医療ナビ 生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る(前編)


生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る(前編)

生命維持に不可欠な必須微量元素

栄養学において、人体に必須とされるミネラル(無機質)は16種類あります。このうち1日の必要摂取量がおおむね100mg以上のものを「主要ミネラル」、1日の必要摂取量100mg未満のミネラルを「微量元素」と分類しています。  
亜鉛は9種類ある必須微量元素の1つです。成人の体内には約2gの亜鉛が保有され、その維持のために、毎日15mg程度の摂取が必要です。
微量ながらも、人間の生命維持に不可欠な栄養とされている亜鉛ですが、これまでの日本ではその重要性が十分に認識されにくい傾向がありました。  
これから紹介する新たな亜鉛研究の潮流は、そんな状況を一変させるインパクトを持ったものですが、その前に、亜鉛の重要性を示した先人の研究から順を追っていくことにしましょう。

亜鉛の重要性

イランの風土病が亜鉛の重要性を証明した

亜鉛が欠乏するとどうなるのか? 
その決定的な最初の報告は、今から半世紀以上前の1960年代初頭に発表されています。当時、イランのある地域では、不可解な風土病が問題となっていました。成長遅延のため成人になっても子供のような体型、感染症にかかりやすい、貧血、肝脾腫(かんひしゅ)、性機能不全、皮膚障害などが特徴で、土塊(つちくれ)を好んで食べるという奇妙な習慣もありました。 
現地を調査していたプラサド(Prasad)博士らの グループが、患者の組織の一部を成分分析したところ、亜鉛の含有量が減少していることが判明。亜鉛を補給することで症状が著しく改善したことから、亜鉛が体に及ぼす多様かつ重要な働きが確認されたのです。  
亜鉛欠乏の原因は、未発酵パン、ミルク、ポテトといった主食だけで食事を済ませるこの地域特有の食習慣にありました。明らかに栄養バランスを欠いたメニューですが、ポイントは「フィチン酸」にあります。  
小麦粉製品や穀物、豆類などに多く含まれるフィチン酸は、亜鉛や鉄と強く結びつき、体内に吸収されずに排出されてしまうという性質があります。彼らが常食していた未発酵パンには、特にフィチン酸が多く含まれていました。亜鉛を排出しやすい成分を多く含む食品を主食としていたことが、深刻な 鉛の欠乏を招き、この地域で亜鉛欠乏症特有の症状が現れたというわけです。  
ところで、なぜ患者たちには土塊を食べる習慣があったのでしょう? それは、その土が特に美味しかったわけではなく、亜鉛不足による味覚障害が原因でした。現地で亜鉛の摂取量を改善したところ、 亜鉛欠乏症の発症は次第に減り、土塊を食べる習慣もなくなりました。

必須微量元素の亜鉛は生命維持に不可欠な栄養ですが、これまではその重要性が十分に認識されにくい傾向にありました。

1960年代には亜鉛欠乏の症状として、成長遅延、感染症にかかりやすい、貧血、肝脾腫、性機能不全、皮膚障害などが指摘されていたのです。

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