制御性T細胞がかゆみを消す


制御性T細胞がかゆみを消す

監修:戸村 道夫

今年の2月、アトピー性皮膚炎の今後の治療に大きな影響を与えそうな研究のプレスリリースが、理化学研究所より発表されました。タイトルは、「皮膚アレルギーの火消しは、炎症患部から大量移動する制御性T細胞」。
制御性T細胞とは耳慣れない言葉ですがよ「免疫」という人間の体を病気から守る機能を担う、免疫細胞の一つです。免疫の仕組みゃ制御性T細胞については、後で詳しく説明することにして、最初に今回の研究でわかったことと、研究成果から考えられることを簡単に紹介しましよう。

図

リンパ節(図中の緑色の点)はリンパ管(図中の緑色の線)でつながっている。血管→皮膚などの組織→リンパ管→リンパ節→リンパ管→血管、あるいは、血管→リンパ節→リンパ管→血管というように、免疫細胞は全身を巡って体を守っている。

アトピーのメカニズムを全身レベルで解明する

アトピー性皮膚炎の発症や慢性化のメカニズムは、未だ不明な部分が多く、その全体像は明らかになっていません。例えば、アトピーの人にはIgEと呼ばれるアレルギー反応を起こす抗体が多い、IgE抗体がマスト細胞(肥満細胞)と結合してかゆみの原因となるヒスタミンやロイコトリエンを分泌する等々、個々の免疫細胞の機能については様々なことがわかっています。
しかし、皮膚炎の悪化時にそれぞれの免疫細胞はどこに集まっているのか? 皮膚に多いのか?リンパ節に多いのか?ということは分かっているのですが、これらの細胞がどこから来てどこに行って、何をしているのか? また炎症が治まるときに免疫細胞はどのように動いているか? といった全身レベルでの研究はほとんど進んでいませんでした。

アトピーの治療法が飛躍的に前進する!?

今回の研究でわかったことは、「皮膚の炎症が治まるときに、制御性T細胞(免疫を抑制する働きを持つT細胞)が大量に皮膚からリンパ系に移動している」こと。皮膚の炎症が治まるときに、体の中で免疫細胞がどのように活動しているのかが、具体的にわかったのです。
この発見の画期的なところは、今後のアトピー治療を大きく前進させる可能性を持つことです。これまで皮膚科での主な治療は、ステロイドなどの免疫抑制剤で体の免疫反応を抑制して炎症を抑えることでした。これはいわば、個々の患者さんの体内の状態(免疫細胞の種類、数、働き方など)の把握がしっかりできていない状態でも、とりあえず免疫力を下げて炎症を抑えていたということ。
しかし、今回の成果を皮切りに研究が進めば、薬を使うタイミングや止めるタイミング、炎症を抑えるのに効果的な薬の分量など、症状の慢性化や薬のリバウンドを防ぐ治療法が期待できるでしょう。アトピー性皮膚炎を治すために、ステロイド剤などの薬を、うまくコントロールして使うことができるようになるかもしれません。

最近の研究で制御性T細胞という耳慣れない細胞が皮膚の炎症と関係していることが分かってきました。

研究が進めばステロイド剤により免疫機能を低下させ、炎症を抑えるという治療から一歩進んだ治療が可能になるかもしれません。

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