このように、「冷え」の原因は血流が悪い状態にあるわけですが、では、なぜこの「冷え」
がアトピー性皮膚炎にとって良くないのでしょうか?
それは、手足が冷たい、という状態がアトピー性皮膚炎に悪いのではなく、「血流が悪い」という状況がアトピー性皮膚炎にとって良くない、ということなのです。
血液は心臓から出て、体中を駆け巡り、再び心臓に戻るまで一周約5分ほどの時間がかかると言われています。そして、血液は体中を駆け巡りながら、さまざまな「仕事」をしています。
「熱を運ぶ」というのも大切な仕事です。また、各細胞に酸素を運びエネルギーを供給します。栄養素も細胞の構築には必要ですし、内臓や各器官に内分泌(ホルモン)で「情報」を届けます。
アトピー性皮膚炎の場合で考えてみると、ダメージを受けた肌の修復に必要な栄養素や酸素の供給は血液によって行われます。また、炎症を「引き起こす」「止める」指示の一部も内分泌やサイトカイン(タンパク質)によって行われます。
つまり、血流が悪い、ということは炎症や掻き傷の修復に大きな影響を与えている、とういことです。
こうした血流が悪い状態は、外気温に関係なく体に現れますので、基本的に季節は問いませんが、冬の季節は他の季節と比べて、熱を外気に奪われないよう、血管を収縮させるため、血流が「悪く」なりやすい、ということです。
したがって、ただでさえ、冷えの状況がみられるアトピー性皮膚炎の方の場合、冬の季節は、冷えを解消する「行動」をしっかり行わないと、皮膚の修復や炎症を抑える働き、さらには、前述した自ら行うスキンケアの機能についても低下したまま、とういことになります。
では、冷えの状況を解消するためには、どういった行動が良いのでしょうか?
冷えの状況とは血流が悪い状態、ということですから、基本的には、「血流を良くする」ことが冷えの解消につながります。
血流を良くするケアは、日常生活の中では「運動」や「入浴」などがありますが、一時的に血流を良くするのではなく、恒常的に血流を良くした状況を維持していくためには、運動や入浴を、反復継続して行うことが必要になります。
血流を良くするだけでなく、「熱を生みだす」筋肉などを動かすこともできることを考えると、冷えの解消の効果は運動の方が高いのですが、毎日継続して行っていくことを考えると、生活習慣の一部となっている入浴の方が、運動よりも継続しやすく、多くの人が取り入れやすい「ケア」と言えるでしょう。
これまで述べてきたように、アトピー性皮膚炎の方、特に冷えの症状を自覚している人は、まず「血流を促進する」という入浴を行うことが必要になります。
そこで今度は、冬の時期、どういったことに気をつけながら入浴を行うことが大切なのかを考えていきましょう。
外気温が下がってくると、お湯への入浴は心地よく感じます。
そのため、冬の時期は特に、体が冷え切っていると「温まりたい」という意識もあって、湯温が高めになる傾向がみられるようです。
しかし、ヒトの体は高い温度に適応することは難しいところがあります。
ヒトの深部温度は、体温計で測る温度より約1度ぐらい高く、37 度台となります。
風邪など高熱が出る疾患に罹患した場合、高熱が出ますが、それでも40〜41 度ぐらいでしょう。
これは、深部温度で42度以上となった場合、内臓機能の著しい低下から生命維持に支障が生じることがあるため、自律神経が熱の「上限」を設けて、その範囲内で上げている、ということです。
体の熱は、血流で運ばれることは先に述べた通りですが、お湯に入浴した場合、皮膚から熱が血液に伝わり、体中に運ばれます。
この熱が、「体が許容する範囲」の温度であれば、大きな問題はありませんが、内臓機能に支障が出そうな温度であった場合、体はその熱を「運ばないよう」に働くことになります。
高温のお湯に入ると、時間と共に息苦しさを感じた経験を持つ方は多いと思いますが、これは体の防衛反応として、その「お湯の温度が危険」であることを自覚させている、と言って良いでしょう。
つまり、高い温度のお湯に入ると、こうした体の防衛機能が働くことで、深部においては「血流が悪くなる」という現象が起きるわけです。
よって「血流を良くする」という点を目的で入浴するならば、高温での入浴は不向きと言えます。
高い温度で入浴した後は、入浴直後は汗も多く、体も火照って熱く、温まった感じがしていたのに、時間が経過したらすぐに湯冷めしてしまった、という経験をお持ちの方も多いと思いますが、これも、高い温度を体が受け入れないように働いたため、体の芯から温まることができなかった、と言えるでしょう。
