主治医も知らない?!「IgE」とアトピーの関係

監修:木俣肇 先生

2009年3月発行のアメリカ病理学誌「The American Journal of Patbology,Vol.174, 922-931」に、注目すべき論文「マウスにおけるアトピー性皮膚炎のアレルギー性炎症反応には、ガレクチン‐3が非常に重要である」(原文は英語)が発表されました。そこには、「アトピー性皮膚炎はどうしてなかなか治らないのか?」という疑問に対する一つの答えが書かれていたのです。
難しい内容ですが、この論文に書かれていたことも少し交えながら、私たちは何に注意してアトピー性皮膚炎(以下、「アトピー」と略します)治療に取り組むべきかを、IgEの専門家で長年研究されている木俣肇先生に分かりやすくお話をしていただきました。一緒に考えていきましょう。

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免疫システムとIgE

「花粉」に「小麦」に「牛乳」「大豆」など、体内に入ればアレルギーを引き起こしてしまう――。その人にとってのアレルゲン(抗原)が体内に侵入したとき、体の中では何が起きてアレルギー反応が出るのか、ご存じの方も多いでしょう。
イメージしやすく言えば、「アレルゲン(抗原)=敵」が体に入ってきた!」と察知した体は、「戦わねば!」と、アレルゲンを攻撃するために武器を作ります。その武器は、「抗原」に対し「抗体」と呼ばれるもので、実態は「免疫グロブリン(Ig)」というもの。アトピーに関わってくる免疫グロブリンは、「Ig」の中でも最後に紅斑(Erythema)を表す「E」の付く「IgE」となります。また、「E」は、アルファベットの5番目の文字なので、それまでに見つかったIgG、IgM、IgA、IgDに次ぐ“5番目の抗体”という意味も込められています。
免疫システムが正常に機能している体内では、本来なら、抗原を抗体で攻撃し、体外へと追い出します。たとえば、ハウスダストを吸い込んでしまい、「くしゃみ」をするのも、そのくしゃみでハウスダストを体外へと追い出すため。しかし、免疫システムに異常があると、本来、体に対して無害なものにまで抗体を過剰に生産してしまうことがあります。アトピーの人の場合がそれで、無害なものに対して過剰に生産された抗体が、炎症(炎症から生じるかゆみ)というアレルギー症状を起こしているのです。

IgE受容体には3種類ある

抗原を攻撃する抗体であるIgE。このIgEは、細胞に結合するための受容体をいくつか持っています。
そして、この受容体の中で、最近では3つの受容体がアレルギーに関与していることが分かってきました。左の図をご覧ください。図にあるように、3つの受容体のうちの一つ目は「FcεRI」と呼ばれるもので、これは肥満細胞などに存在します。「高親和性受容体」といわれるように、IgEとの結びつきがとても強い受容体です。

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この、「FcεRI」とIgEの結合によって起こるのが、よく知られている「I型(即時型)アレルギー」で、つまり「食物アレルギー」や「じんましん」のことです。
アトピーをこのI型の反応だと考えている医師も未だ数多く存在します。しかし、IgEの受容体は「FcεRI」以外にも「FcεRII」と「Galectin-3」があり、アトピーの場合は、この3つ目の受容体「Galectin-3(Gal-3)」が特に関与しているのだと、前述の論文「The American Journal of Pathology,Vol.174『マウスにおけるアトピー性皮膚炎のアレルギー性炎症反応には、ガレクチン3が非常に重要である』」は発表しています。
仮に食物アレルギーを原因とするアトピー性皮膚炎の方の場合、原因となる食品を摂取さえしなければアトピーは治ることになるでしょう。しかし、そうは簡単にいかないことから、この論文が発表される以前も、I型がアトピーの本体だとは考えられにくかったのです。
「アトピーには『Gal-3』が特に関与している」ということは、まだIgEの専門家しか知りえない話かもしれません。アトピーを治療する医師たちの間にも、この論文の内容が常識となればいいのですが。

アトピーの反応を蕁麻疹や食物アレルギーなど、I型の反応と考えている医師もいまだ数多くいるようですが、IgE(抗原を攻撃する抗体)には3つの受容体があります。

肥満細胞、好中球、B細胞のそれぞれに結びつくものの3つです。I型は肥満細胞になりますが、アトピーの場合はB細胞と結びつく受容体が、問題となります。

なぜ問題かというと、B細胞に結びつくことでIgEが増強されていくからですが、しかしこのことは、残念ながら、皮膚科の医師は知っていないことが多いようです。

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