アトピー性皮膚炎の知識

皮膚と細菌叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る

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皮膚と細菌叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る

論文「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌叢が引き起こす」を読み解く

細菌の多様性が皮膚の健康を保つ

皮膚や腸をはじめとする人間の体には、数多くの細菌が共生しています。その種類は数千、数は数千兆におよぶといわれ、様々な働きを持つ多様な細菌のバランスが人間の健康に影響を及ぼしています。
腸内細菌の話はご存知の方も多いでしょう。人体の70%もの免疫細胞が集まる腸という器官には、様々な働きを持つ細菌の多様性とバランスにより腸内環境が形成されます。腸内環境は体の様々な器官に影響力を持ち、腸内の細菌叢に偏りが生まれて悪玉菌がはびこれば、免疫力が低下したり健康を損ねてしまいます。
皮膚の細菌叢でも同じことがいえます。皮膚表面の菌の多様性は腸内をしのぐことがわかってきましたが、皮膚表面の細菌叢の多様性が失われ、バランスが崩れることによって様々な弊害が生じます。

黄色ブドウ球菌が増えるとアトピーが悪化する!?

本研究「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌叢が引き起こす」は、アトピー性皮膚炎が悪化した際には、皮膚表面の細菌の種類が著しく減り、その過半数が黄色ブドウ球菌によって占められるという現象の因果関係を明らかにするものです。
アトピー性皮膚炎患者の皮膚から細菌を取り出して培養すると黄色ブドウ球菌が多数発育することは、40年以上も前から知られていました。しかしながら、なぜこのような現象が起こるのかははっきりしないままでした。
アトピー性皮膚炎の悪化により黄色ブドウ球菌が増えるメカニズムがわかれば、まだわからないことが多いアトピー性皮膚炎の正確な理解につながり、新たな治療法の開発にもつながります。本研究は、このような成果を目指して行われたものです。

アトピーのモデルマウスを作る

アトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌の関係の解明がなかなか進まなかったのは、これまでに適切な動物モデルが存在しなかったためです。つまり、人間のアトピー性皮膚炎と同じ症状の動物を用意することが難しかったのです。
本研究グループは、実験用マウスの皮膚からアダム(ADAM) 17という酵素を取り除くことでアトピー性皮膚炎のマウスを作り出すことに成功しました。アダム17は、細胞膜表面の表皮発育因子(EGF)を調整して細胞の分化・増殖や免疫応答などを調整する酵素。稀な疾患ですが、アダム17の遺伝子変異を持つ患者でアトピー性皮膚炎様の症状を示すことが報告されています。このアダム17を人為的に欠損させることで、アトピー性皮膚炎の湿疹モデルを作ったのです。

アトピーマウスでも皮膚炎悪化で黄色ブドウ球菌が増えた

グラフA、グラフB
アトピー性皮膚炎のモデルマウス(以下、アトピーマウス)の皮膚は、3週間ほどでカサカサし始めて8週目頃になると明らかな皮膚炎が認められています。この頃のマウスが、人間のように湿疹部分を掻いている動画も論文では示されています。
実際のデータも検証してみましょう。グラフA は皮膚からの水分蒸散量(TEWL)を計測したものです。水分蒸散量が多いほど皮膚は乾燥するのですが、3週め以降から健康なマウス(黄)に比べてアトピーマウス(赤)は皮膚から数倍の蒸散量があることがわかります。
グラフBはIg E(多くのアトピー患者で高い抗体)の値ですが、アトピー性皮膚炎のマウスの方が圧倒的に高い数値を示しています。マウスのリンパ節を採取して免疫応答の状態を解析しても、インターロイキン4(IL4)や17(IL 17)などアトピー性皮膚炎に関係したサイトカインが多く検出され、人間のアトピー性皮膚炎とそっくりな状態です。
さらに皮膚の細菌の状態をマイクロバイオームという解析方法で調べると、予想通りの結果が出ました。グラフCは、健康なマウスとアトピーマウスの皮膚に存在する細菌の種類を色分けし、生後14週までの変化を示したものです。健康なマウスもアトピーマウスも、2週間目あたりまでの細菌叢(各グラフ左)はほぼ同じです。
健康なマウスの細菌叢をみると、大半を青色の細菌が占めています。これはFirumicutes(フィルミクテス門)と呼ばれる、非常に多様性を持った細菌の系統です。 アトピーマウスの細菌叢をみると、4 週目あたりからC.mastitidis(コリネバクテリウム マスティタイデス:黄緑色)が多くなり、8週目あたりからほとんどC.bovis(コリネバクテリウム ボービス:緑色)と黄色ブドウ球菌(紫色)の2種類だけの異常細菌叢に変貌していることがわかります。

抗生物質による皮膚炎の予防効果

アトピーマウスに抗生物質を与える実験も行われました。離乳直後のアトピーマウスに異常細菌叢に効く抗生物質で持続的な抗菌治療を行うと、皮膚の細菌叢は正常なままで皮膚炎も発症しませんでした。これはつまり、抗生物質による抗菌治療には皮膚炎の予防効果が認められたということです。ただし、この治療は身体への他の影響も強く、、人間に対して行うことはできないレベルのものです。
グラフC

アトピー性皮膚炎になると黄色ブドウ球菌が増えることは昔から知られていました。そのメカニズムの解明が待たれていました。

アダム17という酵素を取り除いたマウスを作り出せたことで解明が進んできました。

アトピーマウスは皮膚の水分蒸散量が多く、IgEの値が高くなり実際に掻いている様子が確認されています。

健康マウスの皮膚には細菌の多様性が認められるのにアトピーマウスだと黄色ブドウ球菌ほか2種類の異常細菌叢に変異しています。

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