そして、高温での入浴はアトピー性皮膚炎の方にとって大きなマイナス要因となる「入浴後の乾燥を強くする」ということにつながります。
高い温度での入浴は、皮膚表面に熱を伝え、その熱を体外に放出しようと、体は汗をかいて皮膚表面の気化熱により体表を冷まそうとします。
この状態は同時に、角質層での水分蒸散量も一時的に高まることにつながりますので、角質層の水分が体表の熱を逃がすために失われることで、表皮の乾燥状態が進む、という現象が起きるわけです。
このように、高い温度での入浴は、「冷えの解消につながらない」「皮膚の乾燥を招く」という点で、アトピー性皮膚炎の方にとって「良くない入浴方法」であると言えるでしょう。
そして、最後のポイントが、「高温」とは何度を指しているのか、ということです。
アトピー性皮膚炎でない方であれば、皮膚が多少乾燥しても、ただちに炎症につながることはありませんから、湯温に対して、ある程度の許容範囲を持ちます。
しかし、アトピー性皮膚炎の方は、その許容範囲は狭く、40度以上は高温と考えた方が良いでしょう。
もちろん、ある程度、皮膚のバリア機能が改善してくれば、短時間、40〜42度での入浴は、皮膚症状に影響を与えることはありません。
しかし、基本的にアトピー性皮膚炎の方に求められる入浴は、スキンケア機能、冷えの改善の二つが目的ですので、一定時間の入浴が必要であることを考えると、40度以上での入浴は、体感的な部分がどうであろうと、皮膚症状に悪影響を与えると考え、避けるべきでしょう。
健常な方とアトピー性皮膚炎の方は、適切な入浴温度が異なることを(入浴時間と兼ね合せて)忘れないようにしましょう。
最近の浴槽は全自動のバスも増えてきていますが、お風呂のお湯は時間の経過とともに「冷めていく」ため、その分を見越して、設定した表示温度よりも若干高い温度になっていることがあります。
「今日は寒いから、お風呂のお湯も冷めやすいだろうし、40度ぐらいなら大丈夫かと思っていたら、水温計で測ったら41・5度だった」という話は良く聞きます。
最初に説明したように、わずか1・5度の差かもしれませんが、体温で1・5度上昇することは、先にも述べたように、血流悪化と皮膚の乾燥に、影響を与えることになる場合が多いことを理解しておきましょう。
冬の外気温が低く、お湯の温度が冷めやすい、という条件を加味したとしても、「冷えの解消」を目的で考えた場合の「アトピー性皮膚炎の方が行う入浴」の温度としては、40度以内にとどめる、できれば39度に設定するようにすることが大切でしょう。
そのためには、39度くらいでも十分に温まることができるように、お湯の質を改善したり、入浴剤などで入浴効果を高めておくことも重要になります。アトピー性皮膚炎の方の場合、水道水のお湯では、低下した血流・代謝機能を十分に高めることができず、かえって皮膚の乾燥まで招いてしまうこともあるので注意が必要です。
血液は、心臓を出て体を一巡りして心臓に戻るまで、5分程度かかります。
血流を良くして、体の隅々まで体温より僅かに高い熱を運ぶためには、4巡以上は必要とされていますので、入浴時間は20分以上を行うことが大切でしょう。
ただし、「体力を失う」ことのないように注意しましょう。
血流を良くするプラス点、体力を失うマイナス点の境界線は、年齢や体調、生活環境(仕事などの疲れ、睡眠のとれぐあいなど)により、個々人で異なります。
自分にあった無理のない入浴時間を設定するようにしましょう。
なお、最初の目安としては、乳幼児の場合には10分前後、小児の場合は10〜20分、成人の場合は20分以上において、体調などを見ながら増減させると良いでしょう。
また、「毎日、必ず決められた時間を入浴する」ことを義務化させる必要はありません。これまで述べたように、ヒトの体調はその日ごとに異なることが多いものです。体調が悪い時は「悪い日なりの入浴」で構いません。自分の体調に合わせた「無理のない入浴」を行うようにしましょう。そして、もう一つ考えたいのは、「入浴回数」です。
ぬるい温度で入浴することで、体の血流は良くなり、冷えの状態は一時的にでも解消の方向に向かいます。その後、再び冷えの状況に向かうわけですが、冷えの状態を少しでも減らすためには、一日複数回の入浴を行うようにしたいものです。
毎日夜一回の入浴の人は、入浴後は24時間、冷えの状態を改善するケアができていないことになります。毎日朝晩一回ずつ入浴する人は、その時間は12時間に減少します。一日等間隔で三回入浴すれば、冷えの状態はさらに8時間に減少されます。
