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子供のアトピー性皮膚炎、発症・悪化研究最前線【後編】

アトピー性皮膚炎悪化の原因と対策

アトピーを悪化させる要因は決してひとつではありません。人によって悪化因子は違いますが、ドライスキンによって弱まったバリア機能と大きな関係があることがわかってきました

アトピー性皮膚炎の改善のためには悪化因子を把握することが大切

アトピーの症状を悪化させる要因にはさまざまなものがあります。
表4は群馬大学で調査されたアトピーを発症している人にとっての悪化因子に関するアンケート調査です。

平均22歳の成人48人中、悪化因子として飛び抜けて多かったのが汗(17名)で、次いでダニ、衣類と続いています。
この48人がアトピーになり始めた子どもの頃、何が悪化因子だったかを調べると、1位は鶏卵(27名)、次いで牛乳(21名)、汗は3番目(17名)でした。
このように、年齢によって悪化因子は変わっていくのです。
アトピーを改善するためには、自分のアトピーにとっての悪化因子を把握することが大切です。

乳児期は食物アレルギー、幼児期は汗やダニ

群馬大学の調査でもわかるように、子供のころと成人してからでは悪化因子は必ずしも同じではありません。
表5は東京大学で調査された悪化因子の割合を年代別に示したものです。
これを見るとわかるとおり、食物アレルギーは年を経るにしたがって減少し、汗は逆に増加しています。

乳児期に食物アレルギーが悪化要因になりそれが次第に減少していくのは、消化管が成熟することと、免疫機能も発達し、バランスのとれた反応ができるようになるためと考えられます。

乾燥が増加していくのは、成長するにつれてドライスキンが進行し、肌のバリア機能が弱まり、外部刺激に敏感になることと関係があります。

汗をかきやすい赤ちゃんですが、赤ちゃんのころは皮脂も十分に分泌されているので水分が蒸発せず、 皮膚を守るバリア機能が効果を発揮しているからです。

これは、皮脂が多い鼻の頭にはアトピー症状が出にくいことからもわかります。

このことから、乳児期は食物に、幼児期になったら汗やダニなどの外的因子に注意することが大切になってくるのです。

ドライスキンは重要な悪化因子、スキンケアが大切

ドライスキン(肌の乾燥)は年齢とともに進みます。表5の結果とも関連していますが、皮脂の分泌はどんな人でも3歳ごろには少なくなっています。

ドライスキンはバリア機能が弱まっているので、さまざまな外的因子がアトピーを悪化させてしまうのです。

バリア機能を障害する要因には、外的因子と内的因子があります。外的因子としては、紫外線、湿度、掻き壊し、汗、衣類、石鹸の多用、微生物などさまざまで、内的因子には皮脂分泌などの生理機能、遺伝的素因、ストレスなどがあげられます。

活動的になる幼児期からは、ドライスキンを防止するためにスキンケアが大切になってくるのです。ドライスキンとアトピー悪化の関係は現在調査が進められています。

対策

乳児期は食物アレルギー、幼児期は汗やダニ

汗がアトピーの悪化因子となるのは、汗をかくとかゆくなるからです。

自分の汗を皮下注射する実験を行うと、アトピーの人の80%以上に発疹ができるというデータがあります。
アトピー患者の汗には何らかのかゆみの刺激となる成分が入っているか、その成分に敏感であることが考えられます。
しかし汗をかくこと自体が悪いのではありません。
むしろ運動して汗をかき、代謝を促進することは大切です。
ただ、汗をかいた後皮膚に汗の成分を残すことがよくないのです。

実際に、小学校でシャワー浴を実施し汗を洗い流したら、アトピーが明らかに改善したという報告もあります。
家庭でも汗を洗い流して、アトピー改善に役立てましょう。

このとき注意しなくてはならないのは、汗だけでなく皮脂を落として皮膚のバリア機能を弱めてしまうことです。 皮脂を落としすぎないように、シャワーの浴びすぎや熱いお湯の使用は避けましょう。

体温±2℃程度がベストの水温といわれています。
石けんなどは1日に何度も使うのはやめましょう。

しかし、注意して汗を流しても皮脂は失われます。
まだ体がぬれているうちに保湿剤を塗れば、脂分と水分のバランスを保てるため、バリア機能はさらに高まることも覚えておきましょう。

幼児・学童のシャワー浴でアトピー性皮膚炎が改善

シャワー浴の効果

群馬大学では県内の5つの小学校のアトピー性皮膚炎の児童22名を対象に、汗をかく夏に1日1回6週間、ウイークデーの昼休みに微温水を使ったシャワー浴をしてもらいました。
その結果、汗をかいた後、学校でシャワーを浴びることで22人全員のアトピーは改善したのです。
シャワー浴の効果は開始2週間目から表れ、シャワー浴をやめた後の経過も良好でした(表6)。

学校などでかいた汗や埃が肌についたままでいることが皮膚への刺激となり、かゆみの原因となったのです。
これをシャワーで洗い流すことで、大きな効果が表れました。

浄水器によるシャワー浴で塩素除去の効果も検証されました

群馬大学と同様に九州大学でもシャワー浴の調査を行いました。
これは、水道水に含まれる残留塩素がアトピー性皮膚炎の悪化と関連しているかを調査したものです。
14人の幼少児に浄水シャワーヘッドをつけたシャワー浴を行った結果、1例の例外を除いて13例で改善が見られ、残留塩素を除去することがアトピー性皮膚炎の改善に効果がありそうです。
これらシャワー浴の効果に関する実験は、現在、さらに対象を拡大して行われる予定になっています。

シャワー浴後の症状スコアの推移(平均値)
群馬県内の5つの小学校で、アトピー性皮膚炎の児童22名 (男14名、女8名)を対象に、平成16年6月より6週間、平日の昼休みに学内の温水シャワーを用いてシャワー浴を実施。
アトピー性皮膚炎の治療は、期間中変更せず、保護者による児童の皮膚所見の評価を行いました。全身25の部分について、弱いものを1点、強いものを2点として評価。
シャワー浴後6週間で症状は改善し、シャワー浴中止後もよい 状態が続いていることがわかります。

平成16年度厚生労働科学研究費補助金
免疫アレルギー疾患予防・治療等研究事業報告書
群馬大学大学院小児生体防御学
森川昭廣ら

シャワー浴によるアトピー性皮膚の改善データもあります。要は汗や埃が肌についたまま放置しておくことがかゆみの原因となるのです。

特に浄水機能のついたシャワーの場合改善が著しく見られました。これは水道水中の残留塩素のアトピー性皮膚の肌への影響を物語っています。

汗をかいたら早めにシャワーを。できれば浄水機能つきのシャワーを使いたいものです。

監修者プロフィール

河野 陽一 先生 千葉大学大学院医学研究院
小児病態学教授

1973年、千葉大学医学部卒業。専門は小児科学、小児アレルギー学、小児免疫学など。
アトピー性皮膚炎の障害臓器決定に関わる細胞接着分子CLAの存在を解明するなど、多くの業績がある。
現在は厚生労働省、免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業において、「アトピー性皮膚炎の有症率調査法の確立および有症率(発症率)低下・症状悪化防止対策における生活環境整備に関する研究」の主任研究者を務めている。

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※相談無料。強引な商品の販売や治療法への勧誘などは一切行っておりません。

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