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かゆみのメカニズムとアトピー

アトピー性皮膚炎のかゆみは、他の皮膚炎のかゆみよりも強いといわれています。
実際にアトピーの方々がつらいと訴えるのもかゆみです。でもいったい、かゆみはどうしておこるのでしょう。
今月号では、アトピーのかゆみがどうして起きるのか、高森先生にお伺いしました。

制御できないかゆみはどこから来るのか?

かゆみとは一体、どこからくるのでしょうか。
アトピー肌と普通の肌の違いはあるのでしょうか。

過剰に働く防衛反応

アトピー性皮膚炎(以下「アトピー」と略す)の人はたくさんの悩みを抱えていますが、その中でも特に辛いのは「かゆみ」です。眠れないほどのかゆみが起こり、掻いてはいけないと知りつつもつい掻いてしまうと、余計にかゆくなって、血が出るまで掻いてしまったり……。「かゆみさえなければ」と願うのは、アトピーの人にとっては共通の思いでしょう。

かゆみに関しては、最近になりたくさんのことが医学的に明らかになりました。たとえば、かゆいという感覚が皮膚のどこで感じられているのかが、アメリカの皮膚科医シェリー医師によって解明されました。かゆみを起こす物質を含んだ熱帯植物のトゲを皮膚に刺してゆき、どの深さに達したときにかゆみが発生するかを調べたのです。すると、一番強くかゆみを感じる場所は、表皮と真皮の境界部分であることがわかったのです。

気温の変化や痛みを感じることは、生きていくために必要です。実は、かゆみを感じるのも人間が生きていくために必要な感覚で、肌に異物が付着した時にそれを払いのけようとする反応だと言われています。鼻に異物が入った時にくしゃみがしたくなるのと同じ反応です。アトピー肌はそれが過剰に反応している状態です。

「かゆみ」の感覚異常が掻破の原因

健康な肌は、かゆい場所を掻くと、それが痛みに変わることでかゆみが消えるのですが、アトピーの場合は掻けば掻くほどかゆくなるのはなぜでしょうか?

実は、アトピー肌は健康肌とは反対に、痛みの刺激がかゆみに変わってしまうのです。このことから、アトピー肌は刺激が伝わる仕組みに異常があることがわかってきました。

じんましんなどのかゆみは、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めによって止まりますが、アトピーの場合には、抗ヒスタミン剤でもかゆみが止まらないことがあります。これは、アトピー肌のかゆみにはかゆみを起こす物質であるヒスタミン以外の物質が関係しているためであることもわかってきています。

このように、アトピーの方々を悩ませてきた、かゆみに関する研究はどんどん進んでいます。

アトピーのかゆみは、掻きむしってしまう辛いかゆみや、掻いても掻いてもかゆくなるかゆみが多く、かゆみがなくなることを誰しも願います。

最近の研究では、一番強くかゆみを感じる場所は、表皮と真皮の境界部分であることがわかってきました。

さらに健康体の方のかゆみであれば、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めで一定の効果を示します。

しかし、アトピーの方のかゆみは、かゆみを起こす物質であるヒスタミン以外のかゆみが関係しているためであることもわかってきています。

「かゆみ」のメカニズム

アトピー肌は普通の肌よりもかゆがりです。掻けば掻くほどかゆくなる、ちょっとした刺激でかゆみを感じる……それにはいくつかの理由があるのです。

アトピー肌のかゆみの原因

1. 免疫異常で炎症が起きやすい

かゆみの原因の一つはアレルギーによる炎症です。ハウスダスト、ダニ、花粉などが体内に侵入してくると、人間の体は免疫作用によって抗体を作ります。本来なら、これによって体内に入った異物は除去されるので、人間が生きていくためには必要な反応ですが、アレルギー体質の場合はこの作用に異常があり、真皮内に抗体が作られやすくなっているのです。

このため、好酸球やリンパ球、肥満細胞などの炎症性細胞から、かゆみや炎症を起こす炎症性物質(炎症性サイトカイン)が発生しやすいのです。これらがアレルギー炎症を引き起こすため、アトピー肌ではアレルギー性のかゆみが起こりやすくなっているのです。