仕事や学業など、日常生活との兼ね合いで、あまり多い回数の入浴は行えない方が多いかもしれませんが、できるだけ「冷えの解消」「アトピー性皮膚炎の改善」という目標を持って入浴を行うのであれば、朝晩合計二回の入浴は心がけるようにしましょう。
一日一回の入浴と二回の入浴は、体に与える「効果」の差は二倍ではなく、もっと大きくなります。そして、その入浴を毎日反復継続して行っていくと、日にちが経てば経つほど、その差は加速度的に大きくなります。
無理のない形で続けていくことが大切です。しかし、入浴回数の「差」がその効果の「差」として現れることがあることも忘れないようにしましょう。
入浴環境も大切な要因の一つです。
これまで述べたように、冷えの改善を行い、
アトピー性皮膚炎の克服を目指して入浴を行う
のであれば、反復継続して行う必要があります。
毎日継続して行っていくため、入浴環境の良し悪しは、入浴による影響が「プラス」になるのか「マイナス」になるのか、の大きなポイントです。
これまで、あとぴナビでは、源泉、いろいろな入浴剤、バスオイル、浄水器、活水器など、さまざまな入浴アイテムを取り扱ってきましたが、それらの入浴アイテムの中で、最もアトピー性皮膚炎に対して良かったのは「源泉(温泉)」でした。
温泉を科学的に考えると、アトピー性皮膚炎になぜ良いのかが分かります(詳しくはコラムをご覧ください)。
そう考えると、本来、温泉場において「湯治」を行うことが理想的と言えますが、湯治場では良い状態に持って行けても、アトピー性皮膚炎の原因を抱える日常生活に戻ると、症状が再び現れるという問題がよく起こります。
よって、アトピー性皮膚炎の治癒は、日常生活の中で実現すべきものであると考えます。そのためにも、毎日の習慣である入浴を「アトピー性皮膚炎を治す入浴」に変えるために、入浴を環境面から整えてあげることはとても重要になります。
では、アトピー性皮膚炎を治す入浴環境をつ くるためにはどのような事に注意すれば良いの でしょうか。
先ほど、温泉が浴湯環境に最適だと述べましたが、実は温泉の99%以上が、雪解け水や地下水などの「水」です。残りの1%以下が「成分」となります。と考えると実は「水」の質がいかに重要であるのかがお分かりになると思います。
みなさんも、肌にやさしい水、そうでない水は、感覚として感じることが多いと思います。
例えば旅行先のお風呂、帰省時のお風呂などで、「あれっ」といった経験がありませんか。
また、良質の水は、それだけで強力なスキンケア効果を持ちますのでその意味でも重要です。「水」の質が良いこと、肌と体に良い作用をする「成分」を含んでいること、これがアトピー性皮膚炎の入浴環境には重要なポイントとなります。
水道水中には、法律で決められた塩素が含まれています。微量ではあるのですが、健康な方の肌とは違い、バリア機能が乱れ、過敏になっているアトピー性皮膚炎の方の皮膚にとっては、状態を悪化させる原因にもなっています。
必ず、塩素対策はしておきたい入浴環境対策です。
クリーンシャワーは活性炭のカートリッジを
採用しており、かなり長期間にわたり(20,
000リットル使用できます)使えるシャワー
型の浄水器です。活性炭のため、塩素以外の化
学物質にもある程度対応できます。
薬用重炭酸湯は、発生する水素イオンが水道
水中の遊離塩素を還元、除去してくれます。入
浴剤として使いながら塩素除去もできますので
お手軽です。
このお湯はしみた、こっちはしみなかった、という言葉をよく聞きます。皮膚にやさしいという科学的な定義はできるものではありませんが、この「感覚」はとても重要な基準です。
なぜならアトピー性皮膚炎の方の肌は、健康な方の肌と比べても、刺激に対する感受性が高いからです。
また、地下水で水質はとても良い地域で、自己流湯治を続けていた方が、活水器をつけて入浴するようになって顕著な改善をしたという例も珍しくなく、そこは水の不思議と言わざるを得ません。
あとぴナビでは、アトピー性皮
膚炎の方の皮膚にやさしい水質に
改善する方法として、活水器(ア
クアゲイン)を2週間無料でレン
タルしています。まずは、自分の
肌感覚で試してみてください。
良質な水(浴湯)は、それだけで最高のスキ
ンケア効果も発揮します。
アトピー性皮膚炎の克服に実績のある温泉 や、高めたい機能に特化した入浴剤などで、温 泉の4つの作用(コラム参照)を極力取り入れ ましょう。
