医療ナビ 生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る(後編)


生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る(後編)

皮膚障害、脱毛と亜鉛の関係を解明

亜鉛の重要性がわかってきたところで、徳島文理大学 薬学部 病態分子薬理学研究室の深田教授らの研究成果をお伝えしましょう。
深田教授らは「なぜ亜鉛は生命に必要であるのか?」をテーマに長年亜鉛シグナルの研究に取り組み、これまでにZIP4、ZIP7、ZIP10 、ZIP13 、ZIP14など様々な亜鉛トランスポーターの機能を明らかにしてきました。ここでは、皮膚にまつわる亜鉛トランスポーターを中心にお話していきます。  
亜鉛が不足すると皮膚障害や脱毛が起こりやすいことは、ご存知の方も多いでしょう。インターネットで「アトピー、亜鉛」と検索すれば、皮膚科に関するたくさんのサイトがヒットします。亜鉛が皮膚にとって大事なものであることは広く知られていましたが、毛包や表皮を形成する細胞で実際に亜鉛がどのように働いているのかは不明でした。これを明らかにしたのが、深田教授らの研究「毛包と表皮の形成における亜鉛の役割を解明」です。
ここでの主役は亜鉛トランスポーターZIP10 。深田教授らの研究グループは、胎生期マウスの皮膚の毛包にZIP10が多く集まっていることに気づきました。  
図Aを見てください。上は胎児マウスの毛包部分、下は生後1週間のマウスの毛包部分です。青い部分がZIP10 ですが、この実験結果から「ZIP10は、皮膚や毛の成長と何か関係がありそうだ」と深田教授は直感したのです。

亜鉛と皮膚の関係

ZIP10のないマウスは毛も表皮も少ない

実験は、上皮系細胞にZIP10を持たないマウス(ZIP10遺伝子欠損マウス)をつくり、皮膚や毛の成長過程を健康なマウスと比べるという形で行われました。  
図Bは、健康なマウス(上)とZIP10遺伝子欠損マウス(下)の表皮を比べたものですが、ZIP 10遺伝子欠損マウスのほうは、毛包がほとんど存在せず、表皮も薄く形成が不完全です。表皮のバリア機能も健康なマウスに比べて著しく損なわれていることがわかりました。  
また、ZIP10遺伝子欠損マウスでは、胸腺の萎縮も認められました。表皮や胸腺の組織は、上皮系の幹細胞(細胞としての役割が決まる以前の、いろいろな細胞になれる段階の細胞)から分化するので、 ZIP10が上皮性組織の発生に深く関係していると考えられます。

亜鉛欠乏で表皮バリア機能がなくなる理由

では、ZIP10は表皮や毛包の形成にどのように関与しているのでしょうか? 
ZIP10がないと、なぜ毛包はなくなってさらにバリア機能も消失するのでしょうか? そのメカニズムを知るために研究チームが注目したのが、p63と呼ばれる転写因子(遺伝子のコピーを制御する働きのあるタンパク質)です。p63も毛や表皮などの上皮系組織の発生に重要な役割を持ち、p63がうまく働かないと、ZIP10遺伝子欠損マウスと似た状況が生じることから、何か相関関係があるのではないかと考えられました。  
そこで両者の関係を調べると、ZIP10の欠損によりp63の活性は顕著に減少し、逆にZIP10が亢進するとp63が活性化する。亜鉛が増えることで、p63の転写活性が上昇することが確認されたのです。つまり、次のようなことがいえます。

毛包と表皮の形成

以上のような実験と考察を積み重ね、「毛包と表皮の形成において、ZIP10は極めて重要な制御因子である」ことが明らかになったのです。

亜鉛が不足すると皮膚障害や脱毛が起こりやすくなります。注目されているのは亜鉛トランスポーターZIP10。胎生期マウスの皮膚の毛包にZIP10が多く集まっていることから、皮膚や毛の成長関係がありそうだという仮説がたちました。

亜鉛が増えることで、p63というタンパク質の転写活性が上昇し、毛、表皮、胸腺などの上皮性組織が形成されるのです。毛包と表皮の形成において、ZIP10は極めて重要な制御因子である」ことが明らかになったのです。

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