2. 乾燥しやすく外部刺激に弱い

いわゆるバリア異常もかゆみの原因です。アトピー肌はセラミドを主成分とする角質細胞間脂質が少なく、水が外に蒸発しやすくなっているため、肌が乾燥しやすくなっています。乾燥した肌ではバリア機能は十分に発揮されません。

そのためアトピー肌は外部刺激に弱く、外部刺激はかゆみの発生部位である表皮と真皮の境界まで簡単に到達してしまうのです。同時に、アレルゲンや細菌、ウィルスなどが進入しやすくなり、かゆみの炎症も起きやすくなっています。

3. かゆみの神経線維が角層直下まで伸びている!

アトピー性皮膚炎患者の皮膚の断面写真
赤色の部分が真皮と表皮の境界部分。緑色のかゆみの神経線維が表皮角層直下まで伸びている。

かゆみの刺激は主にC線維と呼ばれる細くて伝達速度の遅い神経を通って脊髄に伝わります。脊髄から大脳にその情報が伝わることで、人はかゆみを感じます。かゆみを感じるC線維の終末は健康な皮膚では、表皮と真皮の境界部分にあります(図A)。

ところが、アトピー肌の多くはかゆみを伝える神経線維が境界線を超え、角層直下の部分まで伸びています(図B)。

健康成人とドライスキンの皮膚の比較
【図A】アトピー肌
アトピー肌は皮脂や汗の分泌が少なく、健全な皮脂膜ができません。また、セラミドも少ないので、角質細胞が不安定となりはがれやすく、水分が蒸発しやすい状態です。外部からの刺激も真皮まで届きやすくなっています。かゆみの神経は、表皮と真皮の境界を超え、角層のすぐ下まで伸びていて、外部の刺激に非常に敏感な状態です。
【図B】健康肌
肌の最も外側は表皮と呼ばれ、外部から異物が進入することを防いでいます。表皮の表面は皮脂膜で覆われています。その下には角質細胞がレンガのように積み重なり、レンガの隙間をセラミドを主成分とする角質間脂質が漆喰のように埋めています。NMF(天然保湿成分)がたっぷり細胞に水を含ませて水分の蒸発を防いでいます。うるおいが保たれた肌は、皮膚のバリア機能も正常に働きます。かゆみの神経線維は、表皮と真皮の境界より内側まで伸びています。

皮膚が乾燥すると、表皮にあるケラチノサイトという細胞から出る神経成長因子(NGF)が増え、神経線維が伸びるためです。乾燥肌は肌のバリアーが破壊され、外部刺激を受けやすい状態になっているので、伸びた神経が過敏になり、かゆみを感じやすくなってしまっているのです。

正常な神経の状態にするためには、継続してスキンケアを行うことが必要です。

4. その他のかゆみの因子

多因子性の疾患といわれるアトピーには、かゆみを引き起こす要因がたくさんあります。
ストレスは、かゆみの原因となるヒスタミンの血中量を増加させるため、かゆみの原因となります。

体温の上昇もかゆみの原因になります。これは、温度が高いほうが神経伝達の速度が速くなるためです。運動をしたり、お酒を飲んだり、熱いお風呂に入ったりするとかゆみが増すのはこのためです。寝る前にかゆくなるのは、体温が上がっているからです。

また、アトピー肌は、汗腺が詰まって汗が出にくくなっています。そのため汗による放熱作用が起きません。その結果体温が上がり、詰まった汗が皮下で刺激になってあせもやかゆみの原因になります。

光線療法(PUVA)

アトピー性皮膚炎の治療には患部に紫外線Aを照射する光線療法(PUVA)と呼ばれるものがありますが、これは角層直下まで延びた神経繊維が紫外線によって縮む性質を利用しています。紫外線によってかゆみの神経繊維が破壊されるからだと考えられています。光線療法は、医師の指導のもと行われます。

