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アトピーと汗

監修:塩原 哲夫
監修:塩原 哲夫(しおばら・てつお)
杏林大学医学部皮膚科教授
1973年、慶應義塾大学医学部卒。日本皮膚科学会理事、日本皮膚アレルギー学会理事、日本研究皮膚科学会理事などの公職を務める。
専門は、薬疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚免疫学など多岐にわたる。

アトピー症状を改善するために汗をかく大切さを知りましょう

アトピーの人は汗をかきにくいこと、そして、汗をかかないことがアトピーを悪化させている可能性があることを知っていますか。
アトピーと汗の関係について正しく理解し、症状改善のヒントを探りましょう。

1.アトピーの人は汗をかきにくい

アトピーの人は汗をかきにくい

汗はアトピー性皮膚炎(以下アトピー)を悪化させると思い込んで、汗をかかないようにしている方はたくさんいることでしょう。汗をかくと、炎症部分がしみたり、痒くなったような気がしたり……。せっかく塗った保湿剤が汗で流れ落ちてしまうのも、気持ちがいいものではありません。
このように、今までは汗の悪い点ばかりが強調されてきましたが、汗にはむしろ良い側面があることが、最近わかってきました。
つまり、汗は「悪者」ではなく、むしろ汗をかかないことの方が、アトピーを悪化させる可能性が高いことがわかってきたのです。発汗は生物体として必要な機能ですから、体のためになる働きがたくさんあります。汗をかきにくいと、それらの恩恵にあずかれないことにもなります。
アトピーを改善するために汗をかくことの大切さを知っておきましょう。

2.アトピー性皮膚炎の方の発汗障害についての研究

この研究によって、アトピーの方は汗をかきにくいこと、汗をかかないことがアトピーを悪化させる原因にもなっていることが明らかになりました。

汗が出にくいと、皮膚のバリア機能を低下させる原因になる?

なぜアトピー肌では皮膚のバリア機能が弱まっているのでしょうか? その大きな理由に、角質層の水分が不足していることがあります。実際にアトピーの方は、皮膚からの水分蒸発量が多いこと、角質層の水分含有量が少ないこと、潤いを与える角質のセラミド成分が少ないことなどが、これまでに証明されています。
汗は、角質層の水分量を維持するために大きな役割を果たしています。このことからも、アトピー肌のバリア機能が低下する原因のひとつとして、発汗障害が考えられていました。が、実験方法が難しいなどの理由で証明されていなかったのです。

アトピー症状がないところのほうが症状があるところより発汗量が少ない!

そこでこの研究では、入浴によってかく汗の量の違いを測定しました。同世代のアトピーの方とそうでない方各20人を対象に、お湯を42℃に調節。入浴時間とお湯へのつかり方を一定にし、測定時の条件も同じにして、『局所発汗量連続記録装置』を用いて、額、首、肘の内側、背中の4ヶ所で発汗量を精密に測定しました。
実験の結果、アトピーの方の発汗量は、健常者よりも少ないことが明らかになりました。特に、額と背中ではっきりとその差が出たのです。また、アトピー症状が出ていない部分のほうが、出ているほうより発汗量が少ない傾向がありました。額ではアトピー症状の有無による発汗量の違いはありませんでした。

汗をかかないために皮膚温が上昇することが症状が悪くなる原因にも

汗には体温を調節する大切な働きがあります。運動や気温の上昇などで体温が上がったとき、かいた汗を蒸発させることによって気化熱が放出され、体内の熱を逃がすことができるのです。

ところが、汗をかきにくいアトピーの方は、体内の温度が上がっても十分な汗をかけないため、皮膚温が上がってしまい、それが炎症を悪化させることにもなります。ですから「汗はアトピー症状を悪化させるに違いない」と考えていた人は、要注意。汗をかかない生活を続けると、ますます発汗機能は弱まり、その結果、肌はさらに乾燥しやすくなって、わずかな熱刺激で皮膚温が上昇するようになります。大切なのは、汗をかける体に戻すことなのです。

「汗を十分にかいている!」と勘違いするのはなぜ?

