皮膚と細菌叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る


黄色ブドウ球菌はアトピーの原因なの?

黄色ブドウ球菌の増加は、症状悪化の歯車の一つです

黄色ブドウ球菌はアトピーの原因なの?
黄色ブドウ球菌が増えたことが原因でアトピー性皮膚炎が悪化するのか? アトピー性皮膚炎が悪化した結果として黄色ブドウ球菌が増えるのか? この問題については、これまで研究者の間でも見解が異なり、結論は出ていませんでした。今回の私たちの研究結果から、黄色ブドウ球菌が皮膚炎を促進することが分かりました。黄色ブドウ球菌が存在しなければ、皮膚炎は起きないのです。しかし、黄色ブドウ球菌そのものがアトピー性皮膚炎の原因とは言い切れません。なぜならば、黄色ブドウ球菌を正常なマウスに接種しても皮膚炎はおきませんし、人間でもうつることはありません。アトピー性皮膚炎患者の皮膚には何らかの抗菌メカニズムのやバリアの異常(表皮発育因子受容体の異常など)があり、それが黄色ブドウ球菌の増殖を許してしまっているのではないかと思われます。

黄色ブドウ球菌を 増やさない方法は?

毎日の入浴とスキンケアが大切

スキンケアが大切
米国の皮膚科学会では、ブリーチバス(次亜塩素酸ナトリウム入りのお風呂)による週2 〜3 回の治療が認められています。これはアトピー性皮膚炎の根本治療とはなりませんが、皮膚を清潔にして余分な菌を増やさないことが、症状悪化を防ぐために有効であるということです。
アトピー性皮膚炎の患者さんが日常的に気をつけたいことの基本は、乾燥を防いで皮膚のよい状態を保つこと。毎日の入浴で皮膚を清潔に保ち、入浴後は必ず保湿効果のあるスキンケアを行ってください。入浴で気をつけたいことは、ゴシゴシ洗いすぎて皮脂膜まで洗い落として皮膚を乾燥させてしまうこと。洗浄剤や保湿剤は皮膚への刺激が少ないものを選び、できる限り皮膚を乾燥させないようにしましょう。
ブリーチバス療法はまだ日本人での有効性と安全性が確認されていないので、残念ながらすぐにお勧めすることができません。他の人種と比較して顔面・頸部に症状の強い日本人では米国で行われているブリーチバスに多少の工夫が必要です。ちなみに、ブリーチバスは急性悪化時の治療法ではなく、ステロイドなどで炎症を抑えた後の維持療法という位置づけです。

菌を減らすために 抗生物質やステロイド剤を使ってもいいの?

どちらもアトピー性皮膚炎の根本治療にはなりません

菌を減らすために 抗生物質やステロイド剤を使ってもいいの?
今回の実験を通して、抗生物質による治療にも問題があることが理解できると思います。抗菌治療を続けていたマウスが治療をやめたとたんに黄色ブドウ球菌が増え、激しいリバウンド様症状が起こってしまいました。皮膚表面の細菌だけをターゲットしたいのに、体全身へ抗生物質を投与することには腸内細菌を変化させてしまうなど、望ましくない効果があります。皮膚のみに投与するとしても、新たな耐性菌が生まれる問題があります。
炎症がディスバイオーシスを悪化させる側面もあり、ステロイド剤を使って炎症を抑えれば、ディスバイオーシスを抑制する効果が多少期待されます。急性期の治療はあくまでもステロイド剤やプロトピックなどの免疫抑制剤でしょう。しかし、ディスバイオーシスを抑制せずに炎症だけ抑えても、薬をやめた後に速やかにディスバイオーシスがよみがえることが予想され、短期治療での長期的維持は難しいでしょう。これはブリーチバス導入や新規治療薬開発に期待しなければなりません。

黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎の原因ではありませんが、皮膚炎を促進することは分かっています。

黄色ブドウ球菌を増やさないためには入浴で肌を清潔にし、スキンケアを行うことです。

また洗い過ぎなどで皮膚を乾燥させないなどの工夫と皮膚への刺激の少ないスキンケアが大切です。

抗菌剤やステロイド剤では一時的なものでお勧めできません。

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