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新築じゃなくてもシックハウス?

家の中の空気に含まれる化学物質は、アトピー性皮膚炎が増加している背景に大きく関わり、また悪化の要因の一つともなっています。体に取り込まれる化学物質を減らすことは、アトピー対策の重要なカギになりそうです。

身の回りの化学物質があなたのアトピーを悪化させる

アトピー性皮膚炎は近年、増加の一途をたどっていますが、その背景にある大きな要因の一つに、化学物質があると考えられています。ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなど、私たちを取り巻く空気中には多くの化学物質が存在しています。

これらの化学物質が、何らかの形で私たちの体に影響を与え、それが、近年問題となっているシックハウス症候群や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の悪化要因として関わっていることが分かってきました。

あらゆる病気は遺伝要因と環境要因の両方から起こります。人間の遺伝子は何万年もかかって変化するものなので、例えば平安時代の人たちと私たちに遺伝子レベルの違いはほとんどありません。

ですから近年になって急に増えた病気があるとすれば、原因は遺伝要因よりも環境要因が大きく関係していると考えられます。

私たちの暮らしはここ数10年間で激変しました。
車の排気ガス、水道水、食品添加物など、生活のあらゆる面で、人工化学物質にさらされながら暮らすようになったのです。人間が体内に取り込む化学物質のうち、およそ80%は呼吸(肺)を通じて血液中に吸収されると考えられています。

24時間吸いつづける空気に有害な物質が含まれていたらどうなるでしょうか。さらに環境が悪くなれば、まだ発症していない人も発症の可能性があるということではないでしょうか。実際に、アトピー性皮膚炎がなぜ発症するのかについて、明確な答えはまだ見つかっていませんが、発症する要素として体内の免疫系、自律神経系、内分泌系のバランス異常が関わっているのではないか、ということはこれまでも研究者の間では推測されてきました。

免疫系、自律神経系、内分泌系を歯車に例えて考えると、通常は、それらがバランス良く噛み合って、一定の速度で回転し続けることで、健康状態が維持されます。しかし、何らかの要因で、どれか一つの歯車が早く、あるいは遅く回りだすと、他の歯車の回転も狂いだし、それが継続することで、体にさまざまな異常が見られやすくなります。

そして化学物質に恒常的にさらされることで、これらの歯車が少しずつ狂いを生じ、シックハウス症候群やアトピー性皮膚炎などに影響を及ぼすのではないかと考えられています。逆にいえば、すでにアトピーを発症している人も、シックハウス対策をして環境要因を減らせば改善が期待できるということです。さっそく身の回りを点検して対策をとりましょう。

化学物質は、主に自律神経に影響を及ぼして多彩な症状を引き起こします。自律神経の乱れは、相関関係にある免疫系や内分泌系の働きを乱し、アトピーやアレルギー症状を悪化させます。

アトピー性皮膚炎は古くはエジプト時代からその存在が記録に残っています。

とはいえ、人口に対する患者の割合は今の日本における10人に1人と言われるような状況ではなかったでしょう。

また、アトピーは先進途上国に少ないことが分かっていますが、化学物質の存在はアトピーの増加の背景に深く関わっていると考えられます。

室内にあふれる化学物質対策の決め手は換気

有害だとわかっても、目に見えないだけに対策が難しい化学物質。 家の中にはどんな化学物質があって、どうすれば減らすことができるのでしょうか?

あなたの家は本当に大丈夫ですか?

シックハウスの原因の代表的なものが、建材およびその関連品に使用されるホルムアルデヒドと呼ばれる物質。2003年の改正建築基準法で使用が制限されて以来、新築のホルムアルデヒドによる重篤な患者は減りつつあります。その一方で、シックハウス症候群の患者は依然として増加傾向にあるといわれます。問題は新築物件だけでなく、リフォームや家具によって持ち込まれる化学物質にあるのです。

家具の合板に使われる接着剤や塗化学物質の規制はありません。真新しい家具から揮発する化学物質が、アトピー症状を悪化させている可能性もあります。家の築年数がたっているからといって安心はできません!

安全な家具を使いましょう!

