厚生労働省では、免疫アレルギー予防・治療研究事業として、アトピー性皮膚炎の発症・悪化について全国レベルで調査が行われ、予防対策について検討されています。
厚生労働省の研究事業でもあるこの調査・研究がどこまで進んでいるか、アトピー性皮膚炎の研究最前線をお伝えします。
アトピー性皮膚炎有症率に世代間で差がある理由
東京大学の研究チームが昨年、東京大学職員2123名を対象に成人のアトピー性皮膚炎(以下アトピーと略す)の有症率を調査しました。
この調査によると年代別の有症率は、
20代 | 9.8%(うち軽症者は76.9%) |
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30代 | 8.7%(軽症者は72.2%) |
40代 | 4.4%(軽症者は82.4%) |
50〜60代 | 2.6%(軽症度100%) |
という結果になりました。
年齢が高くなるほどアトピーの有症率が減っているという結果から、「やっぱりアトピーは子どもの病気。大人になれば治るんだ」と考えた方がいるかもしれません。
本当にそうなのでしょうか?
確かに以前は子どもでアトピーを発症しても、成長するに連れて症状が寛解する場合がほとんどでした。
しかし、今の子どもたちが高齢化したとき、アトピー有症率は激減するでしょうか。
おそらくこの割合は大きく変わらない可能性があります。
と言いますのは世代間の有症率の違いは、年齢による差ではなく、それぞれの世代が乳幼児期を過ごした環境の差で、戦後大きく変わった生活環境や食習慣が、世代間のアトピー有症率に大きく影響していると考えられるからです。
この仮説を裏付けるために、発育とともに子どものアトピーがどのように変わっていくのかという研究も進んでいて、長期間同じ子どもたちを調査対象にしてアトピー症状の変化を調べる追跡調査も行われています。
東京大学の研究チームの有症率のデータを見ると、確かに年齢が高くなるほど有症率が低くなっていると言えます。しかし、見方を変えると、若い世代になるにつれて、徐々に生活環境が悪くなり、食習慣や生活環境の悪化が進んでいると見ることもできます。この辺は、今後の研究によって明らかにされるものと考えられます。
スキンケアが必要なのは大人だろう、と自分のイメージだけで思っていました。しかしドライスキンは幼児のころから始まっていて、決して過保護ではないのですね。