あとぴナビでは、入浴する際に浴湯に加えるアイテムとして、源泉(箱根、吉井の2つの温泉)、濃縮温泉(はこねの湯、しまだの湯の2つ)、薬用重炭酸湯(医薬部外品の炭酸泉を再現した入浴剤)があります。
源泉は、湧きでた温泉をそのままロンテナー( 20リットルのビニール容器)やペットボトルに詰めたもので、源泉をそのまま体感できます。
濃縮温泉は、水分だけを蒸発させる特殊製法により、あとぴナビが30年近く使い続けてきた箱根の源泉と、美肌の湯として有名な静岡県島田温泉の源泉を濃縮したものです。
薬用重炭酸湯は、医薬部外品の入浴剤で、特殊製法(特許取得済み)により、発生させた炭酸ガスを血行促進に有効な重炭酸イオンに効率よく変換させ、冷えの改善に役立つアイテムです。
植物オイルだけで作られた バスオイル「APバスオイル」 を浴湯に数滴垂らして入浴すると、入浴後に体 にオイルのベールが張られ、入浴後のスキンケアが楽に行えます。
アトピー性皮膚炎の方に必要とされる入浴は、以上のように「温度」と「入浴環境」に気を付けることが大切です。
皮膚科医の中には、入浴を行わないように指導することがありますが、これは入浴により「肌が乾燥する」ことがアトピー性皮膚炎に対してマイナスとなるからです。
確かに、入浴は「難しい」部分があり、温度一つとっても、あっていない温度で入浴すると、アトピー性皮膚炎に対して、マイナスの効果を与えることもあります。
しかし、正しい温度で、そして良い入浴環境で入浴を行うことは、体の中に対しても(アレルギーの炎症に繋がっている内分泌や自律神経に対する影響)、皮膚に対しても(皮膚のバリア機能を高め、感染症などマイナスの要因を排除する)良い影響が与えられます。
バリア機能や体の冷えに対する観点から、アトピー性皮膚炎の方にとって、冬はお肌の状態を悪化させやすくなる時期ですが、正しい対処を行うことで、逆のお肌を良い状態に持っていくことができます。
あとぴナビでは、入浴環境をサポートするため、活水器のレンタルも行っております。
ご自身にとって、良い入浴環境を得るために、どういった入浴法が良いのかについては、お気軽にアトピー相談室までご相談ください。
温泉の入浴で得られる作用で科学的に解明されているのは「物理的な作用」「含有化学成分の作用」「温熱作用」「非特異的変調作用」の4つです。
この中で、水道水の入浴で得られないのが「含有化学成分の作用」と「非特異的変調作用」です。
「物理的な作用」とは、主に浮力の効果による、筋力などへの影響ですので、これは温泉の入浴も水道水の入浴も同じです。「温熱作用」は、文字通り温熱効果による作用ですので、「含有化学成分の作用」により差は生じますが、大なり小なり水道水の入浴でも得られます。
「含有化学成分の作用」とは、温泉に含まれる化学成分の種類により得られる作用ですので、水道水では得られない作用ですし、また温泉であっても、その泉質ごとに作用の強弱は異なります。
最後の「非特異的変調作用」とは、「物理的な作用」「温熱作用」「含有化学成分の作用」の3つにより刺激を受けた生体が、元の状態戻ろうとする「恒常性」の機能を高める作用です。
日常にはない特異的(非特異的)な刺激を受けた場合、生体はその刺激により受けた変調から元の状態に戻そうと働きますが、その際には、内分泌機能や自律神経機能が活性化したり正常化に向かおうと働いています。
温泉が昔から「湯で治す」=「湯治(とうじ)」として、日本人に取り入れられていたのも、水道水や井戸水では得られない「含有化学成分の作用」とそうした刺激を受けたことで体の機能が高まる「非特異的変調作用」により、さまざまな病を、自らの「自然治癒力」で治そうとしたからと言えるでしょう。
アトピー性皮膚炎の「痒み」を引き起こしている原因の一つは、アレルギー反応などにより生じた「炎症」です。
こうした炎症を作り出す力と、炎症を抑える力の両方を誰しもが持っていますが、アトピー性皮膚炎の方の多くは、「炎症を抑える力」が弱いため、炎症が生じて痒みに繋がってきます。
温泉入浴による「非特異的変調作用」は、自律神経や内分泌機能を「正常化」させようと働きますので(低い場合には高めて、高すぎる場合には抑えようと働きます)、弱まっていた「炎症を抑える力」が「元の状態に戻る」ことで、自らの体の力で炎症を抑え、痒みを消失させていくことができ、アトピー性皮膚炎に対して効果を生むわけです。
※相談無料。強引な商品の販売や治療法への勧誘などは一切行っておりません。
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