あとぴナビ2014年8月号より
取材・文/末村成生
PROFILE |
アトピー性皮膚炎は、日本になかった病気。うちの診療所では、アトピー性皮膚炎の治療は行いません」 東京都武蔵野市吉祥寺で小児科医院を開業して40年。真弓小児科には、湿疹で来院するお子さんも多いですが、薬などは使わずにほとんど治ってしまうといいます。
治療しないでアトピーを治す
「治療をするのではなく、湿疹が出てかゆみが起こる原因を取り除くことが大事です。野生の動物はアトピー性皮膚炎にならないけど、ペットや動物園の動物には発症します。つまり、人間が作り出した不自然な環境が原因です。子どもがアトピー性皮膚炎になるということは、親が作り出した環境に問題がある。だから、それを改めればいいのです」
育児は、人が生まれる20年前から始まっている
親が作り出す環境。これは胎児が母親の胎内に生まれたときから始まります。いや、母胎の環境はそれ以前から作られるので、母親自身が生まれたときから始まると言ってもいいでしょう。つまり、母親の生活習慣が母胎の環境を作り、赤ちゃんは十月十日(とつきとおか)かそこで過ごすわけです。
「育児は人が生まれる20年前から始まります。私が医者になって55年、開業して40年が経ちました。最初に診察した赤ちゃんは、今では子を持つ親になっています。私が行っている医療は、初診の子どもを20~30年かけて、日本人本来の知恵を身につけた父親・母親に育て上げることです。そうすれば、子や孫は病気にならない免疫力(自然治癒力)を身につけて、病気・患者・医療費が減る社会を実現できると信じています」
患者と医者の信頼関係を築く
「患者と医者の間に、しっかりした人間関係を築きあげることが最も大切」と真弓先生はいいます。しかし、昨今の医療の現実はその逆ではないでしょうか。受診すれば、2時間待ちの3分診療は当たり前。医者は患者の顔をみている時間よりも、パソコンの画面をみている時間が長いと揶揄されるほどです。 真弓先生も、駆け出しの勤務医の頃は、1日に50~70人もの患者さんを診ていました。しかし、開業してからは考え方を改め、一人ひとりの患者さんとじっくり対話し、今では1日5~6人の診察となっています。
「2歳の頃に父親が他界し、私は里親に育てられました。その里親がとても立派な医者でした。患者の心身全体をくまなく時間をかけて観察し、対話しながら病の原因を取り除くことが診察の基本です。当時は、患者を第一に考えた医療が当たり前で、お金のことは二の次という立派な医者が多かったんですよ」