材料としての合板や接着剤、塗料については、JIS(日本工業規格)やJAS(日本農林規格)で、放散量によって使用面積が制限されています。放散量によって等級区分され、少ないほうから
F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆のマークをつけることになっています。

ただ、このマークが義務づけられているのは材料の段階。加工された家具には表示の義務がないので、表示がない場合は、直接メーカーに確認してから購入しましょう。理想は無垢材でできていて、化学物質の放散の少ない接着剤や自然素材の塗料を使っているものです。

ホルムアルデヒドには除湿も有効

合板に使われているホルムアルデヒドは、尿素と結合して放散されにくい状態になっていますが、湿度が上がると分解され、空気中にもれてきます。湿度の高い部屋や空気がよどんでいる場所は、化学物質の濃度も高くなるので、必ず除湿を。湿度が60%以下になれば、カビの繁殖も抑えられます。

VOCに気をつけよう

ホルムアルデヒドだけでなく、空気中に放散される化学物質=VOC(揮発性有機化合物)にはさまざまなものがあります。実際に住宅で測定すると、100種類を超すVOCが検出されることも。接着剤や塗料、煙草の副流煙などに含まれるトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどは、吐き気や粘膜の炎症を起こさせ、ひどいときは精神神経症状を引き起こす例もあります。

また室内排気型の暖房機は、化学物質を含んだ排ガスで部屋の空気を汚しますし、パソコンやプリンターは稼動中に大量のVOCを放散させることがわかってきました。OA機器や電子レンジ、携帯電話などは、化学物質だけでなく、過敏体質を悪化させる有害な電磁波も発生させているのです。

室内にあふれる化学物質対策の決め手は換気!
空気清浄機を使うなら吸着型を

空気清浄機には高電圧をかけて化学物質を分解するタイプと、活性炭やセラミックを用いた吸着型があります。分解型は高電圧をかけることでさらに有害な物質を発生させる場合も。おすすめは吸着型ですが、活性炭は一定量を吸着すると放散に転じる性質があるため、定期的なフィルター交換が欠かせません。空気清浄機をつけても換気は必要。2時間ごとに5分間の換気を心がけましょう。

2時間に5分は換気を

また、最近出回っている抗菌グッズにも注意。身体は細菌と共存していてこそ健康なのです。まして細菌がコロコロ死ぬ物質が体に安全という保障がありません。かといって不潔にしてよいのではありません。薬剤に頼らず、掃除など物理的な方法で清潔にしましょう。

ヒトが毎日の生活を営む上で、摂取される化学物質は、その80%は「呼気」により吸収されます。

農薬や添加物を気にして食事の内容を見直す方は多いのですが、消化器官からの化学物質の吸収は1日の化学物質の摂取量の20%に過ぎません。

空気は目に見えない分、見落としがちですが、化学物質を考えていく上で、呼気の対策も大切と言えるでしょう。

家の中の化学物質

勉強机・イス

合板から化学物質が検出されます。化学物質の放散量を示すF☆☆☆☆マークをメーカーに確認してから購入しましょう。

押入れ・クローゼット

合板から化学物質が発生。閉め切りにせず、ときには扇風機で風を送って換気します。クリーニングに出した衣類は陰干しして薬剤を飛ばしてから収納。

殺虫剤入りの防ダニシートが入ったものはJIS規格で表示されているので要チェック。自然素材による防虫畳も登場しています。

合板製のタンス・食器棚・本棚

タンスは内側に合板から出る化学物質がこもりやすい。防虫剤もシックハウスの原因なので虫が嫌うハーブを使うのもおすすめです。材料のF☆☆☆☆マークをメーカーに確認しましょう。

フローリング・カーペット

新築の場合はフローリングの合板と接着剤、塗料のF☆☆☆☆印を確認。カーペットは防ダニ加工に頼らず、まめな掃除と除湿、換気に努めましょう。

パソコン・テレビ

稼動中のパソコンやテレビからはVOCや電磁波が発生。漫然とつけっ放しにせず、長時間使う場合は換気を忘れずに。

カーテン

ポリエステル製はホルムアルデヒドを放散しませんが、木綿などの天然素材ではしわ取りの工程で使用されているものも。難燃剤による防炎加工は、高層建築でない限り不要です。

ストーブ

排ガスを直接屋外に出すタイプなら部屋の空気をあまり汚しませんが、室内排気型の暖房機はこまめな換気が不可欠。

勉強机・イス

合板から化学物質が検出されます。化学物質の放散量を示すF☆☆☆☆マークをメーカーに確認してから購入しましょう。

シロアリ駆除剤

腐食した木材を好むので、床下の通気を良くして除湿します。基本的には使用しないことが重要ですが、万一発生してしまったら(社)日本しろあり対策協会認定の「シロアリ防除施工士」と相談し、可能な限り安全性の高い対策を。

壁紙

壁紙や接着剤はJIS(日本工業規格)のF☆☆☆☆や、日本壁装協会のISM(イズム)マークをチェック。布製や和紙、化学物質を吸着するタイプの素材を選びましょう。

こうして見てみると、私たちは、化学物質に囲まれた生活を送っているといっても過言ではないのではないでしょうか?

