かゆみのメカニズムとアトピー

監修:高森建二 先生

アトピーのかゆみが難治性の理由

しつこいかゆみを消す方法はないのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の場合、かゆみ止めも万能ではなく、効かない場合も多くあり、難治性といわれます。なぜ薬が効かないのでしょうか。

かゆみの連鎖と悪循環

アトピー肌では一つの刺激から、かゆみにつながる反応が複雑に発生し、それが絡み合ってかゆみの悪循環を起こすため、かゆみが次々に発生し、掻けば掻くほどかゆくなり、治まりにくくなっています。
かゆみを起こす物質のほとんどは、真皮にある肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンという化学物質を遊離させます。例えばアレルゲンが体内に侵入したときは、リンパ球から出た抗体が肥満細胞に結合し、ヒスタミンやトリプターゼを遊離します。これらはかゆみを伝える神経線維のC線維末端と結びつきます。これにより引き起こされた神経の興奮が大脳に伝わり、かゆみを感じます。
一般的なヒスタミンによるかゆみ(紅斑※1、紅暈※2、膨疹※3の伴うかゆみ)には抗ヒスタミン薬が処方され、使えば治まる場合がほとんどです。しかし、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因は、ヒスタミンだけではないため、抗ヒスタミン薬が効かない場合があるのです。
アトピー肌は乾燥してバリア機能が弱っているため、神経線維が角層直下まで伸びています。そのため外部からの刺激は、直接、神経線維の末端を興奮させ、大脳に伝わりかゆみを引き起こします。また、神経線維の末端の興奮は、別の神経線維の末端にも伝わります。するとそこからサブスタンスPという神経ペプチドが出されます。これが肥満細胞に作用し、ヒスタミンが出て……というように別ルートでもかゆみが伝わるのです。サブスタンスPは表皮内にあるケラチノサイトにも結合し、炎症性のサイトカインを出します。このサイトカインも神経を興奮させる物質です。

  1. 紅斑……皮膚の面は盛り上がらず、赤くなる症状
  2. 紅暈……丘疹、水泡などを取り巻く紅斑
  3. 膨疹……じんましんなどのように、一時的に盛り上がる皮膚の病変

抗ヒスタミン薬の効くかゆみと効かないかゆみ
抗アレルギー薬が効かない理由

このようにかゆみを起こすメカニズムが複雑なアトピー。抗ヒスタミン薬だけでなく、抗アレルギー薬も、アトピーのかゆみには効かないことがあります。実は、抗アレルギー薬にはたくさんの種類があります。好酸球が血管に出ないようにする作用があるもの、サブスタンスPを抑えるものなど様々な炎症物質に対して抗アレルギー薬があり、患者さんに合ったものを選ぶ必要があります。アトピーの複雑なかゆみを抑えるためには、様々な抗アレルギー薬を組み合わせなくてはなりませんが、残念ながら、保険で適用されるのは1種類だけなので、保険診療ではすべての作用を抑えることができません。抗アレルギー薬でもかゆみが治まらないことがあるのはそのためです。
 

アトピー肌は乾燥することで、本来、真皮層内にとどまるはずのかゆみを知覚する神経線維が、角層直下まで伸びてきます。

その神経線維を直接刺激することによって起こるかゆみや、また、神経線維の末端同士で伝わることによって起こるかゆみなど、いろいろ複雑です。

こうした複雑に入り組んだかゆみを抑えるためには、さまざまなお薬を組み合わせなければならないと考えられています。

しかし、保険診療では1種類しか使用できないので、病院の治療においては、なかなかかゆみをおさえることができない現実があります。

この記事を評価する
残念もう一息普通参考になったとても参考になった 評価 : 3.75 投票4人  
Loading ... Loading ...

かゆみのメカニズムとアトピー」への2件のフィードバック

  1. さくらこ

    どうしてこんなにかゆいんだろう。お医者さんがくれる薬がきかないなんて、そんなことあるの。
    ずっとそう思っていました。これを読んで、やっと腑に落ちた感じです。かゆみには、こんな複雑な要素があるなんて。トータルな対策が必要なのですね。

    返信
    1. あとぴナビ編集部あとぴナビ編集部

      さくらこさん、こんにちは。
      医師が処方する薬剤は、免疫を抑制することでかゆみを抑えますが、免疫が直接関与しないかゆみもあるため、全てのかゆみに有効となるわけではありません。自分のかゆみの原因を考えて、その原因に対応できる対策を行うことは大切でしょう。

      返信

コメントを残す







次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>