かゆみのメカニズムとアトピー


3.アトピーのかゆみが難治性の理由

しつこいかゆみを消す方法はないのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の場合、かゆみ止めも万能ではなく、効かない場合も多くあり、難治性といわれます。
なぜ薬が効かないのでしょうか。

かゆみの連鎖と悪循環

アトピー肌では一つの刺激から、かゆみにつながる反応が複雑に発生し、それが絡み合ってかゆみの悪循環を起こすため、かゆみが次々に発生し、掻けば掻くほどかゆくなり、治まりにくくなっています。
かゆみを起こす物質のほとんどは、真皮にある肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンという化学物質を遊離させます。例えばアレルゲンが体内に侵入したときは、リンパ球から出た抗体が肥満細胞に結合し、ヒスタミンやトリプターゼを遊離します。これらはかゆみを伝える神経線維のC線維末端と結びつきます。これにより引き起こされた神経の興奮が大脳に伝わり、かゆみを感じます。
一般的なヒスタミンによるかゆみ(紅斑※1、紅暈※2、膨疹※3の伴うかゆみ)には抗ヒスタミン薬が処方され、使えば治まる場合がほとんどです。しかし、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因は、ヒスタミンだけではないため、抗ヒスタミン薬が効かない場合があるのです。
アトピー肌は乾燥してバリア機能が弱っているため、神経線維が角層直下まで伸びています。そのため外部からの刺激は、直接、神経線維の末端を興奮させ、大脳に伝わりかゆみを引き起こします。また、神経線維の末端の興奮は、別の神経線維の末端にも伝わります。するとそこからサブスタンスPという神経ペプチドが出されます。これが肥満細胞に作用し、ヒスタミンが出て……というように別ルートでもかゆみが伝わるのです。サブスタンスPは表皮内にあるケラチノサイトにも結合し、炎症性のサイトカインを出します。このサイトカインも神経を興奮させる物質です。

※1 紅斑……皮膚の面は盛り上がらず、赤くなる症状。
※2 紅暈……丘疹、水泡などを取り巻く紅斑。
※3 膨疹……じんましんなどのように、一時的に盛り上がる皮膚の病変。

アトピー肌にかゆみの連鎖が起こるしくみ

抗ヒスタミン薬の効くかゆみと効かないかゆみ

抗アレルギー薬が効かない理由

このようにかゆみを起こすメカニズムが複雑なアトピー。抗ヒスタミン薬だけでなく、抗アレルギー薬も、アトピーのかゆみには効かないことがあります。実は、抗アレルギー薬にはたくさんの種類があります。好酸球が血管に出ないようにする作用があるもの、サブスタンスPを抑えるものなど様々な炎症物質に対して抗アレルギー薬があり、患者さんに合ったものを選ぶ必要があります。アトピーの複雑なかゆみを抑えるためには、様々な抗アレルギー薬を組み合わせなくてはなりませんが、残念ながら、保険で適用されるのは1種類だけなので、保険診療ではすべての作用を抑えることができません。抗アレルギー薬でもかゆみが治まらないことがあるのはそのためです。

4.セルフケアによるかゆみ対策が肝心!

かゆみが起こる理由がわかれば、対策も立てられますね。
何よりも大切なのは、かゆみの連鎖を起こさせないようにすることです。

かゆみの元を断ってスキンケアを万全に

掻くことで皮膚を掻き壊し、さらにかゆみが起こるかゆみの悪循環を起こさせないためには、外からの刺激を少なくすることが何より大切です。セラミドを主成分とする細胞間脂質が失われ壊れたバリア機能を補うためには、セラミド入りの保湿剤を塗って肌を保護しましょう。セラミドは皮膚からも吸収されるので、不足したセラミドを補うことができます。すでに炎症が起きている場合は、まず炎症を抑えてから保湿剤を使うことが大切です。
バリア機能を高めるとともに、アレルゲンを減らすことも大切な対策です。環境を改善し、かゆみの元を断ちましょう。もしも、かゆみがあるときには、かゆい部分を冷やしてかゆみが神経を伝わる速度を遅くしたり、炎症反応を鎮めることでも楽になります。
入浴温度は37〜38℃のぬるめが良く、こすりすぎや肌に合わないシャンプーなどで刺激を与えないように気をつけましょう。入浴後のケアも大切です。入浴後、肌の水分は急速に蒸発し乾燥しやすい状態になっています。入浴直後の、まだ肌がしっとりしている間に保湿剤を全身に塗りましょう。
かゆみはさまざまな内臓疾患や感染症から起こることもあります。かゆみの発する体の警告を見逃さず、医師の診察を受けて適切な治療を行いましょう。

かゆみの研究最前線!

中枢性のかゆみと末梢性のかゆみ
下の図のように、かゆみには中枢性のかゆみと末梢性のかゆみがあります。抗体やサイトカイン、神経ペプチドなどが肥満細胞に作用し、ヒスタミンを出すことによって生じるのは末梢性のかゆみです。
中枢性のかゆみとは、抗ヒスタミン薬の効かないかゆみで、オピオイドペプチドという神経ペプチドが介するかゆみです。
オピオイドペプチドとは、内因性モルヒネ様物質ともいわれ、神経線維や細胞膜上に存在し、かゆみに関係するのはそのうちβ-エンドルフィンとダイノルフィンです。β-エンドルフィンが体内で優位になるとかゆみを誘発し、ダイノルフィンが優位になるとかゆみを抑えて痛みを誘発するという関係にあります。このオピオイドペプチドが関わる中枢性のかゆみが起こる疾患は、アトピー性皮膚炎、慢性腎不全、腎透析に伴うかゆみ、胆汁うっ滞性肝疾患、乾癬などがあります。このβ-エンドルフィンは、脳内の神経組織だけでなく、表皮にあるケラチノサイトも生成していて、末梢性のかゆみにも中枢性のかゆみが関係していることがわかっています。
これまで中枢性のかゆみに効く薬はありませんでしたが、今年中に中枢性、末梢性のかゆみの両方に効果があるかゆみ止めが実用化されることになり、期待できるニュースといえます。

中枢性のかゆみと末梢性のかゆみ

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