発汗には「代償性」という性質があります。一ヶ所汗をかかない場所があると、本来かくべき汗の量を他の部分が代償するのです。つまり、わきの下で汗をかかない人は、その代わりに背中や腕など、ほかの部分から汗をかきます。実際の発汗量が少ないのに、アトピーの人が汗をかいていると感じるのは、この代償性によるものと考えられます。
ふだん汗をかかない乾燥した皮膚に少しでも発汗がおこると、それが刺激になりかゆみが起こることがあります。しかし、汗をかき続けているうちに皮膚にうるおいが戻ってきて、このかゆみも解消されていきます。

3.「発汗」はアトピー克服に必要

汗をかかないことがアトピー症状を悪化させていることを知ったら、次は、汗をかくことの大切さを理解しましょう。

体を守る発汗は、アトピーを改善するためにも大切

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「汗をかくとかゆくなったり、症状が悪化したりするから」と、入浴や運動を避けているアトピーの方がたくさんいます。 たしかに、汗の中には炎症を起こし、かゆみを生じる物質も含まれていますが、続けて汗をかいているうちにそれに慣れてきて、むしろ汗の良い面が出てくるようになります。逆に、汗をかきにくいことによって、体内に熱がこもりやすくなっていることが、かゆみを悪化させる原因にもなります。
人間は体内温度が上がると汗をかき、汗を蒸発させることで熱を放出します。ところが、汗をかきにくいアトピーの場合、毛細血管は皮膚温を低下させようと精一杯開いているのに、汗をかけないので、体温は上がり、肌が赤くみえます。
かゆみの感覚は、37℃の体温でもっとも敏感になるとされています。体温が上がりかゆみが増し、症状が悪化してしまうのです。
また、汗をかかないと、角質層の水分量が不足し、肌はカサカサになり、バリア機能は低下してしまいます。
カバは赤い汗をかきますが、それには強い抗菌作用があることがわかっています。人間の汗にも抗菌ペプチドや免疫グロブリンなどの成分が含まれています。これらの作用によって、皮膚にすみついている善玉菌である常在菌を守り、有害な病原菌の侵入を防ぐという働きがあります。
汗をかくのは体を守るためです。アトピー克服のために汗をかく体に戻しましょう。

汗のはたらき

1.皮膚の水分量を保持する
角質層に十分な水分を供給し、肌のバリア機能を高めます。また、肌にうるおいを与えるのも汗の働きです。

2.抗菌成分を皮膚に供給する
汗には免疫グロブリンや抗菌ペプチドが含まれていて、細菌などから肌を守ります。

3.皮膚温度を調整する
汗をかくことで気化熱を放出し、体内温度や皮膚温度を下げる働きがあります。皮膚温が高いと炎症は悪化しやすくなります。

アトピーの方の発汗低下は自律神経の異常によるもの

汗をかかない理由にはふたつのことが考えられます。ひとつは、汗を分泌する汗腺に異常がある場合で、もうひとつは発汗を支配している自律神経に異常がある場合です。
以前はアトピーの方が汗をかきにくい原因として、汗腺の異常が考えられていました。炎症のある部分のバリア機能が破壊されていて、汗管が詰まったりするため、汗が排出できなくなるということです。ところが、研究の結果により、アトピーの方は、炎症が起こっていない皮膚からより患部からの方が汗をかいていることが明らかになりました。つまり、汗をかけないのは炎症があるからではなかったのです。
これによって、アトピーの方が汗をかきにくいのは、発汗をコントロールする自律神経系の異常である可能性が非常に高いということが明らかになりました。

(出典:早川順、塩原哲夫:「アトピー性皮膚炎患者における発汗障害の解析」
日本皮膚科学会雑誌2000;110:1115−1119)

汗と言えばアトピーへの悪影響が言われますが、最近汗をかかないことの方が悪影響があることがわかってきました。汗をかかない人は角質層の水分量が少ないことも分かってきました。

汗は体温上昇を抑える役割がありますが、アトピー性皮膚炎の場合汗をかきにくいため、皮膚温が上昇して炎症が悪化することにつながります。アトピー性皮膚炎の場合「代償性」といって1か所汗をかかないと他の箇所が汗をかく作用があります。そのせいで汗をかいていると勘違いしている人もいます。

アトピー性皮膚炎が悪化するからと入浴や運動を避けがちですがそれがかえって症状を悪化させることになります。入浴や運動で発汗することにより熱を放出しますが、アトピー性皮膚炎の場合、毛細血管は開いて皮膚温を低下させようとしても汗をかかないので体温が上がり皮膚があかくなります。

汗には角質層への水分補給以外にも抗菌作用があり皮膚の善玉菌や常在菌を守ってくれます。こんなに大切な汗ですが、アトピー性皮膚炎の場合、自律神経の異常により汗をかきにくくなっていることが最近の研究で分かってきました。

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