アレルギー体質の方の場合、真皮内に抗体が作られやすくなっていることがわかっています。

このため、好酸球やリンパ球、肥満細胞などの炎症性細胞から、かゆみや炎症を起こす炎症性物質(炎症性サイトカイン)が発生しやすいのです。

乾燥しやすく外部刺激に弱いアトピー肌。いわゆるお肌のバリア異常もかゆみの原因です。

乾燥してくるとかゆみを感じる神経線維が角層の直下まで延びてくることで、より敏感に刺激を受けやすくなってしまいます。
その神経を正常な位置に戻すのには、適切なスキンケアを行い乾燥を防ぐことが必要です。

アトピーのかゆみが難治性の理由

しつこいかゆみを消す方法はないのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の場合、かゆみ止めも万能ではなく、効かない場合も多くあり、難治性といわれます。
なぜ薬が効かないのでしょうか。

かゆみの連鎖と悪循環

※炎症性サイトカインとは
炎症藩の・免疫反応に深く関与する生理活性物質

アトピー肌では一つの刺激から、かゆみにつながる反応が複雑に発生し、それが絡み合ってかゆみの悪循環を起こすため、かゆみが次々に発生し、掻けば掻くほどかゆくなり、治まりにくくなっています。

かゆみを起こす物質のほとんどは、真皮にある肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンという化学物質を遊離させます。例えばアレルゲンが体内に侵入したときは、リンパ球から出た抗体が肥満細胞に結合し、ヒスタミンやトリプターゼを遊離します。これらはかゆみを伝える神経線維のC線維末端と結びつきます。これにより引き起こされた神経の興奮が大脳に伝わり、かゆみを感じます。

一般的なヒスタミンによるかゆみ(紅斑※1、紅暈※2、膨疹※3の伴うかゆみ)には抗ヒスタミン薬が処方され、使えば治まる場合がほとんどです。しかし、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因は、ヒスタミンだけではないため、抗ヒスタミン薬が効かない場合があるのです。

アトピー肌は乾燥してバリア機能が弱っているため、神経線維が角層直下まで伸びています。そのため外部からの刺激は、直接、神経線維の末端を興奮させ、大脳に伝わりかゆみを引き起こします。また、神経線維の末端の興奮は、別の神経線維の末端にも伝わります。するとそこからサブスタンスPという神経ペプチドが出されます。

これが肥満細胞に作用し、ヒスタミンが出て……というように別ルートでもかゆみが伝わるのです。サブスタンスPは表皮内にあるケラチノサイトにも結合し、炎症性のサイトカインを出します。このサイトカインも神経を興奮させる物質です。

※1 紅斑……皮膚の面は盛り上がらず、赤くなる症状。
※2 紅暈……丘疹、水泡などを取り巻く紅斑。
※3 膨疹……じんましんなどのように、一時的に盛り上がる皮膚の病変。

抗ヒスタミン薬の効くかゆみと効かないかゆみ

抗アレルギー薬が効かない理由

このようにかゆみを起こすメカニズムが複雑なアトピー。抗ヒスタミン薬だけでなく、抗アレルギー薬も、アトピーのかゆみには効かないことがあります。実は、抗アレルギー薬にはたくさんの種類があります。好酸球が血管に出ないようにする作用があるもの、サブスタンスPを抑えるものなど様々な炎症物質に対して抗アレルギー薬があり、患者さんに合ったものを選ぶ必要があります。

アトピーの複雑なかゆみを抑えるためには、様々な抗アレルギー薬を組み合わせなくてはなりませんが、残念ながら、保険で適用されるのは1種類だけなので、保険診療ではすべての作用を抑えることができません。抗アレルギー薬でもかゆみが治まらないことがあるのはそのためです。

アトピー肌は乾燥することで、本来、真皮層内にとどまるはずのかゆみを知覚する神経線維が、角層直下まで伸びてきます。

その神経線維を直接刺激することによって起こるかゆみや、また、神経線維の末端同士で伝わることによって起こるかゆみなど、いろいろ複雑です。

こうした複雑に入り組んだかゆみを抑えるためには、さまざまなお薬を組み合わせなければならないと考えられています。

しかし、保険診療では1種類しか使用できないので、病院の治療においては、なかなかかゆみをおさえることができない現実があります。

セルフケアによるかゆみ対策が肝心!

