アトピーにおけるステロイド外用依存と離脱を考える


TSAまたはRBSSを防ぐ見地からの、新しいAADのガイドラインにおける三つの問題点

1.プロアクティブ療法には隠された意味がある

「近年、同じ個所に頻回に繰り返し再燃する患者に対して、プロアクティブ療法による維持が提唱されている。……これは、そのような個所に週一、二回規則的にステロイドの外用を続けるという方法で、再燃の頻度を抑え、保湿剤単独に移行してから最初の再燃までの時間を長くするというものである」。
いわゆるプロアクティブ療法が紹介されています。これらのプロアクティブ療法の研究においては、患者の疾患は研究参加前に強いステロイドによってコントロールされました。うまくコントロールされた患者は週1│2回ステロイドを外用するグループ(プロアクティブ療法)と、悪化した時のみステロイドを外用するグループ(アクティブ療法)の二群に分けられ、前者の方が再燃までの期間が長く経済的負担も少なかったです。しかしながら、プロアクティブ療法の研究には二つの隠された意味があります。(1)研究の対象となった患者は全員、最初に強いステロイド外用剤で良好にコントロールできた患者です。したがって最初の段階でコントロール不良と判定された患者が存在し、そのような患者は研究に含まれていません。(2)プロアクティブ療法に従えば、患者は理論的に永久にステロイド外用剤から離脱できません。湿疹患者は、とくに乳児や小児では、しばしば自然治癒しますが、そのような自然治癒傾向はプロアクティブ療法では想定されていません。
上記の研究においてコントロール不良であった患者の率は10%│20%であり、古江らの研究11におけるコントロール不良群の率に非常に近いです。著者はプロアクティブ療法がステロイド外用剤の休薬期間を設ける投薬法だという意味において、TSAやRBSSの患者を減らす可能性があることは認めます。しかしこの方法は最初にコントロール不良と判定されたTSAやRBSSを既に発症してしまっている患者たちの役に立つものではないという点は認識されなければなりません。

2.タキフィラキシーとTSAとは異なる問題である

「同じ薬を繰り返し用いることで効果が減弱する現象であるタキフィラキシーの発現を問題視する臨床家もいるが、それが臨床的に大きな問題であることを示すデータは無い」。
タキフィラキシーとは、ある薬剤で繰り返し刺激すると効果が減弱する現象を指す医学用語です。Du Vivier は強力なステロイド外用剤を連続4日間外用したのちに血管収縮を測定する実験によって、ステロイド外用剤によるタキフィラキシーを報告しました。この効果はそれに引き続く数日間、ステロイド外用剤を中止することによって改善しました。タキフィラキシーという語はTSAやRBSSを表現 するのに適切ではありません。なぜならタキフィラキシーはTSAやRBSSよりも早い(すなわち短期の)反応のことをいうからです。
もしもガイドラインにおけるタキフィラキシーという語が、アドレナリンの血管壁に対する効果が頻回投与によって減弱するような、本来の意味においてのみ用いられているならば、上に引用した文章は正しいです。ステロイド外用剤によるタキフィラキシーは、臨床的に問題は少ないです。しかし、ガイドラインの著者らがこの用語をTSAやRBSSを指して用いたならば、「臨床的に大きな問題であることを示すデータは無い」という文章は間違っています。これらの患者たちはもはや皮膚科医の元を訪れないために医学文献は少ないですが、かなりの数の患者がいます。だからこそNEAは調査を開始したし、我々はこの論文を書いています。
もしもガイドラインの著者らがガイドラインにおいてタキフィラキシーをTSAやRBSSと混同していたとしたら、皮肉なことにそれはほとんどの皮膚科医がステロイド外用剤からの離脱中の患者を診たことがないという事実を示すものです。タキフィラキシーはステロイド外用剤を中止する前の状態として現れ、一方TSAやRBSSはリバウンドや離脱後の様相という全経過を表現する語であるからです。

3.治療不足は必ずしも不適切とは言い切れない

「ステロイド外用剤の慎重な使用は確かに重要だが、ステロイド忌避の結果としての治療不足の認識もまた重要である。……ステロイド外用剤のリスクは、適切な用法と強さの選択を間違えず、不使用の期間をはさむようにすれば、出現は低い。したがって(実際に奏効するよりも)より強いステロイド外用剤が患者によっては考慮される。それはリスクよりも有益性のほうが高いからだ」。
ステロイド恐怖による治療不足がここでは議論されています。このようなステロイド恐怖の患者は実際に存在します。患者の中にはステロイド外用剤を使用さえしなければ湿疹は治ると信じる者もいます。実際、アトピー性皮膚炎と言うのは自然治癒傾向をもった疾患であり、ステロイド外用剤はこの自然治癒過程を阻害しているかもしれないので、間違っているとは言い切れません。さらに、患者がステロイド外用剤依存に陥っている場合には、「治療不足」抜きには患者の回復は有り得ません。
数か月から数年と言った短期の外来診療における経過観察においては、ステロイド外用剤によって「治療不足」の患者を治療することは効果的にみえます。そういう理由から、過去の多くの研究がステロイド外用剤は有用だと結論付けてきました。しかしながら、さらに長期的な観点からもステロイド外用剤は有益なのでしょうか?数十年前に皮膚科医がステロイド外用剤を処方するようになってから、成人性アトピー性皮膚炎患者は増えているではありませんか?なぜアトピー性皮膚炎患者だけがステロイド外用剤の使用に不満を訴えたり不安を感じたりするのでしょうか?
皮膚科医がこれらの疑問に明確に答えることが出来ない以上、アトピー性皮膚炎患者には、医学的に十分な情報提供を受けた後に、彼ら自身で治療法を選択し決定する合理的な権利があります。ステロイド外用剤は、患者が依存に陥っていない場合に、少なくとも短期的には有用ということです。したがって「治療不足」への過剰な警告は患者の治療法選択の権利を侵すものであり、そのような患者は疾患の治療に真剣に取り組んでいないのではないかという社会の誤解を招くものです。

論文全体の和訳
●論文全体の和訳については、下記のサイトでご覧ください。
http://steroid-withdrawal.weebly.com/123001245012488125001254024615303823317828814123951236212369124271247312486125251245212489228062999221092203812338412301.html

英文の論文のダウンロード
●英文の論文については、下記から無料でダウンロードできますので、必要な方はダウンロードください。
http://www.dovepress.com/articles.php?article_id=18757#

近年プロアクティブ療法が効果的だと言われていますがこれには問題があります。初期の段階でコントロール不良と判断された患者が含まれていない点、それから理論的には永久にステロイド外用剤から離脱できない点です。

ステロイド不使用による「治療不足」を指摘することがあるが、アトピー性皮膚炎は自然治癒傾向をもっておりどこかで「治療不足」無しで患者の回復はありません。

過去にステロイド外用剤は有用だと言われてきましたが長期的はどうでしょう。
 

数十年前からステロイド外用剤を使用することで成人性アトピー性皮膚炎患者が増えていることから本当に有用といえるのでしょうか。

安易に「治療不足」との警告は患者の治療選択の権利を侵すことになってしまうのではないでしょうか。

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