アレルギー発症の本当の仕組み 免疫反応の“はじまり”を解き明かす


免疫反応はミクロクラスターから始まる

斉藤隆先生らの研究チームは、免疫シナプスとT細胞活性化についてさらに研究を進め、2005年に「ミクロクラスター」を発見しました。
ミクロクラスターとは、樹状細胞とT細胞がくっついた直後から現れる抗原受容体と活性化分子の複合ユニットです。
図Cをご覧ください。ミクロクラスターは免疫シナプスよりもずっと小さなものですが、理化学研究所で共同開発された生体分子イメージング(生体内の分子を可視化するシステム)という技術により、より精度の高い顕微鏡で発見されました。

図C

P20,21の図版はすべて、理化学研究所報道発表資料「免疫を活性化させるミクロシナプス構造を発見」を基に作成しました。

左側の図は、樹状細胞(下)とT細胞(上)が接着した直後の状態です。細胞接着面には直ちにミクロクラスターが形成され、そこからT細胞が活性化され始めます。
それから10 分後、ミクロクラスターは徐々に中心部に集まっていき、免疫シナプスが形成されるのです。免疫シナプスが形成されても、その周りではミクロクラスターが作られてT細胞の活性化が続き、免疫シナプスは1時間近く維持されます。
この研究で明らかにされたことをまとめると、

  • T細胞が抗原を認識し活性化する場は、免疫シナプスではなくミクロクラスターである。
  • ミクロクラスターこそが免疫応答の開始点であり、その後T細胞が活性化し続ける場所もミクロクラスターである。

ということになります。すべての免疫反応は、T細胞が活性化する場であるミクロクラスターから始めます。

ミクロシナプス構造が免疫を活性化させる

2016年に発表された『免疫を活性化させるミクロシナプス構造を発見』は、ミクロクラスターの研究をさらに進化させたものです。 
免疫シナプスの形(図B)をもう一度見てください。中心に集まったT細胞抗原受容体をとり囲む緑色の部分は接着分子であると説明しました。接着分子とは、細胞と細胞をつなぐ接着剤のようなものです。 
T細胞にはLFA1と呼ばれる接着分子があり、樹状細胞側の結合分子と結合することで両者はくっつきます。LFA1による接着を妨げるとT細胞は活性化しないので、接着分子がT細胞活性化に重要なことは以前から知られていました。しかし、その役割についてはよくわかっていませんでした。 
研究チームは、接着分子の役割を明らかにするために、T細胞が抗原を認識した瞬間の接着分子の様子を詳細に調べました。そこで明らかとなったことを、図Dに示します。

図D

 図Dの左側については、これまでの説明で理解できると思います。樹状細胞とT細胞の接着面では、接着後すぐにミクロクラスターが点々と形成され始めます(①)。10分ほどでミクロクラスターは中心に集まってきて、免疫シナプスが作られます(②)。 
ここで、図中の①(ミクロクラスター形成)をよく見てください。点々と存在するミクロクラスターは、中心部が赤色でその周りを緑色が取り囲むという免疫シナプスとそっくりな形で描かれています。その拡大図が右側のミクロシナプスです。ミクロシナプスとは、今回の研究で新たに発見された細胞接着面の構造です。中央の赤色部分には、ミクロクラスターが集まっています。そして周囲を緑色の接着分子がとり囲んでいますが、接着分子の下は接着班(細胞同士が強固に接着している部分)を構成する分子がつながり、接着分子リングが形成されています。 
接着分子リングは、T細胞と抗原による刺激が強いほど早く消え、結びつきが弱いとずっと続くことがわかりました。つまり、T細胞の活性化の刺激の強度によって接着分子リングが続く長さが変わるわけです。 
抗原が強力であればT細胞と樹状細胞の接着時間が短くても活性化しやすく、抗原が微力な場合は接着時間を長くしないと活性化しにくくなります。接着分子リングは、抗原の強さによって接着度を変え、T細胞の活性化を調整していたのです。 
最後に、斉藤先生たちの一連の研究の要点をまとめてみましょう。

  1. 免疫反応の出発点は、ミクロクラスターにおけるT細胞活性化にある。
  2. ミクロクラスターは、接着分子に囲まれたミクロシナプス構造となっている。
  3. ミクロシナプスでは、接着分子リングによってT細胞活性化の調整をしている。

 これらの発見は、免疫の仕組みの根幹に関わる事項です。とてもベーシックな研究なので、臨床分野で応用するにはさらなる検証が必要となるでしょう。 ミクロシナプスの発見により、将来的には、接着分子リングを調節してT細胞活性化をコントロールするという新たな分子標的や治療法などが期待されます。免疫は人の健康を左右する重要な仕組みだから、この研究の応用範囲はとても広いといえるでしょう。

そのミクロクラスターという物質が免疫反応に重要な役割を果たすのですね。
 

ミクロクラスターがT細胞を活性化させることが解明されました。これを治療にどう活かしていくかはまだまだ時間がかかりそうですが、応用範囲は広そうです。

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