あとぴナビ/スペシャルインタビュー 渡邉美樹


タイトル

あとぴナビ2010年12月号より
取材・文/末村成生 撮影/橋詰芳房

渡邉美樹
PROFILE
1959年生まれ。ワタミ株式会社代表取締役会長・CEO。
84年に有限会社渡美商事を創業。86年に株式会社ワタミ(現ワタミ株式会社)を設立。92年に居食屋「和民」を開発。2000年に東証一部上場。現在は外食・介護・高齢者向け宅配・農業など幅広く事業を展開している。個人として、学校法人郁文館夢学園理事長、医療法人盈進会(えいしんかい)岸和田盈進会病院理事長、公益財団法人スクールエイドジャパン代表理事、NPO法人「みんなの夢をかなえる会」理事長などを務める。

居食屋「和民」などの外食産業で知られるワタミグループを一代で築き上げた渡邉美樹さん。現在では介護、農業の分野にも参入し、公益財団法人の代表理事としてカンボジア・ネパールの子どもたちへの教育や食糧支援も行うなど、多岐にわたる活動で知られています。その出発点は「会社の社長になる」という小学生時代の夢から始まりました。
ご自身のライフワークとして、5年前から学校経営にも携わっている渡邉さんに、夢を実現するための生き方、心の持ち方について伺いました。

自分は将来、社長になる!」と、渡邉さんが決めたのは、10歳のときのこと。最愛のお母さんが 亡くなり、その半年後にお父さんが会社を清算したのがきっかけでした。「母を失った悲しみから、 キリスト教に傾倒した時期もありましたが、『自分の夢は事業を起こして社長になることだ』と思い 直し、24歳で会社を創業しました。その後は〈創業10年で店頭株式公開〉〈2000年に東証一部上場〉 という夢を一つ一つ実現して、現在に至っています」。

自分のためだけではない夢を持とう

渡邉さんにとって、夢とは思い描くだけで心をワクワクさせてくれるもの。「ただし、大切なのは単に自分だけのためではなく、自分以外の人も巻き込んでいくような夢を持つこと。それこそが夢を実現させる原動力になる」といいます。現在理事長を務めている学校の生徒たちには、『人に迷惑をかけなければ何をしてもいい』という人生ではなく、周囲に関心を持って、自分の役割を見つけてほしい。自分さえよければいいのではなく、周囲と関わる中で責任感に目覚め、それが自分の夢へとつながっていくということを知ってほしいと思っています。
渡邉さんが〈自分のためだけではない夢〉を初めて意識したのは、26歳で事業が軌道に乗り、多額の年収を手にしたときでした。「自分はこれだけの収入を得られるようになった」という責任とともに、「自分だけが満たされればいいわけではない」と気がついたのです。
「自分は何のためにこの会社を大きくしたいのか?と考えたとき、まず第一に社員に幸せになってほしいと思いました。そして、関連会社やお取引先様、お客様から〈ありがとう〉と喜ばれる会社に成長することが自分の夢だと決意を新たにしました」。
現在では介護、農業の分野にも携わっているワタミグループですが、農業に参入したのは、「安全・安心な食材を提供したい」と考えて、有機農業生産法人を設立したのがきっかけです。また、介護事業を始めたのは、病院の経営再建を依頼された際に高齢化社会の現実を目の当たりにし、外食産業で培った食とサービスが介護にも役立つのでは?と考えたからです。
「ジャンルは違ってもすべて根っこは一緒です。いかに〈ありがとう〉を集めていくか。これが私のテーマです」。

カンボジアの子どもたちに幸せとは何か教えてもらった

企業人として成功し、多くの夢を実現してきた渡邉さんが現在力を入れている活動の一つに教育支援があります。2000年にNPO法人を設立(2009年10月より公益財団法人として活動)して以来、カンボジアやネパールなどで学校建設を中心とした支援活動を行っているのです。
「初めてカンボジアを訪れたときは衝撃を受けました。想像を絶する貧困のなか、学校にも行けない状況下で生きているにもかかわらず、カンボジアの子どもたちは、物資の豊かな日本に暮らす子どもたちよりもずっとイキイキとした表情をしていたのです。今では毎年カンボジアを訪れていますが、目をキラキラさせて学ぶ子どもたちから、〈お金には代えられない幸せ〉を教えてもらった思いです」。渡邉さんには10歳のときから毎日日記をつける習慣がありますが、実は24歳のときの日記に「将来、学校をつくる」という一文があります。「学校をつくる」のは、長年温めてきた夢だったのです。
「今も就寝前には日記を書きながら、その日一日の自分自身を振り返って反省する」という渡邉さん。「『自分が進むべき道筋はこれでいいのか』と日々検証しながら夢に向かっていく毎日を、私は何度も繰り返してきました」。渡邉さん流の夢の実現法は、夢に日付を入れること。未来から逆算して、自分がやるべきことを明確にし、日々やり抜いていくことで、夢に一歩ずつ近づいていくのです。
「計画通りに運ばないときは、日付や計画を見直して計画修正することもたびたびあります。夢に近づくためには、どうしようと悩むよりも、『自分は今、何をなすべきか?』と具体的に考えて、必要なことを一つ一つ行動に変えていくことが重要です。すると必ずゴールが見えてきますよ」。

夢を追いかけている人たちを応援します

渡邉美樹2
渡邉さんは、今年の春から〈みんなの夢をかなえる会〉というプロジェクトをスタートしました。その中で「みんなで夢について考えよう」という一般参加のシンポジウム形式のイベントを、全国各地で開催しています。インターネットでも夢を募集したところ、中学生から80代のお年寄りまで、オリジナリティあふれる夢がたくさん寄せられました。そこで、参加者が自分の夢を発表し合う場として、〈みんなの夢アワード2010〉が企画されました(詳細は下欄をご覧ください)。
当初、渡邉さんは「日本の若者にはどんな夢があるのかな? 夢の種を播ければいいな」と考えて、この取り組みをスタートしました。
「予想よりもたくさんのすばらしい夢がエントリーされたので、日本の若者も捨てたものじゃない!と思いました。すでに種は播かれていたんですよ。あとは芽が出るように水をあげればいいだけです。 日本は物資には恵まれた国です。だからこそ、「お金では買えないものがある」という価値観を持って、夢を追いかけている人たちがたくさんいます。自分の周囲に関心を持ち、責任を果たそうとする人たちがこんなにたくさんいる!と確認できたことは、〈夢シンポジウム〉を開催した最大の成果でした」。
今後は〈夢シンポジウム〉を継続的に開催しつつ、〈みんなの夢アワード〉で優秀賞を授与された夢には、夢の実現に向けてサポートしていくことも検討中です。「『今はまだ何をしたいのかわからない』と、夢を探している人もいるでしょう。そんなときは『自分の夢を見つける!』という夢に日付をつけることをすすめています。目標達成日を決めることで意識の持ち方が変化して、日々の過ごし方も変わってくるんですよ。
最初は『○○がほしい』という夢でもいい。私の昔の夢も『中古のクラウンがほしい』でしたから(笑)」。
夢はどんどん進化して、発展していくもの。「夢を追いかける途中で目的そのものが変わったり、達成期日の変更もアリ」と渡邉さんはいいます。
「大切なのは夢見る心を持つことです。なぜなら、夢を追いかける過程で自分自身が磨かれ、人間性を高められるからです。人は夢とともに成長していくもの。私自身、『自分はまだ夢の途中にいる』と思っています。これからも常に自分の心がワクワクするような夢を追い続けていきたいですね」。

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