かゆみが起こる理由がわかれば、対策も立てられますね。
何よりも大切なのは、かゆみの連鎖を起こさせないようにすることです。

かゆみの元を断ってスキンケアを万全に

掻くことで皮膚を掻き壊し、さらにかゆみが起こるかゆみの悪循環を起こさせないためには、外からの刺激を少なくすることが何より大切です。セラミドを主成分とする細胞間脂質が失われ壊れたバリア機能を補うためには、セラミド入りの保湿剤を塗って肌を保護しましょう。セラミドは皮膚からも吸収されるので、不足したセラミドを補うことができます。すでに炎症が起きている場合は、まず炎症を抑えてから保湿剤を使うことが大切です。

バリア機能を高めるとともに、アレルゲンを減らすことも大切な対策です。環境を改善し、かゆみの元を断ちましょう。もしも、かゆみがあるときには、かゆい部分を冷やしてかゆみが神経を伝わる速度を遅くしたり、炎症反応を鎮めることでも楽になります。

入浴温度は37〜38℃のぬるめが良く、こすりすぎや肌に合わないシャンプーなどで刺激を与えないように気をつけましょう。入浴後のケアも大切です。入浴後、肌の水分は急速に蒸発し乾燥しやすい状態になっています。入浴直後の、まだ肌がしっとりしている間に保湿剤を全身に塗りましょう。

かゆみはさまざまな内臓疾患や感染症から起こることもあります。かゆみの発する体の警告を見逃さず、医師の診察を受けて適切な治療を行いましょう。

アトピー性皮膚炎の方にとって深刻な問題といえる「かゆみ」は、その原因を知って対策をたてることが大切です。

かゆみの悪循環を起こさせないためにも、皮膚のバリア機能を高めるような、日々の生活の中で上手なケアが大切になってきます。

かゆみの研究最前線!
中枢性のかゆみと末梢性のかゆみ

図のように、かゆみには中枢性のかゆみと末梢性のかゆみがあります。抗体やサイトカイン、神経ペプチドなどが肥満細胞に作用し、ヒスタミンを出すことによって生じるのは末梢性のかゆみです。

中枢性のかゆみとは、抗ヒスタミン薬の効かないかゆみで、オピオイドペプチドという神経ペプチドが介するかゆみです。

オピオイドペプチドとは、内因性モルヒネ様物質ともいわれ、神経線維や細胞膜上に存在し、かゆみに関係するのはそのうちβ-エンドルフィンとダイノルフィンです。β-エンドルフィンが体内で優位になるとかゆみを誘発し、ダイノルフィンが優位になるとかゆみを抑えて痛みを誘発するという関係にあります。

このオピオイドペプチドが関わる中枢性のかゆみが起こる疾患は、アトピー性皮膚炎、慢性腎不全、腎透析に伴うかゆみ、胆汁うっ滞性肝疾患、乾癬などがあります。このβ-エンドルフィンは、脳内の神経組織だけでなく、表皮にあるケラチノサイトも生成していて、末梢性のかゆみにも中枢性のかゆみが関係していることがわかっています。

これまで中枢性のかゆみに効く薬はありませんでしたが、今年中に中枢性、末梢性のかゆみの両方に効果があるかゆみ止めが実用化されることになり、期待できるニュースといえます。

監修者プロフィール

高森 建二 先生 順天堂大学医学部皮膚科教授
順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院院長

1941年、宮崎県生まれ。67年、順天堂大学医学部卒業。
同大学医学部生化学助手・講師を経て、77年より米国デューク大学医学部皮膚科留学。
80年、順天堂大学医学部皮膚科助手に。講師、助教授を経て、
93年より現職。医学博士。著書に「からだがかゆい!」など

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