毎日生活していく空間だからこそ、対策を講じるのと何も行わないのとでは、時間が経過すればするほど大きな差になってきます。

できる範囲内から、少しずつ対策を考えていくことは、大切なことだと言えるでしょう。

シックハウス症候群、そのときの治療は?

化学物質はアトピーを悪化させます。まずは予防が肝心ですが、すでに取り込んでしまった化学物質にはどう対処したら良いのでしょうか?疑われたらまず受診してみましょう。

外出したり旅行に出かけると症状が治まるのに、家に帰ると悪化する。リフォームをしたり新しい家具を購入したあとに症状が強まった。そんな変化に気づいたら、シックハウスかもしれません。

家の中のホルムアルデヒドを測定する方法としては、リトマス試験紙のような簡単なチェック紙が市販されていますし、保健所に簡易測定を依頼することもできます。

皮膚症状が主であればまず皮膚科を受診しますが、症状と居住環境の変化に強い関連がある場合はシックハウスの専門外来へ。今のところこの病気を診断、治療できる病院は少ないのですが、北里研究所病院の臨床環境医学センターや、東京労災病院、国立病院機構相模原病院など全国約10カ所に専門外来が設置されています。本やインターネットで検索し、受診の際には事前に電話予約を。かかりつけ医による紹介状があると診察に役立ちます。

身の回りや体内から化学物質をとり除く

体に取り込んでしまった化学物質を排出する経路は主として呼吸・便・そして尿や汗の3つ。有害物質を解毒して、体外に排出しやすい体をつくることが大切です。脂溶性のものは脂肪に蓄積しやすいので、脂肪を減らせばそこに溜まっていた化学物質を排出することができます。

汗をかくことも大事です。運動や入浴で自律神経を刺激することは、汗とともに有害物質を排出しやすい体づくりに役立ちます。排出された化学物質が皮膚を刺激しないよう、汗の処理も忘れずに。

食事やストレスを見直してバランスの良い生活を

シックハウス症候群の患者さんは、有害物質を解毒するためビタミンやミネラルをより多く消費するので、これらが不足に陥っているケースが多くみられます。専門外来では、解毒酵素の働きが悪い人や、解毒をサポートするミネラルやビタミンB群が欠乏している人には、点滴治療を行う場合もあります。

食事による対策としては、有害物質を吸着して体内への吸収を抑制させる食物繊維や、解毒を補助するビタミン、ミネラルを摂ること。脂溶性の物質を水溶性に変えて代謝するのは肝臓の働きなので、肝臓を助ける栄養や生活スタイルを心がけることも大事です。

また、精神的なストレスは免疫系や神経系に負担をかけ、働きを低下させます。十分な休養をとり、自分に合った方法で上手に気分転換をはかりましょう。生活のリズムを整え、傷や腫瘍の治りを良くするメラトニンというホルモンは、毎日決まった時間に真っ暗な部屋で眠ることで分泌が促されます。

規則正しい生活をして、質の良い眠りを確保しましょう。

アトピーやアレルギー症状の悪化をくい止めるためにも、化学物質に対する対策は欠かせません。有害物質に対する感受性があるということは、健康に生きるためのセンサーを持っているということ。シックハウス対策と治療を重ねていけば、症状の出にくい体になっていきますから、体の内外のできるところから環境を改善していきましょう。

アトピー性皮膚炎=シックハウス症候群、ということではありませんが、その原因を考えると、関わりは大きいと考えられます。

花粉症も、日光街道を境に花粉が飛ぶ山の方より、反対側の街に患者が多いことから、街道を花粉が越える際の排ガスとの関係が疑われています。

アトピー性皮膚炎を克服していくためには、化学物質の問題を考えていくことは大切と言えるでしょう。

監修者プロフィール

坂部 貢 先生 医学博士
北里大学教授
北里研究所病院臨床環境医学センター長

東海大学医学部卒業後、米国タフツ大学留学。現在、北里研究所病院の化学物質過敏症外来で治療、研究にあたる。
日本環境医学会副理事長、日本免疫毒性学会理事、日本衛生学会評議員、日本病態生理学会評議員、日本解剖学会学術評議員等を務める。
最近の著書(共著)に「中毒症のすべて」(永井書店)。

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